ジルダが目覚めたのは、カインの渇きが限界を迎えようとした頃だった。 部屋の暖炉は薪がくべられているが、その火は小さい。季節は冬に近付いている。 何もかけずに眠っていては風邪をひくだろうと、カインはジルダを起こさないようできるだけゆっくりと、自分にかけられていた毛布を片手で手繰り寄せ、ジルダの体に羽織らせた。 子供の頃にもあった気がする――だが、思い出そうとするといつものように頭痛が襲ってくる――そう身構えたが、不思議と頭痛は起こらなかった。 そのかわり、記憶ももやがかかったように思い出せないのだが。 その時、カインの手を握るジルダの手が小さく震え、ジルダが目を覚ました。「珍しいな。君がこんな形で眠るなんて」 目を覚ましたジルダにカインが揶揄うように声をかけると、ジルダは怒ったような顔をして、素早くカインから顔を背けた。 カインから見える耳が赤くなってるのがわかって、カインは少し嬉しくなった。「……ご無事でよかったですわ」 ひと呼吸置いてジルダはそう言うと、カインの方に顔を戻した。その顔はいつもの無表情に戻っており、カインは少しがっかりした。「魔法陣ですが、細工などはされていなかったようです」 ジルダの言葉をカインは素直に受け取った。 そもそも細工をされていたのなら、カインより魔力量が少ないエスクード侯爵が無事なわけがない。 ジルダが眠っている間に考えていた事だ。 あれは確実に僕の魔力を狙っていた。「ですが――」 ジルダは少し言い澱んだが、平坦な抑揚を心がけながら続けた。「カイン様の魔力を注ぎすぎた為、魔法陣の一部が壊れてしまったそうです」「結界は――」 ジルダの言葉にカインは慌てたが、握ったままの手をジルダがそっと強く握り直した。 優しい圧力が手から全身に広がるような気がする。「幸いな事に壊れた箇所は修復が可能で、控えていた魔道士達によってすぐに修復されました」「よかった――」 カインは心の底から安堵の溜息をついた。「魔法陣の修復は即座に行われ、結界への影響はありません。念のためフィアーノ伯及びティン=クェン卿の指揮の下、首都警護隊第三部隊で結界の調査を行っています」 貴族院の議会室で宮廷魔導士が報告を読み上げた。「――して、今回のカイン――公子の魔力暴走の原因は何だったというのか」 王が白くなった顎髭を撫
Zuletzt aktualisiert : 2026-08-21 Mehr lesen