レオンハルトが、命に関わる大怪我をしていた頃――ミレイユは、師匠であるアリエルの日記をめくる手を止められなかった。そこには、だんだんと自分の名前が増えていく。そして、その中にある話の幾らかが、自身の記憶にある出来事と重なっていった。師匠から初めて錬金術を習った日。大きな魔物を狩った成果を自慢された日(私は素材の説明だと思って聞いていたけど……)武器に付与する倍率を間違えて大失敗した日――小さな思い出が、紙の上に散らばっていた。「師匠、こんなに人に伝えることが不器用なのに。こんなに一生懸命、私が人らしく生きられるように、努力してくれてたんだ」胸の奥がじんわり熱くなる。師匠は何でも記録に残した。錬金術の小さな気づきや研究レシピも……狩りの方法からその取れる素材のことも……そして、私の育児も。そのうえで、感じたことや考えを「これは人と同じ感覚なのか?」と、頻回にダリウスに尋ねており、そのダリウスの返答まで、記録に残してあった。――自分は他の人と違う。そう理解してから、不安だったのだろう。思い返せば、私が店に出るようになってからは、師匠より従業員と過ごす時間の方が長かった気がする。「ふふっ、ミレイユにお店は任せた!いい新製品、作るからね」そう言っては、すぐ留守にしてしまう。どこかに素材を採りに行くのだと思っていたが、樹海防衛部隊と錬金術師を両立で大変だっただろうし……意識して私と距離を置いたんだと思う。きっと、師匠は、私を普通の子のように育てたかったんじゃないだろうか?(師匠と一緒にいた時間って、意外と少なかったんだな)◆王都で暮らすようになって数年――
Last Updated : 2026-08-16 Read more