ロメオがいなくなった途端、夜会はまるで祭りのような賑やかさに感じられた。 さっきまでは気にならなかった音楽や、貴族達の喧騒が急に不愉快に思えた。 ああ、違う。さっきまではロメオ様が側にいたからだ。 世界に自分とロメオしかいないような錯覚に陥っていたのに、ロメオが離れた途端、現実が襲ってきたようだった。「気分が悪いのかい?」 ロメオが果実水を持って戻ってくると、イレリアの顔色の悪さを案じた。「いいえ――あの、人の多さに酔ったようです」 慌てて笑顔を作ると、イレリアはロメオから果実水を受け取って喉を潤した。 冷たい液体が、乾いた喉と火照った体を潤してくれるようだった。「こっちにおいで」 ロメオが手を差し出したので、その手を掴むと言いようのない安心感と幸福感がイレリアを包み込んだ。 まるでカインに感じるのと同じ感覚だったが、違うようでもあった。 ロメオは、イレリアの手を引いて重いカーテンをかき分けてバルコニーに出た。 夏の初めの爽やかな風が、イレリアとロメオの間を通り抜けていく。 灯りで照らされていた広間とは違い、バルコニーは薄暗い。月明かりだけがイレリアの白い肌とロメオの少しだけ日に焼けた肌を神秘的に浮かび上がらせていた。「ここなら静かだし誰もいないよ。落ち着くまでここにいよう」 バルコニーの手すりに腰をもたれさせると、ロメオはイレリアの体を抱きかかえるように自分にもたれさせた。「手すりは固いからね」 耳元で囁くロメオの声に、イレリアの体は急速に熱を帯びた。 顔が見えない分、背中から伝わる体温がカインのように感じられる。 背中越しに胸の高鳴りが伝わってしまったらどうしよう。 イレリアは今、ロメオにときめいているのか、カインにときめいているのか分からなかった。「君とこうしてゆっくり話すのは初めてだけど、何故だろう。すごく安心するし、緊張する」 ロメオのいたずらっぽい声が、少しだけ真剣みを帯びた気がした。「――わたくしは……緊張しています」 イレリアは身じろぎせず、ロメオの胸に体を預けていたが、果たしてそれが正しいのかわかっていない。 頭では、カイン以外の男性に体を任せるなど、あってはいけないことだ。 だが、ロメオはイレリアが混乱するほど、カインに似ている。 いや、イレリアがそう思いたいだけなのかもしれない。 背
Zuletzt aktualisiert : 2026-08-21 Mehr lesen