あの頃の私は、どうしてあんなに馬鹿だったのだろう。どうして、あんなに遠くまで逃げようとしたのだろう。どうして、自分を好きになってくれない人を好きになってしまったのだろう。私が突然泣き出したことで、兄たちも両親もひどく驚いていた。母は痛ましそうに顔を歪め、私を抱きしめたまま、何度もため息をついた。ずっと心の奥に隠していた秘密を、ようやく家族に話せた。それだけで、胸につかえていたものが少しずつほどけていく気がした。離婚の件については、怜司兄さんがすぐに動いた。人脈を使い、地元で評判のいい弁護士を紹介してくれたのだ。弁護士はすぐに征也側へ書面を送り、私の離婚の意思が固いことを伝えてくれた。話は、思っていたよりも順調に進んだ。私が家を出て二週間ほど経ったころ、弁護士は征也へ、こちらの条件をまとめた離婚協議書案を送った。征也はその書面を受け取ると、すぐに私へ電話をかけてきた。病院で一度ブロックを外したまま、ブロックし直すのを忘れていたのだ。電話の向こうで、征也は怒りを含んだ声で言った。「莉乃。二週間も家に戻らず、まだ足りないのか。今度は弁護士まで立てて、こんな書面を送りつけてくるとはな」私が姿を消して、もう二週間になる。それでも征也は、私がまだ拗ねているだけだと思っているらしい。あの男の中では、私はそれほどまでに彼から離れられない女なのだろう。「勝手にそう思ってれば。書面は届いたんでしょ。早く署名して」前の夫が信じようと信じまいと、もうどうでもよかった。私はただ、この関係を一刻も早く終わらせたかった。「結婚を何だと思ってる」征也は、電話の向こうでまだ私を説教していた。「こっちは忙しいんだ。お前のわがままに付き合ってる暇はない。これ以上家に戻らないなら、本当に署名するぞ」「すれば?それで私が戻ると思ってるなら」思わず笑ってしまった。私がまだ強がっているだけだと思ったのだろう。征也も引く気はないらしく、すぐに言い返してきた。「お前が署名しろと言ったんだ。後悔するなよ。あとで戻りたいなんて泣きついても、そう簡単にはいかないからな」征也は、まだ私が本気ではないと思っていたのだろう。家には、まだ私の物が山ほど残っている。クローゼットには、買ったばかりのバッグも
อ่านเพิ่มเติม