「今から、ですか? できなくはありませんが、もう遅い時間ですよ」「構わない。私もちょうど、少し小腹が空いていたところだ。君の新作があるなら、ぜひ味見させてもらいたい」 礼司の言葉に、春菜は思わず笑みをこぼした。「ふふ、分かりました。では、少しお待ちください。すぐに作りますから」 春菜は席を立ち、厨房へと向かった。 厨房に入った春菜は、冷蔵庫から手早く食材を取り出した。 今日仕入れたばかりの新鮮な真鯛、よく熟した桃、そして彩りの良いハーブ類を調理台に並べる。 手際よく真鯛を薄切りにし、皿に並べる。オリーブオイルとレモン果汁、少量の塩とピンクペッパーでマリネ液を作り、真鯛に回しかけた。 仕上げにディルとセルフィーユを散らせば、彩り豊かなカルパッチョの完成だ。 続いてデザートの準備に取り掛かる。 桃の皮を丁寧に剥き、白ワインと砂糖、レモン汁で軽く煮てコンポートを作る。 冷水で粗熱を取り、ガラスの器に盛り付け、ミントの葉を添えた。 調理時間はわずか十数分。 春菜は2つの皿をトレイに乗せ、礼司の待つテーブルへと運んだ。「お待たせしました。真鯛のカルパッチョと、桃の白ワインコンポートです」 礼司の前に皿を置くと、ハーブの爽やかな香りと、桃の甘い匂いがふわりと漂った。「見た目も美しい」 礼司はフォークを手に取り、まずはカルパッチョを口に運んだ。 ゆっくりと咀嚼し、味を確かめる。「……真鯛の身が程よく締まっていて、オリーブオイルのコクとレモンの酸味が絶妙だ。ピンクペッパーのアクセントも効いている」「今の時期の真鯛はさっぱりしているので、酸味を少し立たせて食欲を刺激するように仕上げました」 次に礼司は、スプーンで桃のコンポートをすくい上げた。 口に入れた瞬間、彼の表情がふっと和らいだ。「甘さがくどくない。白ワインの風味が桃本来の甘みを引き立てている。食後のデザートとして完璧だ」 礼司はスプーンを置き、春菜を見た。
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