翡翠が椅子から立ち上がる。「それじゃあ、終わったら執務室においで」「分かった」 翡翠が静かに扉を閉めたあと、革靴の足音が遠ざかって行く。「……」 緊張が走る。 涼にとって、この異常な世界で生きる術を今、一時の判断で決めなければならない。 一度深く深呼吸をし、核に向かって言葉をかける。「貴方は会話はできる ? 」『お答え出来る範囲だけです』 中性的な声。 機械でもなく、人のような抑揚も無い。不可思議な声質。「質問とかしてもいい ? 」『答えられる範囲のみになります。これは皆、共通の条件です』「分かったじゃあ……。ここから出るにはどうしたらいいの ? 」 突然の確信。 だが核は暫く処理時間を費やし返答を出した。『悔い改め背負うことです。ここはそういう場所です』「そういうことじゃなくて……。俺は無になりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……」『苦楽は囚人によって感じ方が違います』 涼は核の返答が、どこかやり取りになっていない気がした。プログラムされたような、決まり文句のようなものに聞こえてならない。「なんで俺が呼ばれたの ? ここって日本人だけ ? 」『外国人もいらっしゃいます。言語は共通で、『城』にいる限り自動翻訳されています。 一ノ瀬 涼様のご招待は更生の余地ありとみなし、リストの中からピックアップいたしました』「俺は……そういうんじゃなくて、全て0にしたかったんだ。生まれ変わったり現実逃避したい訳じゃないんだ。 無になりたかっただけなんだ ! どうして俺を殺さねぇんだよ !! 」 ここまで来た涼のストレスが爆発してしまった。『お答えできかねます』 核はさらりと言い放つ。 コレに感情などないのだ 受け入れるしかない。 そして考える。自分が活かせること。そもそもそんなものが自分にあって上手く世間で生きて行ければ自死を選ばなかったかもしれない。 否、母親からの虐待。 強制的な性風俗。 それを考えれば、今はいくらかマシなはずだ。 フェンランが言っていた。女達は絶対に身体を売ることをしない。少なくともフェンランを囲う女たちはそうして、ここで生き延びている。 京もフェンランもそうだが、感情が見えなかったら涼は早々に地雷を踏んだかもしれない。アクの強い者たちだ。これからもそんな者との出会いがあるだ
Last Updated : 2026-02-19 Read more