その日の夜。 仕事を終えた悟は、疲れた足取りでマンションへ戻ってきた。「ただいま」 返事はない。 リビングへ入ると、恵はソファに寝転がり、スマートフォンを眺めていた。「おかえり」 気のない返事だけが返ってくる。 悟はキッチンへ向かい、思わず足を止めた。 朝、まとめておいたゴミ袋はそのまま。 シンクには食べ終えたカップ麺の容器や皿が積まれている。 テーブルの上には飲みかけのペットボトル。 昨日より散らかっていた。 悟は小さく息をつく。「恵」「何?」「今日は……何もしてないのか?」 恵はスマートフォンから目を離さない。「してないけど」「一日家にいたよな?」「だから?」 その一言で、悟の胸に何かが引っかかった。「少しくらい片付けてくれても……」「は?」 恵が勢いよく起き上がる。「何それ」「俺だって仕事で疲れて帰ってきてるんだ」「だから私がやれって?」「住ませてもらってるんだから、それくらいは普通じゃないか」 その瞬間、恵の表情が変わった。「何それ!」 鋭い声が部屋に響く。「私にお姉ちゃんの代わりをやれって言うの?」「そんなこと言ってない」「言ってるじゃない!」 恵は立ち上がり、悟を睨みつけた。「ご飯作って、掃除して、洗濯して!」「それくらい普通だろ」「普通?」 恵は鼻で笑う。「やっぱりあんた、お姉ちゃんのこと家政婦扱いしてたんじゃない!」「違う!」 思わず悟は声を荒げた。「佳苗は……」 言い返そうとして、言
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