Accueil / ミステリー / 強制狂葬 狂眼ドール / 4.支配者と狂人のマリオネット

Share

4.支配者と狂人のマリオネット

last update Date de publication: 2026-03-06 17:00:00

「あ〜あ。大変だ」

 ゾク…… ! 

 涼の背後で、呟くように小さく笑う京の感情が流れてくる。

 非常にまずい流れだ。

「ま、そういう事もあるからな。おめぇも気をつけろよ ? 」

「う、うん。ソウダネ」

 京に恐怖を感じる。

 わざわざ、涼は見たくなかった。噂で聞くことはあっても、自分の目で、まるで詮索したみたいではないかと。

 次にサラと会った時、顔に出てしまいそうだとハラハラする。

 しかし、予想より酷い事態が即刻訪れる。

「よう、フェンラン」

 京が入浴から戻ってきた女達の中からフェンランに声をかけた。

 涼は全てを察した。

 どこまでも京は『楽』の人間なのだと。

「どうしたんだ ? 二人でわたしを出待ちかい ? 」

「たまたまだよ。

 それより、サラって人の事。涼にも言っておいたからさ。食事中もそうだけど、色々あるよなぁ。俺たちも今シャワ
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 強制狂葬 狂眼ドール   2.『城』と『核』の存在理由

    「ブレード……か。不満は無いのか ? 」 久々に点呼に現れた翡翠がブレードの呼び名について本人へ聞いたがブレードは何も気を悪くした様子もなく。「いいえ。 それより……看守殿、最近……フェンランが怪しい葉っぱを売り歩いているようですが」「彼女の冥花の扱いは俺が許可した。ここには娯楽の類も少ない上、冥花は依存性はあるものの体は肉体ではないし、病気の不安はないからな」「そうでしたか。余計な事を言いました」「いや。今後も何か見かけたら是非報告して欲しい。貴方は信用に値しそうだ」 笑いかける翡翠はふと、ブレードの房にあるロープの山を見つけた。「それは…… ? 」「売り物です。暴力的な輩が多いですからね。こんな物でも重宝するようです」 正確に囚人塔の報告を上げてくるブレードが、なぜ囚人に売る為の道具を……それも拘束する為と言い切って持っている姿に違和感があった。「そうか。囚人たちとの付き合いにも慣れてきたようで何よりだ」 そう答えるしかない。 この頃ずっとブレードの上官は翡翠であり、ブレードは軍人であろうと──せめて良き兵隊であろうとしていた。 だがブレード自身がまだ『城』の存在を訝しんでいた。元々はリアリストで、死後の世界など無いと思っていた。それがこの『城』が存在し、自分は罪人だと区分された。翡翠の言うことは絶対ではあるが、二度と踏み外すような人生は送るまいと頑固な理念も内に秘めていた。 翡翠はブレードの房に積まれたロープの山を見た時、何か嫌な予感がしたのだった。 □ ブレードは夜更けにロープの束を手に取ると、房の鍵を工具で取り壊し、囚人塔を降りていく。 皆がその足音にブレードが夜更けに出歩くのは珍しいと思いながら布団に潜っていた。 ドツン……ドツン…… その足音はやがて外

  • 強制狂葬 狂眼ドール   【第五章】1.サミールの過去-伊吹とブレード

    「では、サミール。この部屋が『核』のある部屋だ。願い事は一つ」「はい ! 看守殿 ! 」 サミールは有り余る勢いで返事を返す。全て軍人時代に身についた習慣がうっかり出たのだった。「む……失礼……致しました」「貴方は真面目なんだな。そんなに気を張らなくても、すぐに慣れるはずだ」 翡翠は苦笑いを浮かべたが、すぐにもう一人の囚人の事を思い出した。「そうだ。確か、ここに来てすぐに人を助けたそうだな。君の同期の伊吹だ。こんな場所で同期と呼ぶのも妙なことかもしれんが、案外縁とは簡単に結びつくものだ」 サミールはすぐに痩身の男性を思い出した。彼の名は伊吹というのかと。「……ああいった現場は、見慣れた光景です……。 死して尚、そんな世界に来るとは……。軍人だった自分を恥じていながら、また誇りも持っているのです」「頼もしいじゃないか。常識的な囚人が模範として存在してくれることは有難い事だ。 さぁ、願いを」 その後、執務室に戻ったサミールが手ぶらで帰ってきた姿を見、不審に思った翡翠は『核』に何を願ったのか聞いた。見て分からないということは、隠し武器の類いが多いからだ。 するとサミールは胸ポケットから缶を取り出した。「義手義足をメンテナンスするセットです。オイルと精密工具を」「なるほど……そこは確かに修理可能か分からないからな。完全に壊れたら『核』が修理してくれるだろうが、不調や自損の場合は対象外らしいし」「ええ。気をつけます。 では、失礼しました」 囚人塔に戻ったサミールを見て、他の囚人たちは横目でチラチラと様子を伺いながらサミールを『ブレード』と呼んで噂話に花を咲かせていた。義足のしなやかな形で、そう連想したのだろう。「『板状のヤツ』か……」『城』の間取りを調べるように一通り

  • 強制狂葬 狂眼ドール   26.羽化する城

     京はこの時、止めたかった。 涼が何か変わってしまう気がして。しかし涼の意思も、ブレードの意思も情報として自分にも必要なことは理解した。「まじかよ……何が起きるか分からねぇぞ。 お前もブレードのそれも、多分ただのドールアイじゃない」「……そうだね」 涼の気持ちは変わらない。覚悟を決めている。「人が来ねぇように見ててやる。でも無理はするな」「そう。ありがとう」 京は少し離れると、鏡を向いたままの涼を眺めた。 涼がドライバーを変色していない右眼に差し込んだ。 上手く隙間を作り、もう一本で掻き出すように中へ中へ入れ眼球を後ろから押し出す。てこの原理も上手くいかず、ドールアイが少し欠ける。 パタタ………… 割れた部分から紫色の何かの液が垂れる。 それを見た京が思わずまた近付いてきた。「なぁ……その液体 ? なんだ ? 俺たちは血なんか出ないし……」「血の色じゃないから、血じゃ無いんだろうね」 当然だと言う様な涼の落ち着きに比例して、京の方がどんどん不安になっていく。 見る見る間に涼の頬が藤紫色に染まり、白く細い首を伝い、真っ白なシャツまで染める。「取れた……」「……ん。ああ……。 ブレードも眼帯してたそのドールアイって左眼だったろ ? お前は左に入れなくていいのか ? 」「もし壊れて、修理して貰える保証がないんだよ。京、誰もが修理出来る訳じゃないらしいよ ? 」「……なんだって…… ? 」「俺は自分の……左眼を失う訳にいかない……。これは右に入れる」 涼が今

  • 強制狂葬 狂眼ドール   25.サミールのドールアイ

     冥花の真っ白な花弁を千切ると口へ運ぶ。 香りは甘いが、味はしっかり苦味がある。次々に口へ入れ、最後に茎と葉も一気に頬張る。舌がピリピリとして、脳の感覚が逆に冴えて来たように感じた。 盗ってきた鏡を木の枝に乗せ、そこに写る自分の姿をジッと見つめる。 藤紫色に染まった左眼。 手に持ったブレードの左眼も同じ色だ。偶然ではない何か。このドールアイを装着すれば、確実に何かが分かる。 それは思考的なものか、知識か、感情か。 今の涼にとってそこは問題ではない。 京も肯定的ではなかった自分の『癒し』の能力。思えば最初から京は自身の事を視られることに抵抗があったのを思い出す。 京自身が自分の気分や過去の罪を知られたくないからだと、そう解釈していたが恐らく涼の思い違いだ。 京は涼の能力が『城』にとって異質、不要、疑念。そんなふうに思い関わりたくなかった。そしてそれが攻撃力を持った時に自分へ向けられることを警戒し、手元に涼を置いた。 フェンランに関しても、女囚達が涼に依存していく中で、その流れを止められなかった。だが、傍観を決め込んだ理由は勿論、京と同じ理由だろう。 そして翡翠は── 涼は目の前に聳える高い塀を見上げた。 翡翠はこの先に誰かのドールヘッドを投げ捨てた。それが誰かは分からないが、翡翠の罪を視た時、あのドールは頭部パーツだけでもまだ意識があり、正常に話していた。泣き喚き、命乞いをしていた声が頭から離れない。 翡翠は生前ではなく、この『城』の中で人を殺めている。 修理が可能な人形の体。 サタンの時のように、囚人のいざこざではなく、管理人としての制服を纏ってするのは不公平で職務上してはいけない間引き行為。「……癒しが必要 ? ……そうだろうね。罪深い……」 もう一度鏡を見つめる。 その罪を、恐らくブレードは知っていた。 口の中の花弁の味が無くなったように感じた頃、妙に冷静な自分がいた。 頭の中は冴え渡り

  • 強制狂葬 狂眼ドール   24.堕獄

     フェンランは騒ぎが一段落した時点で、冥花畑へ立ち寄っていた。 馨しい甘い香りに、現世では見たこともない優美な花。 いつの日か、ここはフェンランにとって心洗われる自給自足の田舎暮しのような気分になれる場所だった。山々が見渡せる訳でもなく、ひょっこり現れる野うさぎもいない。それでも囚人塔に寿司詰めになるよりリラックス出来る空間。「やれやれ……」 火種を絶やさない煙管の煙を一口吸う。 それを吐き出そうとした時、思わずむせてしまいそうになった。「涼……っ ! 」 花園の端にボンヤリと立っている涼を見付けた。「あんた、あれから大丈夫だったのかい ? 修理は済んだんだね ? あぁ……安心したよ……」「心配ありがとうフェンラン」 もう、涼は笑わなかった。 いつもなら弱々しく、自分に対して人懐こい笑みを向けるというのに、今は素振りどころか表情が深く暗く、どこか見えない場所へ行ってしまったように鋭い瞳をしていた。「ねぇ、お願いがあるんだ」「……なんだい ? 」「パーツを交換したいんだけどさ、少し痛みがあるじゃん。麻酔が欲しいんだよね」「……。あいにく、冥花はタダじゃない。金はルストの奴にばら撒かれちまっただろ ? 金がないなら他の価値のある物と交換になる。 それと。あんた……見た所交換するパーツが見当たらないけれどねぇ ? 」 涼は無言で藤紫色に変色したドールアイをポケットから取り出した。「大きいパーツとは限らないじゃん。 ねぇ、これはもう使わない不用品なんだ。誰のドールアイか教えてあげようか ? その情報と冥花の取引じゃダメ ? 」「断ったら ? 」「ダメならいいや。持ってる奴から奪った方が俺に損がないし」 引き返そうとする涼を結局、フ

  • 強制狂葬 狂眼ドール   23.最も罪深い男

     翡翠の執務室の前──廊下で待たされていた涼は誰もいないことを確認するとようやく口の中からブレードのドールアイを吐き出した。『俺の眼で……視るんだ……』 ブレードの言うことが頭から離れない。 自分と同じ変色の仕方。この紫に変わってしまうにはやはり理由があるのだと確信する。 そっと右眼に触れたドールアイは特に個人的な特質が無ければ両眼同じサイズで生成される。涼は感情が視れる左眼だけは失う訳にはいかない。嵌めるには右眼を使うべきかと考えるが、問題は痛覚だ。体の修理は二度目だ。人間の体とほぼ同等の痛覚。 だが、『核』に修理された時も、一階のパーツショップで腕や足を購入している者を見た時に知った。 新しいパーツを着用してしまえば、痛みは消える。人間なら傷口が塞がるまで痛みが継続するが、人形に体の痛覚は故障時だけだ。 ──この右眼を外して、ブレードの瞳を入れる── そんな事を考えていると、螺旋階段からあの革靴の音が向かってくる。 口に入れて京のように器用に話出来る自信はない。今度こそ涼はブレードのドールアイをポケットへ入れた。「涼、待たせたね」「いえ……」『核』の部屋から上がって来た翡翠は紅潮した顔色で、蜂蜜色の髪は乱れ、いつもより肩を落とすように歩いてきた。手には何かボールのような丸い荷物を布に巻いて提げていた。「どうぞ」 翡翠が執務室のドアを開ける。「失礼します。 騒ぎを起こしてしまって……すみませんでした……」 涼の謝罪に翡翠は荷物を足元へ下ろすと、考え込んだように椅子へ沈んだ。「君からの謝罪は見当違いだ。騒ぎを嗾けた者たちがいたとは聞いている」「……。翡翠さんは俺の『癒し』の能力を喜んでくれていましたよね ? でも、皆は違うみたい。少なくとも今日騒いだ人達と……京も

  • 強制狂葬 狂眼ドール   5.グルーミングルーム

     執務室へ来るまでの囚人たちの視線に堪えた。涼はドアが閉まると大きく息をはいた。「大丈夫か ? 」「……はい。まだ、自分の……なんて言うか、無害さを分かって貰えないんだと思います。それに一日に癒せる人数もままならなくて」「成程。しかし貴重なものほど供給は薄いものだ。期待を持たせる程度で、人々は感謝し、抑制が効くと思うが ? 」「そんなものですかね ?  あと、俺の眼。癒しの力を使うごとに濃くなってるんです」「力を使うごとに ? ……見せてご覧」 白い手袋がスっと涼の前髪を

  • 強制狂葬 狂眼ドール   5.嵐の前

     朝。 涼が目を覚ますと、京は隣のベッドにいなかった。 体を起こしてベッドの端に座り、涼は記憶を遡る。 人形の自分の細い膝の上で組んだ手の指先に、傷が付いていた。 昨晩、京の口の中のドールアイに触れようと……その瞬間に牙を向けられた。 一度翡翠に相談してしまいたい。 全て話してしまいたいと願う。 しかしそれは自分の終わりを意味するような気がして出来なかった。何より、囚人二日目にして管理人に泣きつくことは許されないだろう。 一度立ち上がるが、何をしていいか

  • 強制狂葬 狂眼ドール   3.裏切り者の尻尾

    「食事が終わったら自由時間。と言っても昼のような作業は禁止。一階のパーツ屋も閉まってるし、畑も駄目。各自なるべく自分の部屋にいるかシャワー浴びるかだな」 房に戻った涼は京から流れを聞いていた。「その後、翡翠が就寝の合図に来る。看守役の人形が房の鍵を締めて就寝だ」「看守役の人形って ? 囚人じゃないのか ? 」「ああ。初代管理人が死んだ時、同じく看守達も姿を消したんだ。だから今は『核』が看守役の人形を創ったってわけ人形ってよりロボットに近いな」「確かにこの房の鍵を翡翠さんだけでしめるなんて無茶だもんな……」

  • 強制狂葬 狂眼ドール   2.棲み分け

     食事は朝晩二回。 体感時間で皆、なんとなく食堂へ向かうだけだ。 涼と京は二人向かい合って座る。 食べるものは選べない。 食堂にいるシェフ姿の人形が勝手に囚人のトレイに皿を置く。乱雑で、無言。目も合わない。 実に作業的な流れだ。 しかし、その皿に乗った食事に涼は言葉を失っていた。「食べねぇの ? 」 京が固まったままの涼を不思議そうに見た。「いや……監獄的なイメージがあったから……もっと自由度の少ない飯が出てく

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status