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第3章 光と才能 ③隣の場所

 今日も、いつものように放課後の美術室へと向かった——はずだった。「……」 でも、咄嗟に扉の前で立ち止まる。 中から微かに声が聞こえてきたのだ。 聞き覚えのある落ち着いた男子の声と、どこか甘さを帯びた女子の声。 中を覗くと、南条と……あの日、俺に話しかけてきた女子生徒がいた。 彼女は、南条の隣で寄り添うように椅子に座っている。「——はるくん、最近変わったね」「……変わった? ゆいの勘違いだろう」「えー、勘違いじゃないよ。なんか最近、雰囲気が柔らかいし」 言葉のやりとりだけを追えば、なんでもない会話かもしれない。でもふたりの距離感に、妙な胸騒ぎを覚えた。 近すぎる。肩と肩が触れそうなくらい近い。そんな距離で、笑い合っているのだ。 彼女は——ゆい、というらしい。あの時の女子生徒。 やっぱり、南条とはそんなふうに話せる存在だったんだ。 言辞を知ってしまった今、胸が小さく音を立てるように痛む。 理由はうまく説明できない。この光景を見たくない。それなのに……どうしても目を離せなかった。「ゆい、吹奏楽部の方は行かなくていいの?」「うん。今日は自主練らしいから、最初からこっちにいようと思って!」「……そうなんだ。じゃあ、一緒に描こうか」「うん! その前に、ちょっとお手洗い行ってくるね」「あぁ」 彼女が立ち上がる。それと同時に、俺も咄嗟にその場から離れようとした。 こんなふうに見ているなんて、知られたくない。というか、見てはいけないものを見てしまったような気がしていた。 でも、間に合わなかった。 扉が開き、女子生徒が出てくる。 俺の方を見て一瞬だけ表情を無にしたあと、言葉ひとつ発さずに手招きしてきた。 その自然な動きはまるで、最初からそうしようと考えていたみたい
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第3章 光と才能 ④折れた過去

「おーい白浜。なんか顔、死んでないか?」  重たい足を引きずるように昇降口へ向かっている時のこと。  職員室の前を通りかかると、背後から大澤先生の声が響いた。  いつものように明るい笑顔を浮かべた先生は、ためらいもなく俺の肩を強く叩いてくる。 「……ソンナコト、ナイデス」  声に覇気はない。自分でも驚くほど気持ちが全面に出ていた。 「いやいや、何それお前。わかりやすすぎだろ!! 何、南条のことで悩んでたりすんの!?」 「えっ!?」  思わず裏返った声が出た。先生はニカッと口元を緩めて、さらりととんでもないことを言い出す。 「職員室でも有名だぞ~。白浜は南条に惚れてるって!!」 「ええええ!? いや、ちょっ、それは誤解すぎる……!」  あまりにも驚きすぎて、言葉が出なかった。  頭の中がぐちゃぐちゃになって、顔の温度が一気に跳ね上がったのがわかる。耳まで真っ赤になっているに違いない。  って、どうして自分がこんな反応をしているのか、それすらも意味がわからないけれど。 「そんなんじゃないし……ていうか、先生、マジでやめてよ!!」  焦って言い返す俺を見て、先生はくすっと笑った。そして、ふいにその笑みを消して真面目な顔になる。 「……しかし、まぁ。お前に笑顔が戻ってよかった。早期引退してから、しばらく元気なかったろ?」 「……あ」 「俺、お前がサッカー部で頑張ってたの、ずっと見てたんだ。だから元気ない様子が……心配ではあった」 「……」  返答に適した言葉が見つからなかった。  視線を床に向けて黙っていると、先生はさらに言葉を継ぐ。 「お前が引退を告げられた日。夕方のグラウンドにひとりでいたろ? ベンチの影で、ひとり座ってた。俺は何も声かけなかったけど……どうしようか悩んだものだ」  先生の言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。  ずっとサッカーを頑張ってきたのに、ベンチ入りすらできなかった3年間。  後輩にも追い抜かれて、3年生最後の試合を前に——引退となった事実。
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第4章 将来の夢 ①必要ないもの

 気怠い昼休みだった。 夏の空はこんなにも爽やかで青いのに、教室の中に漂う空気はひどく重たく感じる。 チャイムが鳴っても、身体はぴくりとも動かない。昼飯を食べる元気すらも、なんだか湧いてこなかった。 そんな俺の様子を見かねたのか、近づいてきた有理が心配そうに顔を覗かせる。「……樹? 生きてる?」「生きとるわ~」 気の抜けた声で返すと、有理は苦笑いを浮かべ、隣の席に移動してきた。 その直後、後ろの席にいた保科祥吾も椅子を引いて、俺たちの方へやってくる。「もしかして、将来の夢で悩んでるとか?」「……は? 将来?」 祥吾が突然切り出したその言葉に、思わず目が点になった。 将来の夢。 そんなもの、考えたことがない。 一応、進学希望ってことにしてはいるけど、それはただの既定路線みたいなもので。 何を学びたいのか、どこで何をしたいのか。ずっと胸に抱いていた夢を失ってから、そんなことと真剣に向き合ったことなんて一度もなかった。 「はは、夢? ないよ。めんどくせーし」 無理に笑いながらそう言うと、有理が箸を止めてこっちを見た。 有理は俺が『サッカー選手になりたかった』ということをよく知っている。それがあるからか、その目には深い悲しみのようなものが見える。「それも樹らしいけどさ……そんな自暴自棄にならなくてもいいじゃん」「はは、うるせー。俺には夢なんてないんだー!」 そんなやりとりを交わしながら、3人で弁当を広げる。 有理は就職希望で、今は簿記の資格を取るために勉強中らしい。 祥吾は進学希望。大学では法律を学びたいんだとか。 ふたりはそれぞれ、目指す場所がある。 将来に向かって、着々と歩き出しているんだってことが、話の節々から伝わってきた。「……」 箸を動かしながら、ぼんやりと考える。 俺は小さい頃からずっと、サッカー選
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第4章 将来の夢 ②複雑な夢

 その日の放課後。 今日も俺は、美術室へ向かっていた。 別に絵が描けるわけでもないし、美術に興味があるわけでもない。 それでも、あの空間に行きたくなる。 キャンバスに向かう南条の背中。 静けさの中に流れる鉛筆の音。 部屋に差し込む夕陽。 近いようで、どこか遠い。そんな南条のすべてが、俺にとっては〝救い〟みたいなものだった。 扉を開けると、南条はいつものように椅子に座っていて、すでにキャンバスと向きあっていた。 その後ろ姿を見るだけで、すこしだけ心が軽くなる。 南条って、不思議な存在だと思う。 言葉数がすくなくて、どこか棘があって、とにかく冷たい。だけど、誰よりも丁寧に何かを見つめているような、そんな人間。今までに出会ったことのないタイプだった。「南条、お疲れ!」「……お疲れ」 俺は緩む口角を押さえながら、いつもの場所に向かう。 南条はすこしだけこちらを見て、すぐにまた絵に集中し始める。 いつものように無言で鉛筆を握るその姿は、まるで時間の流れから切り取られているみたいだった。 そっけない返事には、もう慣れていた。 無言の空気が、やけに心地いい。 何も話さなくても、南条といる時間は不思議と落ち着く。 そんな静けさの中で、俺はぽつりと問いをひとつ落とした。「ねぇ、南条。将来の夢って……ある?」 昼休みに有理たちと話した〝夢〟の話。 俺にはもう夢なんてないけど、その話の延長で、南条の夢も聞いてみたくなった。「……」 南条はすこしだけ筆を止めて、静かに言う。「……あるよ。でも、できれば言いたくない」 そっけない言い方だったけど、その裏にある〝重み〟は伝わってきた。 簡単には話せないくらい、大切な夢なんだろうと、なんとなく推測はできる。「そっか。でも、あるだけすごいよ。俺なんかもう、夢なんてねぇし」 自
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第4章 将来の夢 ④向き合う強さ

「南条!」  名前を呼ぶと同時に、美術室の扉を勢いよく開けた。  中には、見慣れない数の生徒たちの姿があった。部活中だったことを、すっかり忘れていたのだ。  イーゼルが並び、絵の具の匂いが満ちている空間は、普段の静かな場所とはまるで違っていた。賑やかで、ざわついていて、けれどどこかよそよそしい。俺が知っている〝美術室〟とは、別の場所のように思えた。 「……」  南条は立ち上がり、こちらを一瞥する。その表情には、いつも以上の戸惑いと、わずかな苛立ちが浮かんでいた。  隣には綾瀬の姿。絵筆を持ったまま、俺の顔を見ていた彼女の視線は、次第に冷えたものへと変わっていく。その変化を、俺は見なかったことにした。 無言のまま美術室を出てきた南条は、俺の腕を軽く掴んで渡り廊下に連れ出した。そこに出ると、声のトーンが変わる。 「……部活中に来るなよ」  低く絞られた声だった。責められて当然なのに、俺は気の利いた言葉も出せず、情けなく首をすくめた。 「ご、ごめん。ただ……どうしても今、伝えたかったんだ」  うつむいたまま言葉を探し、深く息を吸ってから、真正面を見た。  そして、意を決して言葉を発する。 「俺の言葉なんか、軽く聞こえるかもしれない。でも、それでも伝えたくて来たんだ。俺は……お前の夢、応援したい。心から、そう思ってる。お前が望む未来がやってくると、俺は信じてるんだ」  言い終わったあと静寂が降りた。廊下の窓から差し込む夕方の光が、床に長く影を落とす。空気がやけに静かで、自分の呼吸の音だけが胸に響いた。 「……部活の邪魔してごめん、ほんとそれだけだから。じゃあな」 「……」  踵を返そうとした瞬間、制服の袖を引っ張られた。さっきと同じように、南条が俺の腕を掴んでいる。 「……え?」  振り向くと、彼は真剣な目でこちらを見ていた。普段なら絶対にしないような表情。それが新鮮で、驚きが隠せない。 「……南条?」 「……僕も帰る。だから、ちょっと待ってて」  そう言って南条は、ほんの一瞬だけ目を伏せると、美術室の中
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第4章 将来の夢 ③身近な大人

「大澤先生~!!」 「お? 白浜……なんか、目ぇ赤くない? 泣いた?」 「泣いてねーし!!」  美術室を出た俺は、無意識のうちに職員室に向かっていた。  俺の顔を見るなり、大澤先生がいつもの軽い調子でツッコミを入れる。  けれど、その目だけは、ちゃんと俺の内側を見ている気がした。 「……先生、ちょっとだけ、時間もらっていい?」 「もちろん。行こうか」  先生と並んで渡り廊下を歩く。  こうやって俺の話を聞いてくれる先生が、ほんとうに心の支えになっている。  こんなにも教師を頼る人もいないだろう。  だけど俺の中では、唯一無二の存在だった。「——で? また南条のことか?」 「えっ、なんでわかるの!?」 「お前、最近それしかないじゃん。職員室でも、〝南条依存症〟って呼ばれるぞ?」 「いや待て、勝手に病名つけんなし!」 「失恋したなら、慰めてやるぞ~?」 「そんなんじゃないっつーの!」  校舎の影に、秋の夕日が差し込んでいた。  遠くから吹奏楽部の音が風に乗って聞こえてくる。  その音に胸の奥が、まだざわついていた。 「……今日は何があった?」 「んー……まぁ、さっきあったことなんだけど」  俺は、ポツポツとさっきのことを話す。  南条が美大に行きたいって言ってたこと。  でも、親には言えてないって。  言ってもどうせ反対されるって。  そう言って、笑った——というより、笑うしかなかったような南条の顔。 「……でさ、なんか、俺……うまく言葉が出てこなくて。俺自身に夢はないけど。南条の夢に対しては、純粋にすげぇって思って。だから『それでいいじゃん』って言ったんだけど、なんか怒られたし」  口の中に溜まった苦さを、どうにも吐き出せなくて。  それでもどうにかして、先生にぶつけるようにして言った。 「夢って……持ってなきゃダメなのかな? 夢がないから、夢を持つ奴の気持ちがわかんないのかな?」
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第5章 非日常な時間 ①文化祭実行委員

 秋風がすこしずつ冷たくなってきた頃、学校では文化祭シーズンが本格的に始まった。 クラスや部活動ごとに準備が進められ、放課後の校舎は普段よりもざわついている。廊下のあちこちから、ガムテープの音や笑い声が聞こえてきた。 俺のクラスでは、揚げたこ焼き屋をやることになった。 決まった瞬間、祥吾が『たこ焼きじゃなくて〝揚げ〟ってとこがポイント!!』と得意げに言っていたけれど、正直どうでもよかった。というのも、俺自身はその準備に一切関わらないことが決まっていたからだ。 俺は、文化祭実行委員になった。 それがその理由だった。 立候補したわけでも、誰かに推薦されたわけでもない。 大澤先生がただ一言、『白浜とか、やってみたらどうだ?』と笑いながら言ったのが原因だった。 そのひと声でクラスの空気が一瞬で変わり、俺が引き受ける流れができた。 俺は断るタイミングを完全に逃してしまったせいで、そのまま引き受けることに。 周りに流された。ただ、それだけの話。 とはいえ、正直なところ、実行委員なんて楽勝だと思っていた。けれど、現実は想像以上に面倒だったのだ。 委員会は週に何度もあって、放課後すぐに会議室に集まらなきゃならない。 しかもその時間は、いつもなら美術室に行っていた時間だった。 南条の向かいに座って、無言のまま過ごす時間。 ただそれだけなのに、俺の中ではちゃんと意味があったのだと、あとになって気づく。 あの時間が、ぽっかりと消えてしまう。 それが、想像以上に寂しいことだった。 南条にそのことを伝えに行ったとき、彼は『僕も、美術部として出す作品制作に集中するから』とだけ言って、小さく頷いた。 その言い方が、なんだかよそよそしく感じたのは、気のせいだったのだろうか。◇ 初めて委員会がある日の放課後。 どこか気が乗らないまま、俺は会議室へと向かっていた。 やる気なんて1ミリもない。けれど、委員になってしまった手前、適当なことをするわけにもいかない。「……はぁ」
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第5章 非日常な時間 ②揺れる想い

 職員室の片隅にあるコピー機の前。  規則正しく紙を吐き出していく機械の音が、静かな空間のなかで妙に大きく感じられる。  文化祭が近づき、俺と綾瀬は生徒に配布する用のアンケート用紙を印刷していた。  隣り合って立つこの状況は、決して自然とは言えなかった。  沈黙が続くと、空気の温度まで変わったような気がして、なんとなく落ち着かない。  けれど、そんな沈黙を破ったのは、意外にも彼女の方だった。 「……最近、気づいたんだけどね」  ぽつりと呟かれた声は、コピー音にかき消されるような小ささだった。  でもそれが、俺の耳にはやけに鮮明に響く。 「はるくん……君のこと、よく見てる」  その内容が唐突すぎて、思わず手が止まった。  視線を落としたまま、俺は答えを返せずに黙り込む。  彼女はそんな俺に構うことなく、まっすぐ前を見たまま話を続けた。 「同じクラスだから、なんとなくわかるの。最初は気のせいかと思ってたけど……」  そう言って、すこしだけ声を落とした。 「君が視界に入るたびに、彼の目が動く。ほんの一瞬だけど、何度も」  抑えた口調。だけど、そこにあったのは、確かな確信だった。  言葉は柔らかいのに、やけに力強さが胸に残る。  俺は言葉に詰まり、ただコピー機から排出される紙の流れを見つめた。  まるで、その先に答えがあるかのように。無言で見つめ続ける。 「……そんなこと、あるかな」  なんとか絞り出した声は、自分でも頼りなく聞こえた。  ほんとうは、動揺していた。  だけどその気持ちに、名前をつけることができなかった。 「……」  綾瀬はようやく、ゆっくりと俺の方を見る。  その横顔には、どこか寂しさを押し殺したような静けさがある。  けれど、瞳の奥に宿る光は、どこにもない。 「あるよ」 「……」 「すくなくとも、私の目には、そう映った」  はっきりと断言されて、返す言葉が見つからなかった。
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第5章 非日常な時間 ③周りの期待

 文化祭前日、綾瀬が大泣きしていた。  放課後、実行委員の仕事を終えた帰り際、偶然通りかかった廊下の端で、彼女が泣き崩れているのを見つけたのだ。  なんでも、久しぶりに美術室へ立ち寄ったところ、南条が描きかけのキャンバスを、真っ二つに引き裂いていたという。  何かに憑かれたように、力任せに木枠ごと壊したらしい。  断ち切られた布の裂け目は荒く、そこにあったはずの絵の輪郭すら、もう残っていないという。 『文化祭には間に合わない』  彼はそう言って、何のためらいもなく筆を置いた——と、綾瀬は声を震わせて語る。  その時の彼の横顔が、まるで知らない誰かのようだった。怖くて、どうしようもなかったと、綾瀬は俺に話してくれた。 「美術部は、文化祭が引退のタイミングなのに……! それなのに、こんな終わり方なんて……っ」  綾瀬の声は、堪えきれない嗚咽が滲んでいた。  目元は赤く腫れていて、声もすこし掠れている。  慰めの言葉をかけようとしても、喉の奥でつっかえて何も出てこない。  俺にできたのは、せめて彼女を目立たせないように、その場で人目を遮ることだけだった。 校内は、文化祭前日の浮き足だった喧騒に満ちている。  ガムテープの音、段ボールを運ぶ声、叫び声と笑い声。  それらの騒がしさが、この場所にだけぽっかりと空いた静寂を際立たせていた。  綾瀬の涙も、嗚咽も、その全部がこの一角にだけ閉じ込められている。  どうすればいいのかが、ほんとうにわからない。  綾瀬が泣き止むまで、突っ立ておくことしかできなかった。   ◇ 日が沈みかけた頃、校舎を歩いていた俺は、ふと足を止めた。  何かに呼ばれるように、美術室の前に立っていたのだ。  すっかり人気のなくなった廊下の空気は冷たくて、秋の夕暮れが、窓のガラス越しに紅く滲んでいる。  静かに扉を開くと、かすかな匂いが鼻をかすめた。  乾きかけた絵の具と、切られたキャンバスの布の匂い。 「……」  窓際の椅子
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第5章 非日常な時間 ④純粋な恋心

 文化祭当日は、校内の空気そのものが、いつもとはまるで違っていた。 どこを歩いても笑い声と音楽、そして非日常特有のざわつきが響いていて、それだけで気持ちが浮つく。 けれど、ステージ発表の裏方を任された俺は、ステージの裏で静かに、その賑やかさを音だけで感じていた。 また、綾瀬とペアだった。 珍しく結われている三つ編みが軽く揺れる。 綾瀬と並んで、タイムスケジュールの確認をしていたとき、ふいに彼女の横顔に目が留まった。 今日の綾瀬は、いつになくメイクが濃い。 泣きすぎて目が腫れたと、朝の準備中に小さな声で教えてくれた。きっとそれが原因だろう。 笑いながら言っていたけれど、その表情からは〝無理〟が滲み出ていた。「……綾瀬って、純粋だよな」 隣でリストをめくっていた手を止めて、何気なくそう呟くと、彼女はきょとんとした顔で俺を見た。「純粋?」「うん。だってさ。好きな人のことでそんなに泣けるって、すごくない?」 俺の言葉に、綾瀬の表情がすこし強ばる。 それは怒りというよりも、自分の気持ちを見透かされたような、居心地の悪そうな色だった。「……バカにしてるの?」「してないって。一途に想ってるんだなって思っただけ」 その瞬間、綾瀬の瞳がすこし揺らいだ。 まるで、何かを隠しきれなくなったかのように、唇がわずかに震える。「はるくんのこと……入学したときからずっと好きだったの。ほんとに、ずっと。大好きなのに、ずっと友達止まり」 声がかすれていた。 体育館のステージから届く喧噪が、ぼんやりと遠ざかっていく。非日常感が、より強くなっていく感じがする。「……」「でも最近、はるくんは白浜くんしか見てない。私に向けてくれなかった視線が、君に向いている」 静かに、でも確かに刻まれる言葉。 俺は、どう言葉を返していいのかわからなかった。 何かを否定することも、同意することもでき
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