All Chapters of 有給休暇は異世界で: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話:店か、特許か

 マルタさんは俺の言葉を飲み込むと、一口ティーを飲んで落ち着いた後、話をまとめ始めた。「タカナシ様は冒険者を続けたいのですか、それとも店を持って商人として今後やりくりを続けたいのですか、そのどちらを取るかで決まる、ということでしょうね」 ある程度将来の展望をこれまでの商売の例になぞらえて、いくらかのアドバイスをくれるようだ。「商人の道を選ばれるなら、商業ギルドとしても全面的に支援し、マヨの専門店を立ち上げることも叶うでしょう。その利益は莫大なものになるでしょうし、タカナシ様は毎日ひたすらマヨを作るだけで済みます。当然雇う従業員には奴隷契約なりをかけて秘密を洩らさないようにする必要がありますが、それらは解決できる問題です。大きな負担にはならないでしょうね」 ここまではいい。だが、俺には時間制限があるし、商人の道を選ぶのは俺ではなくセルフィ、ということになる。それではダメだろう。それにセルフィのスキルである剣聖スキルを完全に殺すことになってしまう。 親……ではないが、ご主人様が奴隷の、解放される前提である子の行く先や筋道、選択肢を狭めてしまうことはできるだけ慎まなければならない。「それがですね、私はしがない冒険者であって、店を構えてどっしり腰を据えて商売……というわけにもいかんのですよ。ですから今回取るべき方法は後者になります。レシピの特許を取り、マヨを取り扱う店にはいくらかの特許料を支払ってもらってそのレシピを作り出す。もしくは、そのレシピを改造して新しいレシピを考案する。商売ですから新しいレシピも浮かぶでしょうしそうやって競い合っていくにせよ、まずは元のレシピを新しがって購入し始める商売の同志を募るところから始めないといけません」「なるほど、最初から方針はお決まりでしたか。では、そのあたりの取り立てや商売敵、真似して商売を始める店やマヨのレシピを盗み出そうとしている商売人の相手は商業ギルドに一任する、というイメージでよろしいのですか? 」 マルタさんは少し厳しい顔をしてこちらに向き直る。たしかに、商売敵やレシピ泥棒に対する対応を個人でやっていたら話にならない。それらは商業ギルドに
last updateLast Updated : 2026-05-23
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第42話:レシピ伝達

「では、さっそく作り方を教えていただきたいところですが……紙とペンだけあればいいですかな? 」 マルタさんが商売っ気を出し始め、レシピの継承を開始する。「それもいいですが、実際にできたものを持ってくるほうが速いと思います。店に戻って残ったマヨと……可能ならば材料を集めて実際に作ってしまうほうがより確実だとは思うのですが」「それもそうですね。では、材料とレシピを書いておいてくれますか。準備ができ次第、品物を買い集めて待っていることにいたしましょう」「あ、ではちょっと一旦銀の卵亭に戻っていいですか。並んでいるお客さんに、商業ギルドにレシピを売却した件と、いずれ商業ギルドの息のかかった店から正式にマヨが販売されること、それからそっちならジャガの実とセットじゃなくても、マヨだけを購入できるようになるかもしれない、というところまで含めて説明したほうがいいと思うのですが」 マルタさんは少し悩んだ後、人を呼んだ。「お呼びですか」 さっきのラムーさんだった。「タカナシ様についていって……こちらの内容を、店の周りで並んでいるお客さんに説明してさしあげなさい」 さらさらとさっき俺が言った内容を紙に書くと、ラムーさんに渡した。ラムーさんはふむふむと内容を読み、理解したようだ。「わかりました。早速行ってまいります。時間はどのぐらいにいたしますか」「そうですね、今並んでいる方々にさえ説明できれば問題はありません。一通り話し終わったら、私の名前を出しても構いませんので、銀の卵亭の皆さんにも同じ言葉をかけてあげておいてください。紙はそのまま店の前に張り付けておいて構いません」 チラ見したメモの内容を見ると、マヨだけの販売、専門店、近日開催、店に集中するより商業ギルドからの続報を待て、と複数の単語を連ねているだけ。これを文章にして説明して来い、ということなんだろう。ラムーさんもそれぐらいはできるのか、納得して懐に紙をしまった。「では、行ってまいります」 ラムーさんが一足先に退席していく。さ
last updateLast Updated : 2026-05-24
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第43話:あっちへふらふらこっちへふらふら

 泡立て器を使って滑らかに混ぜ込みながら、油を継ぎ足していく。おおよそ酢や卵と油の割合は5分の1ほどだ、とわかってはいるものの、実際に作った分量はレシピとして残さないといけないので、それぞれ重さや分量を計ってもらって計算してもらうことに。俺作る人。彼記録する人。なのでこっちは分量ぎりぎりまで油をちょい足ししながらマヨをひたすらかき混ぜる。「そのかき混ぜてる道具は見たことありませんね。それも新商品ですか? 」「鍛冶師のギド親方のところで作ってもらったんです。これがあるとマスタドの実をつぶすのはともかくとして、かき混ぜるのがずいぶん楽になりますから」「なるほど……そっちで儲ける算段は行っていますか? 」「ギド親方には鍛冶師ギルドか商業ギルドに相談すればいいんじゃないか、という話はしましたが、実際にどう動いているかまではわかりかねます。商業ギルド内部か、鍛冶師ギルドに掛け合ってもらえばわかるかと。あと、ギド親方にはサンプル品をもう一つ作ってもらってあるので、それを見本にして考えてもらうのが分かりやすいと思います」「なるほど、別件として記録しておきましょう」 油をほぼ混ぜ終わり、出来上がったマヨを味見。うむ、丁寧にできたな。「これで完成です。コツは、油をゆっくり流しいれていくことと、油以外はすべて事前に混ぜてしまうこと、ですかね。後ははちみつやマスタドの実は入れなくても、酢と油と卵だけでも出来上がる、というところがポイントでしょうか」「なるほどなるほど……卵と酢と油を使うところがポイントなのですな。後は風味付け……はい、了解です。ベースレシピの範囲としては、酢と卵と油を使うところまでがメインの調味料になるのでしょう。しかし、油と酢と卵が混ざるだけでこんなに美味しいソースになるとは……最初に気づいたあなたもすごいですな」「卵黄には、油と水分を混ぜて一緒にする力があるんですよ。卵黄がないとこのレシピは成り立ちません。肝は卵黄の量ということになります。それによって他の酢と油の量が決まる、といったところですね」
last updateLast Updated : 2026-05-25
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第44話:マヨ中毒者の罠

 歯車式手回し泡立て器の図面を見せ、構造を説明する。手回し式で、上から支えているだけで、あまり力や手首のスナップを利かせることもなく、一人でも大量の材料をかき混ぜることができるだろうと解説。本当はこっちを先に作ってもらうべきだったのだろうが、試しに作ってもらった泡立て器で満足してしまった俺のおかげで二度手間になってしまった。 ギド親方には、マヨが商業ギルド預かりのレシピになったことと、それにより大量生産大量消費の可能性が出てきたこと、そして、かき混ぜる人手を減らすためにこの歯車式手回し泡立て器が利便性の良い道具として働いてくれるであろうことを説明する。「なるほど……仕組みはわかった。作り方もわかった。後は値段だな。人一人雇う人件費より安けりゃそれなりに売れてくれる……とみていいな? 」「それだけじゃなく混ぜ棒でかき混ぜて大量にソースを作ったりしている大きめの飯屋でも、もしかしたら人を減らせてその分他に人を回せると好評になるかもしれない。そこまでじゃなくても、物珍しい機械を使って料理を作ってるってだけでも評判にはなるだろうな。後は菓子を作ってる職人なんかにも売れるだろう」「菓子職人か……確かに菓子といやあ粉と混ぜもんとの戦いだからな。混ぜ棒に比べてできるだけ均等に混ぜることができるってんなら、泡立て器じゃなくてこっちをいきなり買うって手もある。連中金払いは良いからな」 やはり菓子職人は高級志向で金も持っているらしい。まだまだ砂糖が高級品の世界のようだ。さっき出されたお菓子も、やはり一枚で銀貨が飛んでいくような高級品だったのだろう。もう一枚ぐらいセルフィに食わせてやりたかったな。「まだ仕事の話してます……ご主人様、お休みはどうなさるのですか」 そんなセルフィは仕事の休みについて俺にチクチクと刺し傷を作りつつある。もう、今いい感じで休んでいるんだから邪魔しないでほしいんだが。「いいかいセルフィ、今日はダンジョンへ行ったかい? モンスター狩りに行ったかい? 薬草取りに行ったかい? 」「してないですね。ずっと眉間にしわ
last updateLast Updated : 2026-05-26
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第45話:豪華な昼食

「さて……休みにふさわしい豪勢な昼食を食べに行こう。お金はさっきもらったから、今なら店ごと買えそうなぐらいだぞ」「そこまでですか! 」「セルフィ二人分ぐらい儲けたからな。マヨのおかげでセルフィも救われたようなもんだ」「私二人よりマヨのほうが価値があると言われているように感じて少しなんだか微妙な気分です……」「まあ、そのおかげで今日の財布には余裕がある。仕事もしてないのに人の手伝いをして右から左へ商品を流しただけで大金貨1枚の儲けだ。さあ、何を食べたい? なんでもいいぞ」「じゃあ……ミニボアをいっぱい食べたいです! あと、お菓子も! 」 ミニボアはともかくとしてお菓子か……お菓子の相場も調べておく必要はありそうだな。向こうでの甘味は羊羹でしばらく楽しむことはないとは思っていたが、実際にクッキーが出てきたことでこっちにも甘味に相当するものはある程度一般的な部分には存在していることが分かった。「とりあえず豚は出荷亭に向かうか……あそこならミニボア料理がいくらでも手に入りそうだ」「はい、向かいましょう」 セルフィが少し前を歩いて嬉しそうにしている。セルフィとしては、仕事もせずにただ歩きまわってるだけで好きなものが食べられているんだからそれこそ休みを満喫しているのでは? と思わなくもない。俺も休みをしっかり満喫したことだし後はゆっくりして過ごすか。 豚は出荷亭に到着し、さっそく丸ごとコースを注文。後はまあ流れで……ということで、丸ごとセットが届き、それぞれ好きな部位から食べ始める。セルフィは半生仕立てのロース部位あたりがお好きらしい。俺はやっぱり肉を生で食べるのは馬肉以外には抵抗があるので、やはり茹で豚部位からいただく。 前回も来たが、ここのミニボアは毎日いい感じに寝かせて熟成したものを使っているのだろうな。そうでもしないと、一匹原価銅貨5枚のミニボアに15枚も支払って食べに来る客がいるとは考えにくい。実際にはここに一人いるけどな。
last updateLast Updated : 2026-05-27
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第46話:結局仕事するタカナシ

「……というのをやるのがリバーシだ」「なるほど、面白そうです」「今銅貨が……64枚あるな。お金で遊ぶと怒られそうだが、銅貨でやってみるか。こっちが表でセルフィの面、こっちが裏で俺の面だ。俺はルールを細かく知ってるから、セルフィが先に打っていいぞ」「はい、では……ここに打ちます」 セルフィとリバーシを始めた。マヨもなければリバーシもない。異世界チートはまだまだ有効範囲が広いということだな。そして、銅貨でもできるのにやり方を知らない子供がいるということは、この遊びはまだ誰も思いついてない、ということになる。 まだ、金を稼ぐ余地はあるな。今度は木工ギルドがあればそこに掛け合ってみて、色の違う木か何かで作ってもらえばまた金が稼げるかな。「むー」 気が付くと、セルフィがむくれている。「どうした、セルフィ」「その顔、お金儲けのことを考えていますね」 なんでわかったんだろうな。鼻がぴくぴく動くとか、そういうそぶりを見せていただろうか? 「やはり、お金儲けのことを考えています。今、私が知らないなら世の中も知らないかも、とか考えてましたね! 」 エスパーかこの子……やだ俺すごい子を娘にしちゃった……「またお仕事の考えをしています……休むことに集中しましょうよ」「いやあ、この遊びの特許を取ったら儲かるかなと思って」「それは……まず遊んでから考えます。次、ご主人様の番です」「あいよ……ここ」 ふむ。これなら長年かけて作り出されていくだろうし、もっと長い目で見てもおもちゃとしても売り上げが見込める。よいしょ。おまけに、大人から子供まで楽しめる。各家になくても、集会所みたいなところがあればそこに数個置いてあるだけで熱中すること間違いなし。ここだ。「むむむ……」「ご主人様、こういう遊びを思いつく割に強くないですね」 気が付くと、表一色になっていた。セルフィ、強いな。剣聖はリバーシも強くなる傾向もあるんだろうか。それとも俺が金の計算をしてばっかりいるので集中できてな
last updateLast Updated : 2026-05-28
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第47話:木工ギルドの手習い

 木工ギルドの職員に詳細を話してしまうことにする。「実は、新しいゲームを考えたのでそのゲームの説明をするにあたって木工職人の手を借りて、そのゲームの素になるパーツを作ってほしいのですが、職人の手を借りて一つ一つ丁寧に……というほどに豪華なものではないのですよ。なので、どのように注文していいものなのか迷ってしまって。それで」「なるほど。だとすれば徒弟の出番ですかね」「徒弟の制度があるんですか」「ええ、木工ギルドにも、鍛冶師ギルドにも、それぞれ徒弟制度があります。あえてお弟子さんを取ってらっしゃらない親方もいますが、複数人抱え込んでどうやって育てていこうか悩んでいる親方もいらっしゃいますので、糊口をしのぐ形になるとしても、何かしら仕事を募集してる工房に引き合いがあれば……あ、モクロク親方! 」 後ろを見てふと手を振っている先を見ると、人間の親方らしい人がお供を三人連れてカウンターに寄ってきた。「なんだい、仕事でも見つかったかい? こいつらを食わせてやれるだけの仕事とまではいわないが、何かしら手習いにいいぐらいの仕事があればいいんだが」「もしかしたら見繕えたかもしれません。ええと……」「あ、タカナシです」 名乗ってなかったので名乗る。どうも、商業ギルドでは大騒ぎのタカナシです。こちらでははじめまして。「こちらのタカナシ様が徒弟レベルの仕事を頼みたいと申し上げてまして。一度お話だけでも聞いてみたらどうかと思うんですが」「ほう……詳しく話を聞かせな。レベルと費用によっちゃこいつらが頑張るからよ」 そういって、徒弟らしき人たちの頭を軽くたたいて回る。「とりあえず……座って話しませんか。まずはいくらかかるのか、どのぐらい作るのか、それから、流行りそうなのか。それらを見込んでから作り始めないといけませんからね」「お、なんだ? そんなにおもしれえ遊びか? だったら俺にも一口噛ませろよ。こう見えて遊びにはうるさいんだ」
last updateLast Updated : 2026-05-29
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第48話:お休みは終わり

 銅貨90枚分の支払いをして、木工ギルドにさよならを告げる。親方が作る分は、いざ売れた時に商業ギルドと直接交渉して決めるらしいので、俺が発注したことにはならないらしい。とりあえず、ゲームの遊び方の説明書が必要だな。同じものを三枚用意する必要があるだろう。帰ったら紙に書いて説明書を作るか。セルフィにも文字を覚える練習にもなるだろうしな。 さて、戻るか。今日は一日良く休んだ。明日は何をしようかな……と、銀の卵亭に戻ると、セルフィはお休み中だった。よく寝ている。寝る子は育つというし、寝ている姿はかわいい剣聖様だ。さて、寝ている間にリバーシのルールを書き写しておかないとな。プリンタとかあれば印刷できるのに、手書きでルールブックを作らなければいけないのが面倒くさいところだな。 日暮れ前までにルールブックを三冊分書き終えると、ちょうどいい感じに暗くなってきた。そろそろご飯なのでセルフィを起こす。「セルフィ、そろそろ昼寝を終わらせないと夕飯が入らなくなるぞ」「ん……あ、ご主人様おかえりなさい。また仕事に出てましたね……」 ちょっと寝ぼけた頭で反応をしているので、怒っている感じはない。もうしょうがないなあ……という感じだ。「リバーシが遊びとして広められたら、リバーシの特許で一儲けできそうだからな。これでまたセルフィが一段階仕事しなくてもよくなる」「私のため……なんですか? 」 セルフィが意外そうな声と顔で俺に聞き返す。「リバーシが広まって、いろんなところで作られて、楽しまれて、リバーシのセットが売れれば売れるほど俺の懐に特許料が入ることになる。俺がいなくなった時、セルフィがそれを受け取れるようにそのうち変化させるつもりだ。そうなれば、毎日仕事しなくても暮らしていけるように変更するまでだ。その後は……たくましく生きてくれ」「むぅ……私のためとはいえ、お休みの日でうろうろされるのはあまりお勧めされないかと」「ちなみ
last updateLast Updated : 2026-05-30
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第49話:ダンジョンダンジョン楽しいダンジョン愉快なダンジョン

 翌日、いつもの強烈な日差しで目が覚める。そういえば、こっちに来てから一回も雨が降っていないな。乾期と雨期があったりして、はっきりとした季節なのか、それとも滅多に雨は降らないのだろうか。いずれにせよ、今日も仕事日和だ、しっかり働いていこう。 セルフィを起こす。今日は仕事の日だからな、しっかり朝から働いてもらう必要があるし、セルフィも仕事の日なら俺が朝から忙しそうにしていても問題はないだろう。「おはよう、セルフィ」「おはようございます、ご主人様」 昨日は夜も早くに寝たのでばっちりの目覚めのようだ。いつも通り身支度をして汚れてもいいパンツと服に着替える。服は軽く洗うが、一日着ていたとはいえ汗もかかずにいたおかげでほとんどにおいも傷みもなさそうだ。また、休日に着るまでしばらく眠っていてもらおう。パンツも履き替えてしっかり洗う。パンツもほとんど汚れはなく、石鹸できちんと洗うも汚れらしきものも流れ出てこなかった。 しっかりと洗い物をした後で、石鹸と一緒に途中洗いの水をそのままセルフィに渡し、石鹸が溶かし込んであるからそのまま使うと服も肌着も綺麗になりやすいぞ、と伝えると、一生懸命丁寧に綺麗にし始めた。 その間に服を干してパンツを干して……よし、後は歯磨きをしておけば朝の身支度は完璧だな。 歯ブラシ……といっても基本は塩と布だ。布で歯の隙間以外を磨き、塩をつけて研磨剤代わりにしっかりと磨いていく。ついでに塩分も摂取できてお得だ。後はつまようじみたいなものがあれば完璧なんだが、木工ギルドで作るにしても、無駄が多すぎてあまり流行らないだろうな。流行らせるには何かきっかけが必要だ。 木工ギルドにはすでにリバーシの作成というひと手間を加えてもらっているのだから、そっちが落ち着いてからでも問題ないだろう。 一通りの身支度を整えて、朝食をもらいに食堂へ下りていく。いつも通りの光景が見られるところに、リンカちゃんがいたので挨拶。「おはようリンカちゃん。いつもの朝食を二つと、持ち運びの昼食も二つお願いできるかな」「わかりました。お昼はこの間のものでいいですか?
last updateLast Updated : 2026-05-31
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第50話:目標四階層

 前回に引き続き、北門から出てダンジョンへ向かう。道中ミニボアが出てきたので、血抜きをしながらのんびりと進む行程だ。手軽に血抜きしながら運べるように、アイテムボックスにぶら下げるための棒と縄でも入れておいたほうがいいかもしれないな。 ミニボア三匹の血抜きが終わったところでダンジョンの入り口に着き、ミニボアをアイテムボックスにしまった後で入り口で監視している兵士にFランクですという証明を示す。「最下層まではいかないようにな、注意していけよ。昨日は怪我人が出たんだ」「はい、御忠告ありがとうございます」 素直に従っておこう。そういえば、冒険者ランクが上がる条件は何だろう。今日の帰りにでもギルドで確認しておくか。「さあ、お仕事ですよ、まじめにやりますよ! 」 セルフィがやる気を出して仕事をしようとしている。オンオフの切り替えがちゃんとできててえらい。その点、仕事と休みが混在しがちだと指摘された俺はセルフィほどのスイッチのパチッとぶりは期待されずとも、まじめに頑張ることにする。 一層のビッグラットを蹴散らし、二層のコボルトで肩慣らしをして、三層のコボルトファイターとコボルトスカウトできっちり自分の実力を確認していく。 コボルトファイターもコボルトスカウトも戦いなれてはきたが、やはりコボルトスカウトの動きの速さにまだ翻弄される自分がいる。もう一レベルぐらい上がったら慣れてくるのだろうか、と考えていると、剣術のレベルが上がったアナウンスが聞こえてきた。 これで……もうちょっとはマシな動きができるようになってるのかな。さて、次のコボルトスカウトで試してみよう。 コボルトスカウトがちょうどよく向かってきたので、こちらから出迎えて迎撃する。どうやら剣術レベル4あるとコボルトスカウトの動きも目で追えるようになってきたらしい。そのままコボルトスカウトが懐に入り込んできて、突き上げるようにナイフを振り回すのが多少ゆっくりに見えるようになってきた。 そのままスウェーバックで避けながらショートソードを正面に突き入れると、下からせりあがってきたコボルトスカウトの胴体にショートソードが直撃する
last updateLast Updated : 2026-06-01
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