All Chapters of 有給休暇は異世界で: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話:マヨ作り

 さあ、マヨ作りだ。といっても何か特殊なつくり方をするわけでもない。いたって普通の、できるだけ美味しいマヨを作る。そのためにマスタドの実もはちみつも仕入れてきた。あとは手順通りに混ぜるだけ。この混ぜる工程が一番大変なんだが、そこはまあ大人の余裕で何とかしていこう。 泡立て器があれば一番楽なんだが、そんな工業製品は当然この世界にはない、あってもお貴族様の専属調理人が自分のためだけに作らせた、というようなものだろう。一応厨房を見渡させてもらったが、そんな道具はなかった。これは量産するときに作ってもらうということで納得しておくしかないな。「では、マヨ作りをしていこう」「はい! 手はきちんと井戸で洗いました! 」 助手のセルフィもいい感じに仕上がっている。一人寂しくやるよりは少しだけ気分が楽に仕事ができるな。「じゃあまず、油以外の材料を……このぐらいかな。混ぜます」 卵一つの卵黄が大きいのでそれに合わせて材料を頭の中で計算して増やしていく。塩と酢の分量は特に考えておかないといけない。 ボウルにそれぞれを入れると、ひたすらかき混ぜる。いい感じにもったりしてきたところで、主成分である植物油の投入だ。少しずつ、すこーしずつ、セルフィに指示して流しこませていく。その間に俺の腕は全力で動き、とろみが徐々に柔らかくなっていくマヨをひたすらかき混ぜる。 楽しくはない。だが、仕事とは常に楽しくできるものではない。楽しいだけが仕事なら世の中の人々はどれほどの幸せを享受して生きているのだろうな。 一旦油を止めさせて、きちんと混ざっているかどうかを確認する。全体に卵黄と酢の混じったものが絡まり、油が分離しているところがないことを確認すると、再び油の投入を再開。油もどれだけ入れていけばわからないからな。ゆっくり少しずつ入れていって、油が余り始めたらそこで手を止めないといけない。 手元の重さがだんだん軽くなっていき、混ざり具合が良くなってきたところでもう一回止めさせて、油の乳化具合を確認。ふむ……いい感じ、かな? まだ油も混ざり切っていないので、一旦ボウルの中身をすべてかき混ぜて、
last updateLast Updated : 2026-05-13
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第32話:稼いで帰って

「食肉狩り……ということはミニボアやホーンラビットですか」「他にちょっと遠出して、もっと美味しく狩れるようなモンスターや生物がいればその限りではないが……あんまり手傷を負わせてぐしゃぐしゃにしてしまって、食べるところがないと言われるぐらいならミニボア狩りかな」「そうですね。一応冒険者ギルドで調べてから行きませんか。私が知ってる範囲だと、空を飛べない鳥でガルキンがいますね。さっきの卵の親鳥ですが、家畜として飼いならされている鳥もいますが、野生のガルキンは肉も締まってて美味しいです。一度だけ食べたことがあります」「ほう、ガルキンか。このあたりにも居るのかな。生息域があるなら調べてみよう」 さっそく冒険者ギルドへ行き、このあたりにガルキンの野生地があるか聞いてみると、東門から1時間ほど進んだ先にはガルキンの集団行動場所があるらしく、野生のガルキンを飼って家畜化するときにもそこを利用するらしい。 ちなみに買取価格はガルキン丸ごと一匹で銅貨5枚、そんなに大きな種類でもないので血抜きの必要はないらしい。ホーンラビットと違って血抜きの必要がない分だけお手軽かな。「よし、今日は一日ガルキンを狩ろう。お弁当代わりに市場で串焼きとか飲み物を手に入れて、それから現地に出かけるぐらいでいいかな」「はい、頑張りましょう」 まだ鐘が鳴ってないうえに、市場で材料をそろえ、その場で焼きだす屋台のお肉と飲み水を汲んで、それらをアイテムボックスに収納。これでお昼の準備はできたな。 東門から出て、すぐのところでホーンラビットを二匹見つけるとセルフィと一匹ずつ倒して、縄につないで血抜きをしておく。そのままぶら下げてしばらく放っておいて、血が抜けたころにアイテムボックスにしまい込む。これで銅貨10枚。 さらにミニボアが三匹ほど出てきて、ちょっと足を止めて倒すと、血抜き作業のために五分ほどさかさまにしておいて、少しでも血抜きをしておく。これだけで銅貨2枚変わるなら、足を止めるだけの価値はある。ミニボアの死体もアイテムボックスに入れて、これで銅貨40枚分の稼ぎ。 昼ご飯代は余裕
last updateLast Updated : 2026-05-14
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第33話:マヨ効果

 銀の卵亭に戻って行列の先を見ると、いつもの食事の提供とは別で列ができていることに気づく。どうやら蒸かして細切りにしたジャガの実にマヨをつけて、それを持ち帰り品として販売しているらしい。 それはそれとして、夕食の準備をしている親父さん。ジャガの実を蒸かす時間で待ち時間ができているらしいことはわかった。「繁盛してるねー」「そうですねー」「あ、犯人発見! 手伝えとは言いませんけど、お夕飯遅くなりますからね! 」 リンカちゃんがぷりぷりと怒りつつも、しっかり儲けているようでその口調の割に感じられる怒気は小さかった。下層民向けのジャガの実一つとマヨ一掬いで……銅貨4枚か。きっちり儲けてるな。それだけマヨの味付けがみんなに受け入れられる味だったということだろう。しかし、昼食に配って夕食までに何があったのかを後でゆっくり聞かせてもらうことにしよう。 部屋に戻って湯をもらい、早めの身づくろいをする。今日はしっかりガルキンの血まみれになったからな。普段よりも輪をかけて綺麗にしておきたいところだ。 いつも通りセルフィと背中合わせになって体を拭く。「今日は今までにはないぐらいにいっぱい稼げた。今日の稼ぎだけでセルフィの装備品と俺の装備品、それから服の都合分を足してもまだ黒字なぐらい稼げた。明日も同じだけ稼げるはずはないが、それでも十分すぎるぐらいの稼ぎだ。働いた分だけ美味しいものを食べられそうだな」「じゃあ、今日も白パン定食ですか! 」「でもいいぞ。俺はあんまり贅沢になれないように黒パンで済ませるが」 そういうと、セルフィは押し黙ったあと、言葉を切り出す。「奴隷のほうが主人よりいい食事を取ることなんて普通は許されません。私も黒パンセットにします」「む……そうか。じゃあ……俺も白パンセットにするか」 そういうと、セルフィから「やったっ」という小さな声が漏れる。そんなに黒パンの硬さが嫌なのか。これはこれで酸味があって美味しいもんだとは思うが…… 身支度を整えてセルフィの髪も洗ってから結ってやる。油と血だらけになった銀髪が赤く鈍く濡れるさまが見えて、何とかしてやりたいなとは思うが、石鹸づくりは少々難易度が高い。灰石鹸ならなんとかなるか?  本来はゴム手袋やマスクをするような危険な実験になるし、セルフィに作ってる最中を見せるのもよろしくないが、これならかろうじて
last updateLast Updated : 2026-05-15
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第34話:マヨ開拓に向けて

「ふむ……職人のあてか……商人ギルドで正式に募集してもいいのか? 」「方法は任せるさ。ただ、一つ決めておかなきゃいけないのは、レシピの広がるのを良しとするか、それともレシピを隠し通すのか、だ。どっちもそれぞれ利益も不利益もある」「じゃあ、まずはレシピがばれてもいいほうから聞こうか」 親父さんは腕を組んだまましばらく黙り込んだ。さっきまでただの新しい調味料だったはずのものが、いつの間にか店の在り方そのものを左右する話に変わっている。「レシピがばれてもいいなら、正々堂々とやって作ってるところも公開して、みんなで真似してマヨづくりを始めればいい。そうすることで、店としての負担も減る。商人ギルドから人をよこしてもらって専用職人が早くから作り始めることなく、たまに空いた時間に作って終わり、程度で済む。これなら普段の仕事にちょっと増えるだけで済む」「なるほど、不利益は独占じゃなくなるからその分客が集まらねえってことだな」「そうなる。でも、親父さんとしてはそっちのほうが嬉しそうだけどな」「まあな。で、独占することの利益不利益ってのはどういうことだ? 独占することで客が増えて利益で儲けられるのはわかる。それ以外に何かあるのか? 」 親父さんは不思議そうにしている。「たとえば……リンカちゃんが攫われて、返してほしくばマヨのレシピを渡せ。なんて面倒ごとに巻き込まれることだってあり得るってことかな」「それは、困る」 利益の匂いが強くなればなるほど、人も集まる。それが善意ばかりとは限らないことも、俺は知っている。「うん、だろうね。それだけじゃなくても、レシピを盗み見ようとする連中でいっぱいになるだろうな。ただ、レシピを完全に独占するんじゃなくて、契約した店とはそれぞれレシピを融通し合う形でもいいんだ。そうすれば、それぞれの店でレシピを使ったオリジナルの料理が生まれる。さっき親父さんに食わせたソースを絡めた串焼き肉の店、とかな」 たった一つの調味料が、ここまで話を広げるとは思っていなかったのだろう。
last updateLast Updated : 2026-05-16
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第35話:有休の中の休日

 マヨネーズ職人の朝は早い。とまではいかないが、いつもの強烈な朝日に目をやられて起きるのが、もはや恒例になってしまった。おはようございます。 今日は休み。昨日銀貨16枚も稼いだおかげでもあるが、これでゆっくりマヨづくりに神経を注げるというもの。さあ、今日もしっかり頑張るぞ。 気持ちよく寝ているセルフィを起こさないようにそーっと部屋から抜けると、井戸でいつも通り顔を洗い、顔を拭き、そしてまたこっそり部屋に戻り、今日は綺麗なほうのパンツに履き替え、服も綺麗な服に着替える。今日は一日食品を取り扱う日だ、できるだけ衛生環境のいい服でいたい。 パンツも洗って……多少手が汚くなったが、まあ、このぐらいは許容範囲だろう。きれいな水で洗っているし、石鹸……ほしいなあ。朝市で石鹸がないかどうか調べてみるか。もしかしたら他の町や他国から流れてきているものや、石鹸のようなものとして売り出されているものがあるかもしれない。汚れが落ちて清潔になってくれれば何でもいい。できるだけ綺麗な環境でマヨも作りたいしな。 朝市で……そういえば歯ブラシや磨き砂なんかも仕入れなくちゃいけないな。とパンツを洗いながら考えているところで寝ぼけ眼のセルフィが起きてきた。「おはよう、セルフィ」「おはようございます、ご主人様」 セルフィはもう着替えてきていて、肌着を手にしてきていた。俺の洗濯も急がないとな。「すまん、洗濯中だ。先に顔でも洗っていてくれ」「はい、そうします」 セルフィが身支度を整えている間に洗濯をし終わり、部屋に洗い物を干している間にスムーズに洗濯を終わらせたらしく、セルフィが洗濯物を干しに来たので一緒に干しておく。さて、朝食に入る前に……食堂を見ると、もう並んでいる人の姿が。昨日の今日で朝一から並び始めた人がいるらしい。 早速リンカちゃんが今日の昼からだからその時にまた来てくれ、と追い返している。「おはようリンカちゃん。朝から大変だね」「おはようございますタカナシさん。今日はよろしくお願いしますね」「うん、おかげでいい休日になりそうだよ」「休日……? 」 リンカちゃんまで怪訝な顔をしているが、まあいい。とりあえず荷物かごを借りて、今日は倍の量を作る予定だ。しっかり働いて……ああ、今日は休みだったな。休みの手慰みに副業でもやるとしよう。「セルフィはどうする? ついてくる
last updateLast Updated : 2026-05-17
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第36話:マヨマヨのマヨ

 買い物かごを親父さんに渡して、親父さんがジャガの実と今日の分の仕入れを買い集めに行く。その間にリンカちゃんがスープを温め、今日の朝食分を出してくれた。白パンがちょっと多めの硬くなったパンをスープの残りでふやかしながらしっかり食べる。今日はしっかり休みを取るからな。そのためにもしっかり食べておく必要がある。 普段よりちょっと多めに入れてくれたスープと、一つ多いパンでしっかり腹を満たした後、さっそくマヨづくりを始める。今日もセルフィにはゆっくり油を注いでもらう係を担当してもらおう。二回目だし多少慣れ始めただろうし、今回は量も作るからしっかりと作っていく。もしかしたら、しばらく朝の仕事はこれになるかもしれないな。 しっかりマヨのための準備をして、念のため石鹸を少し使って手を洗う。泡立ちこそないものの、しっかり保湿と手の周りの汚れみたいなものは落ちている気がする。実際に服に使ってみて、本当に効果があるのか検証が必要だな。もしかしたらなんちゃって石鹸を買ってしまった可能性もある。が、とりあえず今のところは効果があると考えておこう。 セルフィと手を洗った後、さっそくマヨづくりを始める。昨日と同じ手順で、油以外をしっかり混ぜた後、少しずつ油を流し込んでいく。早く撹拌機が欲しいぜ。手動でも自動でも泡立て器でもいい。かき混ぜることに特化した専用の道具が欲しい。さすがにそこまでのものはまだ発明されてないらしい。金属を扱うギルドがあればそこにお願いする必要がありそうだ。 どこまでギルドがあるのかも知る必要があるからな。明日からの重労働に向けて、ちょっと頼みに行くのもあるかもしれない。特注で何か作ってもらう……というのも悪くなさそうだ。さっそく今日の内に調べて頼んでみよう。鍛冶師ギルドでいいのかな。「ねえリンカちゃん、道具を作ってほしいんだけどどこにどうやって頼めばいいのかな? 」「そうですねえ。料理に使うものなら木工ギルドから鍛冶ギルドに所属するどこかのお店に頼むしかないですねえ。金属か木工かにもよりますが、どちらかで作ってもらう必要があると思います。「マヨづくりが終わったらさっそく出かけてみることにするかな。毎日マヨを作り続けて腕が疲れる前
last updateLast Updated : 2026-05-18
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第37話:ギド親方

「なるほど……確かにサンプル品として作るなら、やはりギド親方のところがいいでしょうね。親方はそういう新しいものに目がないんです」「わかりました、訪ねてみることにします。ギド親方の工房の場所を教えてもらっていいですか」 ギド親方の居場所まではわからないが、工房はここ、と教えてもらったので早速そちらへ向かってみる。と、鍛冶師ギルドにも冒険者向けの探索依頼が張り付けられていることに気づいた。 どうやら、薪や炭、鉱石なんかの取引は冒険者ギルドを通さなくても鍛冶師ギルドへ直接卸すこともできるらしい。一つ物知りになったな。 セルフィと肩を並べてあっちかな? こっちだろ? と道をたどり続ける。やがて、大通りからは抜けて細いわき道に入り、さらに少し入ったところで、目的の「ギド」とだけ名前の看板が出された工房にたどり着くことができた。中は外に比べると静か。 外の他の工房から聞こえる、金づちを振るう音と炭が燃える音、そして送風して一気に窯の中の温度を上げて金属を溶かす音などであふれかえる中、静まり返るギド親方の工房に少し不安げなものを感じながらも中に入っていく。「すいません、鍛冶師ギルドから紹介を受けてきたものですが」「……客か、鍛冶師ギルドからということは無下にはできんな。まあ座れ」 丸太の椅子を出してきて座る。親父さんは人間……にしては小柄だ。これはドワーフって奴なんじゃないだろうか。体つきの割に腕は太く、筋肉が詰まっているのが一目でわかる。「なんだ、ドワーフは珍しいか」「やっぱりドワーフなんですか」「この辺で工房持ってるやつは大体ドワーフだ。兄さんはドワーフをあまり見たことがない地域の出身か」「恥ずかしながらそうでして。つい数日前に田舎から出てきたばっかりで」「そうか、なら仕方ねえな。俺で見慣れて他の工房へ行くときも珍しがることのないようにな。人によっちゃその珍しがるのが気に入らねえってんで仕事を受けない奴もいる」 水を一口飲んで、ギド親方が楽しそうに笑う。仕事中でも酒を
last updateLast Updated : 2026-05-19
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第38話:試作品はあっさりと出来上がり

 30分ほどだろうか。出来上がりほやほやの品をサンプルとして親方は見せに来た。「これでどうだ、全金属だから軽いし、持ち手がちょっと弱々しいが物としての役目は果たしてくれていると思う。試作品第一号だ」 持ち手も金属でできているため、木が入っているとかよりも軽く、逆に清潔感が高いものとなっている。かき混ぜる部分もきちんと泡立て器のように複数のワイヤーじみた針金の太いもので出来上がっていて、ちょっと何もない空間をかき混ぜてみて、その使い心地を想像してみる。「うん……うん……これでいいんだ。これがいい。親方、これは売れるぜ」「だろうな。混ぜ棒使って混ぜてるよりも明らかに効率はよくなる。それほど疲れずに混ぜ合わせられるってのがいいんだろう。斜めに扱えば手首のスナップでかき混ぜることもできるだろうからかなり楽になるだろう。こいつは売れるぞ」 ギド親方も作るうちに、その手軽さと構造の単純さ、そして混ぜ合わせのしやすさから見ても、料理屋すべてに置かれていてもおかしくないその気楽さから、かなりのヒット商品になると考えているらしい。他の異世界転移者が意匠権を取得していれば同じものは作られなかったか、わざわざ作るのを頼む必要はなかっただろう。「じゃあ、もう一本預かったら銀貨1枚置いておいとまするとするよ。親方の仕事の邪魔はしたくないからね」「わかった。銀貨はそこの机の上に置いといてくれればいいからな」 あらかじめ二本目ができてくることを見越して、今のうちに銀貨を置いておく。15分ほどして、もう一つ新しいのが出来上がってくる。さすがに二つ目だと手慣れている、というところだろうか。「ほいよ、二本目だ。これでふたりで作業ができるようになるか、もしくは一本壊れても予備が一本できることになる。これでひとまず契約は終了だな。後はこれが他へ売れた時のお前さんの取り分だが」「それは親方に任せるよ。親方の手間賃がどのぐらいかって相場観がこちらにはない。このぐらいなら支払ってやってもいいだろうって金額を親方から提示されて、それを素直に受け取ることにする」 親方の腕を信頼しよ
last updateLast Updated : 2026-05-20
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第39話:追加とお客さん

 急いで昼の鐘が鳴る前に必要な材料を買いそろえて、ぎりぎり市が終わる前に品物を買いそろえることができた。俺の背中のジャガの実でいっぱいだし、セルフィの背中のかごも空いているスペースはジャガの実で埋め尽くされている。生でも売り始めたってことだし、あればあるだけ売れる、というところだろう。 ガルキンの卵が割れないように慎重に帰ると、まだまだ行列は続いていた。朝からこれなら夜までにはもう売り切れてしまうんだろうな。昼の半ばまで売れたらもうそれで精いっぱいというところだろう。 これ以上の販売は店に負担しかもたらさないので、早めに外注をするか、早々と拠点を構えてもらってそっちで販売を開始する、とかで手を回す必要がある。 すでに、三人で細々と営業を続けているはずの宿屋兼食事処ですらこのありさまなのだ。これは早いところなんとかせねばならんね。 買って帰ってきた後ろで、手早く材料をかき混ぜて……うん、やっぱり泡立て器のほうが手にしっくりなじむな。出来立てということもあってそのうち曲がったり手直ししたり、混ぜるものの成分で溶けたりするかもしれないが、それまではしっかり使わせてもらおう。 なに、多少お高めとはいえ消耗品だ、予備の分も考えて作ってもらう予定ではあるし、一般販売はしたきゃしてもいい。 むしろ、世の中に広まってくれたほうが便利なアイテムでもある。構造も簡単だし、料理にも調理にも菓子作りにも使える便利道具だ。ぜひとも広めてくれて、ちょっとずつでいいので不労所得を増やしてくれればそれでいいのだ。 仮に泡立て器が1個売れて銅貨1枚だったとしても、この町に何千何万のご家庭あるかどうかはわからないが、各家庭に一つずつ買われればそれだけでも金貨が手に届くぐらいの収入にはなる。 それが他の町でも同じように行われるなら……と、市販品で消耗品で便利アイテムな物は、どんどん買われていく。 そういうところでせこく稼いでいこう、それがセルフィのためでもある。俺がいなくなってもセルフィがある程度不労所得で稼いでいけるようにしておく。それが俺にできるせめてものこと。 特に、消耗品であり
last updateLast Updated : 2026-05-21
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第40話:商業ギルド

 商業ギルドの男の食事が終わるのを待って、親父さんに一声かけてから出かける準備をする。「親父さん、さっそく商業ギルドから接触があった。ちょっと話し合いに出向いてくるよ。早ければ数日でこの騒ぎも収まると思う。もう数日の辛抱だから我慢してくれ」「おう、せっかくの稼ぎ時だ。今のうちにしっかり働かせてもらうぜ」「今日は宿の仕事をしてる場合じゃないわね。こっちも稼がせてもらうわ」「ジャガの実蒸かすのが追い付かないですー」 さすがに三人で回していくのは難しいらしい。ふと窓の下の手元を見ると、銅貨が山のように積もり始めたようだ。これだけの量の銅貨、両替するだけでも手間だろう。「では、まいりましょうか。私は一足先に戻って副ギルド長の所在を確認しておきますので、商業ギルドのほうへお越しください。私はラムーといいます」「商業ギルドの場所を教えてもらっていいのですか? 二人そろってまだ町にも詳しくなく、どこに何があるのかはっきりわかっていないところがあるのですよ」 商業ギルドは話によると、町の南西側の大きな建物になるらしい。朝市の立つ場所の近くらしいので、もうちょっと注意深く観察してれば商業ギルドにも気づけたのかもしれないな。「さあ、商業ギルドに向かうか。ゆっくりでいいらしいし、商業ギルドのほうでも大ごとになってる可能性はある。暇で待ってくれているような立場の御仁でもないようだし、先触れを出してもらって、こうして時間を作ってもらえるだけでもありがたいことだな」「マヨは銀の卵亭の名物料理にはならないのですか? 」 セルフィがもったいなさそうな顔をしている。そんな顔するなよ。「元祖マヨ発祥の地、として名物料理になる可能性はあるが、今みたいに列に並んででも買い物に来るってお客さんは減るだろうな。平穏には戻るが、食事には彩りが添えられることになるだろう」「それはそれでちょっと残念ですが、普段のお仕事にも問題が出るようなら前のままのほうがいいのかもしれませんね」 セルフィも、一家三人でマヨに翻弄されるよりは今まで通りの仕事量で、ちょっとだけマヨのおかげでお客さんが増えるぐ
last updateLast Updated : 2026-05-22
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