第121話 漆黒の中の光崩れ落ちそうな澪の体を、怜央の力強い腕がしっかりと受け止めた。「怜央さん……私……もう……」震える声で呟く澪の視界は、次々と真っ暗に染まっていく欧州主要都市のマップで埋め尽くされていた。自分がこれまで積み上げてきた完璧なロジックも、研ぎ澄ましたアルゴリズムも、ヘキサゴンが誇る巨大なインフラの力技の前にはただの砂の城に過ぎなかったのだ。「諦めるな、澪」怜央の声は、この絶望的な暗闇の中でも驚くほど穏やかで、そして揺るぎなかった。怜央はそっと抱っこ紐の中にいる陽の小さな手に触れ、その温もりを伝えるように澪の手を重ね合わせた。「見ろ、澪。どれほど世界が暗闇に包まれようと、俺たちの手の中には守るべき確かな光がある。……君は一人で戦っているんじゃない」「……怜央さん……」「ヴィクトリアは『力』で世界をひれ伏せさせようとしている。だが、どんなに強大なシステムであっても、物理的な通信やデータが流れている以上、必ず『負荷の歪み』と『接続の接点』が存在する。奴らが世界の全インフラを力づくで抑え込んでいるということは、ヘキサゴン自身の暗黒コア(ネクロ・ネットワーク)もまた、限界に近い計算負荷を全世界に露出させているということだ」澪の瞳に、ハッと小さな光が宿った。エンジニアとしての思考が、絶望の泥濘から高速で立ち上がり始める。(そう……! 欧州全土のインフラを同時に力づくで押さえつけるなんて、いくらヘキサゴンでも単一の分散処理じゃ足りないはず……! 奴らは世界中の通信基盤を『力技』でハックして束ねている。ということは——)「……接点(ノード)の過負荷……! ヴィクトリアは余裕を見せているけれど、ネクロ・ネットワーク自体も全開でリソースを食い潰しているんだわ……!」澪は勢いよく立ち上がり、涙を拭って再びキーボードへと向かった。「ルミナス・グリッドの目的を『防御』から『超高負荷トレース』に切り替えます! 敵が押し寄せてくる巨大なデータの津波……その津波の『波源(コア)』を逆に辿る!」「よし、天照の全出力をそのトレース解析だけに集中させろ。資金も回線も、俺のすべてを叩き込む!」怜央の言葉と同時に、天照の量子プロセッサが咆哮を上げた。澪の指先が、限界を超えた速度でコードを打ち込んでいく。防ぐのではない。押し寄せる悪意の津波に自ら飛び込み
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-13 Mehr lesen