「御堂社長。お待ちしておりました」 春菜がエプロンで手を拭いながらフロアに出ると、礼司は鷹のような目で木崎たちを観察した。 冷たい美貌の持ち主である彼は、目つきを鋭くすると本当に威圧感がある。「君たちが、新しいスタッフか。御堂だ」「は、はい。木崎と申します。以前は一ノ瀬でスーシェフを――」「経歴は聞いている。腕は春菜さんが保証しているのなら問題ないのだろう」 礼司は用意されたテーブル席に腰を下ろした。 木崎たちが一列に並ぶ前で、礼司は腕を組む。「型通りの面接をさせてもらう。君たちがこの店で働く条件はただ2つだ。料理の質を落とさないこと。それから」 礼司の視線が一層鋭さを増し、木崎たちを射抜いた。「彼女を傷つけるような真似は決してするな。過去の職場の因縁をここに持ち込むことも許さない。もし春菜さんに余計な負担をかけるようなことがあれば、即座に辞めてもらう。分かったか」 冷ややかなプレッシャーに、木崎たちは思わず顔を見合わせた。「もちろんです。俺たちは春菜さんの下で料理をするために来ました。前の店での出来事は、俺たちも不満こそあれ蒸し返すつもりはありません。ご迷惑をおかけするようなことは絶対にありません」 木崎が代表して深く頭を下げる。 田中や他のスタッフも慌ててお辞儀をした。(ちょっと、いくらなんでも威圧感が強すぎるんじゃないかしら。みんな怯えちゃってるじゃない) 春菜は苦笑いを浮かべて、助け舟を出すことにした。「社長、彼らは本当に信頼できる仲間です。心配はいりませんよ。それより試食の準備ができています。お持ちしましょうか?」 礼司は腕を解き、小さく咳払いをした。「ああ。頼む」 春菜は厨房に戻り、煮込み上がったラタトゥイユを小ぶりの白いココット皿に盛り付けた。 野菜の角が崩れず、オリーブオイルとトマトの水分がほどよく煮詰められて、とろみのあるソースになっている。 その隣には、メインとなる肉料理を用意した。 表面をカリ
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