All Chapters of 錬金術師は国から追われる: Chapter 51 - Chapter 60

65 Chapters

51 師匠に迫り来る危険

レオンハルトが、命に関わる大怪我をしていた頃――ミレイユは、師匠であるアリエルの日記をめくる手を止められなかった。そこには、だんだんと自分の名前が増えていく。そして、その中にある話の幾らかが、自身の記憶にある出来事と重なっていった。師匠から初めて錬金術を習った日。大きな魔物を狩った成果を自慢された日(私は素材の説明だと思って聞いていたけど……)武器に付与する倍率を間違えて大失敗した日――小さな思い出が、紙の上に散らばっていた。「師匠、こんなに人に伝えることが不器用なのに。こんなに一生懸命、私が人らしく生きられるように、努力してくれてたんだ」胸の奥がじんわり熱くなる。師匠は何でも記録に残した。錬金術の小さな気づきや研究レシピも……狩りの方法からその取れる素材のことも……そして、私の育児も。そのうえで、感じたことや考えを「これは人と同じ感覚なのか?」と、頻回にダリウスに尋ねており、そのダリウスの返答まで、記録に残してあった。――自分は他の人と違う。そう理解してから、不安だったのだろう。思い返せば、私が店に出るようになってからは、師匠より従業員と過ごす時間の方が長かった気がする。「ふふっ、ミレイユにお店は任せた!いい新製品、作るからね」そう言っては、すぐ留守にしてしまう。どこかに素材を採りに行くのだと思っていたが、樹海防衛部隊と錬金術師を両立で大変だっただろうし……意識して私と距離を置いたんだと思う。きっと、師匠は、私を普通の子のように育てたかったんじゃないだろうか?(師匠と一緒にいた時間って、意外と少なかったんだな)◆王都で暮らすようになって数年――
last updateLast Updated : 2026-08-16
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52 味方も他の選択肢もない

ミレイユが、師匠とダリウスの過去、そして、師匠に誰からの危険が迫っていたのか知った頃――とりあえず、ミレイユのハイポーションで傷を治したレオンハルトはカイルを見つめていた。カイルは、例の睡眠玉がよく効いてくれてまだ眠っている。以前、自分が浴びた睡眠玉と違い、ミレイユは、針がついた改良版を作ってくれたので、前のように半日近く眠ることはなさそうだが……「とりあえず、しっかり縛っているし、まだ目覚めそうにないから、みんなは安全かな」信頼していた部下を失った痛みは大きい。これからの指揮は、俺ひとりでやらなければならないのか。残った連中も、本当に信用できるのかどうか……それすらまだ分からない。レオンハルトは、これから誰も頼れない中で、一人で全て決めて、全て動かなければならない絶望感に襲われていた。「みんな!ここの拠点の中にいるやつは誰も魔物にやられてない。カイルのことがあって、お互い信用できるのか不安はあると思う。でも、ここには、魔物が入れない結界のようなものがあるんだ。だから絶対に外に出るな」そう告げてから、俺はポーションの瓶を取り出した。ミレイユが作ったものだ。それをここに備蓄されていたポーションの横に置く「見ろ。色が違うだろう」皆が息を呑む。「ま、まさか」「中身はポーションじゃないのか?」みんなの動揺は隠せない。「今、外に出て魔物にやられても、ここにあるポーションでは回復できない可能性が高いんだ。もちろん、他の店のもので、効果は変わらない可能性も残されている」レオンハルトがそう言うと、前から樹海防衛部隊にいた隊員のダンがそれを見て頷く。「いや、前から置いてあったポーションは、レオンハルト隊長が持って来られたものと同じ色だったと思います」「中身を変えられた可能性はあるか?」レオンハルトがダンに聞くと、残りの隊員たちは顔を見合わせる。
last updateLast Updated : 2026-08-17
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53万能包帯では止められないファーストキスのやり直し

レオンハルトは仲間に背を向けて、指輪をみんなに見られないように、そっと取りつけた。本当は転移用の錬金道具があるなんて、知られない方がいい。だが、この壕の中にいるものが、自由に外に出られ、物資も手に入れることが出来るという安心感ぐらいは、みんなに与えておきたい。俺の姿が突然消えた今、おそらく壕のみんなは大騒ぎになっているだろう。だが、元々いた隊員は、ミレイユの師匠の錬金術を見ているはずだ。きっと、見慣れた風景だと感じるのではないか?そして、これは錬金術なのだと他のメンバーにも説明してくれるだろう。俺は、物資とミレイユという新たな錬金術師を連れて帰る。それは、みんなの生きる希望になる―― ◇レオンハルトは、何も変わらない塔のドアに、よろよろと手をかけた。長すぎる一日が、ようやく終わろうとしている。もう、長い期間ここに来なかったような気持ちになる。塔の扉を押し開けると、ミレイユの懐かしい安心できる香りと気配が走った。四階か!レオンハルトは、顔を上げて大声で叫ぶ。「ミレイユ!」その声に、ミレイユが階段を駆け降りてくる。次の瞬間、お互い、視線が絡み、何も言わなくてもお互いの気持ちが通じ合った。二人は、お互いに迷うことがなく、抱きしめ合っていた。レオンハルトは張りつめていた緊張から解放されて、ミレイユに安堵と癒しを感じていた。ミレイユは、すべての真実を知った不安から、唯一信頼できるレオンハルトに安堵感を求めて――だからこそ、互いに安心を貪るように、強く、絡むように抱きしめ合った。そして、時間が止まったかのように、二人はそのまま動かなかった。(やっぱり俺はミレイユが好きだ)(レオンハルトさん、ずっとそばにいて)それぞれの胸に、はっきりとした想いが刻まれる。やがて、お互いに抱きしめ合ったまま、ミレイユは、体に回した手の
last updateLast Updated : 2026-08-18
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54 私は師匠の弟子で娘です

お互いの気持ちがつながり、ふと冷静になった時――二人は思わず赤面した。「に、荷物!錬金道具を持っていかないといけませんね!」慌てて、ミレイユは3階にポーション類を取りに行き、レオンハルトはその離れた体温に少し寂しさを感じた。「どれだけ鍛え上げても、俺の腕で抱えられる荷物には限界があるから、度々ここに取りに行くよ。ただ、隊員たちの目の前に、多くの錬金道具を並べたいんだ。視覚的に、もう大丈夫と思わせたい」それを聞いて両手にポーションやハイポーションを抱えたミレイユは、少し悩ましげな声を上げた。「氷属性の山に行ければ、物を軽く運べる錬金物くらい作れますけどねえ……まあ、風の符合素材があればですけど」「霊峰山にあるかもしれんが、今はそんな余裕ないだろ」そのために、霊峰山に登るぐらいなら、何度も往復するよ。苦笑いをして、レオンハルトはそう言う。腕まくりして荷物を持ち上げてみるが……重い。やっぱり重い。ミレイユならどれだけでも抱き上げるけどな。「やっぱり往復コースだな、これ」だが荷物よりも深刻な問題がある。ミレイユの服だ。カイルが選んだ服で人前に出すとか、腹が立つ。更に、カイルの前に出すとか……殺意が湧くレベルで腹が立つ。……仕方ないけど。仕方ない。いや仕方ないんだけどな!?レオンハルトは、深いため息をついた。「よし、行くぞ。何かあったら我慢しないこと」「はい!」素直に頷くミレイユを抱き上げ、荷物ごと指輪をはめた。◇転移した先の樹海防衛部隊――隊員たちは、しなしなになったジャガイモを囲んで葬式みたいな空気を漂わせていた。そこに――ふわりと揺れるピンクブロンドの長いまつ毛に、人形みたいな顔立ち…&helli
last updateLast Updated : 2026-08-19
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55 絶対お前を許さない

尋問のため、カイルの口に巻かれた布を、元第一騎士団のフォルターが解こうとした。だが、その手をミレイユが制する。「待ってください。毒を仕込んでいたら困りますし」そう言うや否や、彼女は淡々と液状の解毒剤をカイルの鼻に流し込んだ。気管に入ったのだろう。カイルはぐほっと咳き込み、フォルターの手が止まる。先ほどまで共に戦場を駆けたはずの仲間を前に、フォルターには目に少しの躊躇がある。だが、ミレイユの視線は冷たい。「これは胃でも気管でも吸収できます。……これで、仕込んだ毒は全部無意味ですよ」口の布を外されたカイルは、涙と咳をこらえながらも怪しげに目を光らせた。「僕のチョイスの服、よく似合ってるじゃないか」「あなたのチョイスでしたか……最後の下着は余分でしたけどね」即座に返すミレイユ。その声音は氷のように冷たい。だがカイルは、ははっと笑った。「お楽しみいただけたかと思ったけどね。まさか前部隊長アリエルの娘が、月影亭のミレイユさんとは思わなかった」その名に、ミレイユに見覚えがあった者たちも、ざわめく。「やっぱり……月影亭のミレイユさんだ……」「ってことは、ダリウスの恋人の……娘?ええっ!月影亭のオーナーがここの前の隊長?」「2週間前に取り調べを受けて逃亡したダリウスの恋人の娘だよな」みんなにとっても、レオンハルトにとっても、いや、ミレイユ本人だって、今までは月影亭のミレイユで、ダリウスの恋人の娘と思っていた。だが、その月影亭のオーナーであり養母が、ここの前隊長となれば話が変わる。ざわざわしたところを、レオンハルトはみんなに伝える。「彼女も知らされてなかったことだ。樹海防衛部隊の前隊長のアリエルは、ダリウス元総司令官と横領して駆け落ちしたと言われている月影亭のアリエルと同一人物だ」「え、じゃあ、
last updateLast Updated : 2026-08-20
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56 彼女に寄り添うべきか?みんなを守るべきか?

「ま、まて!早まるな!」ミレイユが取り出した、短剣を見てレオンハルトは慌てる。「切りますか?」「いや、まずはカイルと話せる状態にしてくれ。これでは、本当のことを言おうとしても言えないから……もう十分だ。ありがとう」レオンハルトは、短剣を仕舞わせながら、微笑んで話す。だが、その背中は汗でじっとり。心臓はバクバクいっている。頼むからカイルに突き立てるな、その短剣は即死だ――レオンハルトは息も絶え絶えのカイルを見据え、問いかける。「カイル。お前は国王に逆らえないだけか? それとも、寝返る気はあるのか?」「へ……え、言ったところで……寝返る……の……しんじ……るのか……」「国王の駒って意味じゃ、セリオやお前のような影も近衛も俺たちも同じだ。思い通りに動けなければ、このあと待っているのは死だけだって、お前だってわかってるんだろう?」俺たちは、ミレイユの錬金道具を使って樹海を抜け出せる。でも、職務放棄で逮捕された後、この樹海の内情を知ったことで消される未来が俺には見えていた。「…………」「ただ、王に、忠誠を誓うって言うなら、望みどおり殉死でもいい。だが、お前だって、俺たちだって、実力でこの第一騎士団に在籍するポジションを勝ち取ったはずだ」第一騎士団。それは、先日までは、武闘大会や武勲で選ばれた、身分も関係ない実力だけの国の精鋭の集まりだ。「俺たちは、こんなところで、国王に潰されていい人間じゃない」レオンハルトは、そういって、カイルのそばから離れた。「少し考える時間をやる」だが、踵を返したレオンハルトに、カイルは嘲るように笑う。「……上り詰めた結
last updateLast Updated : 2026-08-21
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57 すり替えられた錬金物

レオンハルトは、悔しそうに唇を噛むミレイユを見て、失敗した、と胸の奥で苦く思った。だが、今は私情を挟んでいる場合じゃない。「……話を変えよう。今後、外に出て探索が必要になる。そのための道具を君に作ってほしい」「道具……ですか?」話が変わったことで、ミレイユもホッとして見える。「今回異動になった元第一騎士団の連中は、それなりに腕は立つ。だが狩れるのは、みんなで一匹のせいぜい中型魔物までだ。元からいた者たちは……腕を見ると細いし、素人同然だな」セリオも、人を殺すことに長けていたのであって魔物を殺すことに長けていたように見えない。 古参の隊員の体は細く、全く鍛えられていない。おそらくだが、錬金道具ありきでこの樹海で活動して、身も守っていたのではないか? 自分の力量が分かっていないから、錬金道具なしでも樹海に出てやられてしまったものが多いんだ。レオンハルトは、この樹海は錬金道具ありきで動かなければ活動できないところだと知る。「今までアリエル殿の元、外に出ていた部隊は、国王の直轄の近衛騎士団から魔物避けの鈴を奪われて、そのまま外で活動しようとして亡くなっている。それだけじゃない。今までの錬金物がだんだん効かなくなったんだそうだ。だから、やられた後の回復も、今までのようにいかなかったらしい」「……効かない?」ミレイユの目が大きく見開かれる。「ああ。ポーションしか残ってなかったが、君のものとは色も効果も違った」彼女は少し考え込むと、小さく息を吐いた。「……そのポーション、見せてもらえますか?」「いいだろう」二人で戻る道中、先ほどのやりとりからの気まずさで、言葉はなかった。 レオンハルトは、女性とこんなに親しい関係になるのは初めてだ。(ダリウスと前隊長は、こんな行き違いをどうやって解決してたんだ……)どう言ってやればよかった?本当なら、あの塔で一緒にいた時みたいに、彼女を正面から受け止めてやりたいのに。ちらりと横を見れば、悔しそうだ
last updateLast Updated : 2026-08-22
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58 魔術師団長ライナルの心

魔導炉の魔力が、まだ足りない。淡いピンクに光る動力炉の発光が少なすぎる。そのぼんやりピンクに光る中に、意識がなく魔力遮断の鎖に縛り付けられたアリエルがいる。魔術師団長のライナルは、やっと自分の手の中にアリエルが得たのに、自分の予想通りの結果を生まず苛立っていた。アリエルの細い腕から、血を少しずつ抜き取って魔力へと変換する。「君の魔力はすごいよね。息が止まりかけても、ハイポーションを流し込めばまたその魔力は復活するんだからさ」軽やかに笑うように語るライナルの顔は、それでも曇った。「君が作るような上等な薬じゃないせいで効果はいまいちだな。それでも、死ぬには早いよ」アリエルの長いサラサラとした黒髪をひとすくいして、その瞬間、怒りの顔でぶちっと引き抜く。だが、もうアリエルはそうされても痛そうなそぶりすら見せない。「……ああ、苦しまなくなっちゃった。そろそろ死にそうだね。でも駄目だよ。まだまだ君から魔力をもらわないと」アリエルの頬をなでる。まるで愛しい人に触れるような気持ちになるのに、その瞬間その美しい顔を壊してしまいたい衝動が、一瞬、胸をよぎる。先ほどからその繰り返しだ。苛立ちが胸をかきむしる。俺がどれだけ魔術を極めても……どれだけ想いを寄せても――お前は俺に振り向かない。いや、俺を視界に入れることすらない。憎らしいほどに、美しい。愛しくて、許せなくて。何度か彼女を殺そうと試したこともあった。それなのに、彼女が何層にも施した防御の力に弾かれて失敗した。「…………やっぱり、あなたはすごい人だ。俺が愛するにふさわしいひとですよ」そう言って、再びアリエルの痩せこけた頬に触れた。◆ライナルが初めてアリエルを見たのは十年以上前。
last updateLast Updated : 2026-08-23
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59 万能薬はまだ作れない

「魔術師団長ライナル……それ、本当なんですか?」師匠の日記の最後に、出てきた名前だわ!思わずミレイユは声が出て、カイルを見つめた。たしか、師匠の日記の最後には、何度も魔術師団長が気持ち悪い。何かされているのを、防御で跳ね除けていると書かれていた。そのことは、ダリウスにも相談していたはずだ。カイルは、笑っているのか挑発しているのか……つかみどころのない目をミレイユに向けてくる。「し……んじる?」「あなたが寝返るかどうかなんて、私には分かりません。でも……ライナルのことを知っているなら、教えてください」思わずミレイユはカイルの口元にハイポーションを流し込む。瞬く間に、全身の傷が癒えていき、息も絶え絶えだったカイルは、一気に元気になり、ニヤリと口角を上げた。「へえ……君ってさ、悪魔にも天使にも見えるよね」「…………」「でもね、すぐ気になることに飛びつくのは、軽率だと思うけどなあ」ミレイユは、カイルの方が駆け引きでは上手だと悟る。「待て、ミレイユ!」慌ててレオンハルトも止めに入る。「こいつはまだ寝返ったわけじゃない! 危険すぎる!」「すみません。でも……私は彼から聞かなければならないことがあるんです。だって、師匠の命に関わることなんです。それを知らなければ、ここでも、協力なんてできません」きっぱりと言い切り、レオンハルトを睨み返す。その目は、今までにない鬼気迫ったもので、レオンハルトは思わず言葉を失った。「へへっ、だんちょー、一週間で彼女を落とせなかったんだ。いやあ、いい顔してる」カイルはにやつき、レオンハルトを見て肩をすくめる。そして、真っ暗な岩壁の天井を見て、ふっと息を吐いた。
last updateLast Updated : 2026-08-24
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60 尋問中なのに、笑いと赤面が止まらない

カイルは悲しそうに目を伏せたが、ふっと笑った。 「……途中からそうだろうなって思ってたよ。作ってやるなんて、ただの口約束だし。いつまで経ってもつくってもらえない。そもそも、そんな薬が存在するのかも怪しいしな」 「病気なら、普通に薬師に診てもらえば――」 「それも試したさ。薬は買って持って行っていた。でも、もう効かないんだ。長く患ってたみたいでな……もう俺も戻れないから、薬を持っていく奴もいない。彼女もただ苦しみが延びるだけならこれでよかったのかもしれない」 カイルの目は遠くを見つめていた。 「あ、あの……」 遠慮がちに手を挙げたのは、元第一騎士団のカミルだった。 「カイルの言ってること、その部分は本当です……その子、もう客が取れなくて、娼館の別の階にいるんですけど……それでも薬を買って持って行ってるの、俺、見たことあります。娼館の女の子からも聞きましたし……」 レオンハルトは腕を組んで、低く問いかける。 「情報も……聞く話だと大した内容じゃない。カイルに対して、別に目的があったと考えるべきか?」 「情報というより、王の駒を各団に仕込むのが目的だったんでしょう。騎士団は、国王の直轄ではないので。だから俺も、前総司令官のダリウスと国王の関係も悪くないのだから、罪悪感もなかった……」 そこでカイルは、わざとらしく思い出したように笑った。 「――ああ、でも。この間、団長の情報をユリウスに出してしまったな」 「この間?もしかしてミレイユのことか?」 レオンハルトは一気に焦る。 出入りは確認されていないし、ミレイユと自分が一緒にいるところを見せたのは、この壕の中が初めてだから、国王たちには動きはバレてないはずだが…… 今までの言動を振り返り、指輪の存在も知られていないのだから、なんとかミレイユの居場所はバレていないはずだと焦る。 だが―― 「レオンハルト団長は、未成年に手を出して、周囲に関係がバレたくなくて、一週間休みをとってます。この後は、タウンハウスで着せ替えごっこして楽しむんだそうです……って」 カイルが、してやったりとにやっと笑う。 「なっ――!?」 レオンハルトとミレイユの顔が同時に真っ赤に染まった。 「着せ替えごっこって!!」 そして、周りの隊員が一気に引き気味になる 「ちがう!それは!!」 レオンハルトは慌てる
last updateLast Updated : 2026-08-25
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