加賀見家の本邸のリビングは、しんと静まり返っていた。記者会見から戻ったばかりの室内には、まだ外気の冷たさがうっすらと残っている。静香はソファに腰を下ろし、タブレットでネット上の反応を眺めていた。どうやら相当満足のいく流れになっているらしく、口元の笑みを隠しきれていない。正国は湯気の立つ茶を静かにすすり、表向きは興味などないという顔をしていたが、実際には耳をしっかりそばだて、秘書から入るトレンド報告を聞き逃すまいとしていた。心愛は玄関脇に立ったまま、先ほどの「公開処刑」さながらの正式な交際宣言の衝撃から、まだ完全には立ち直れていなかった。今もなお、足元がふわふわと浮いているような感覚が抜けない。ネット中から「背徳のインセスト」だと叩かれていた状況から、一転して加賀見家の両親が自ら盾となって現れ、さらには養子縁組の証明書まで公開した。あまりにも怒涛の展開で、まるで嵐に飲み込まれたかのようだった。本当なら、自分はもっと長い間耐え続けなければならないと思っていた。面と向かって罵声を浴びせられる覚悟だってしていた。けれど実際には、最も険しい道を、暁が自分の代わりにすべて切り開いてくれたのだ。心愛はそっと顔を上げ、暁を盗み見る。男は漆黒のスーツのジャケットを脱ぎ終え、それを無造作にソファの肘掛けへ放ったところだった。ワイシャツの襟元はボタンが一つ外され、先ほどまでの張り詰めた冷気は幾分やわらいでいる。だが、人を圧倒するような存在感だけは相変わらずだった。どれほど大きな嵐が押し寄せようと、この男にとっては「片付けるべき案件」の一つに過ぎないのだろう。その視線に気づいたのか、暁がふっと顔を向けた。「なぜ私を見ている」心愛は慌てて目を逸らす。「別に見てないわよ」暁は小さく笑ったが、その苦しい言い訳をわざわざ追及することはしなかった。静香がタブレットを脇へ置き、何でもない調子で口を開く。「今日の件は、これで半分片付いたわね。残り半分は、あなたたち次第よ。特にあなた、暁。その閻魔様みたいな顔、少しは引っ込めなさい。心愛は繊細なんだから、あんまり追い詰めちゃダメよ」「お母さん……!」心愛の耳まで一気に熱くなる。「あら、間違ったこと言ったかしら?」静香は呆れたように肩をすくめた。「この家に入っ
続きを読む