翌朝。目を覚ました俺は、しばらく天井を見つめていた。 身体は、もうほとんど元に戻っている。昨日まで感じていた重さも、熱も、かなり引いていた。 けれど――。(……今日、社長は何時頃に来るんだろう) ふと、そんなことを考えた。 その瞬間、自分で自分に戸惑う。 昨日までは智臣の匂いを求めるのも、そばにいてほしいと思うのも、ヒートのせいだと思っていた。 長く眠っていたオメガの本能が目を覚ましたから。身体が、特定のアルファを求めているから。 そう考えれば、すべて説明できると思っていた。 でも――今日は、もう熱も落ち着いている。それなのに俺は、智臣が来る時間を気にしている。(……なんでだろう) どんなに考えても、答えは出なかった。 ベッドから起き上がり、スマートフォンを手に取る。通知を確認すると、颯真さんからメッセージが届いていた。『体調はどうかな。無理はしないで、何かあったら連絡ください』 その下には、少し時間を空けて送られたもう一通。『落ち着いたら、また話せると嬉しい』 画面を見つめたまま、俺は少し考えた。 颯真さんとは、また会いたい。前に会ったときも、嫌ではなかった。むしろ、もっと話してみたいと思った。 だから――。 俺は返信を打った。『ありがとうございます。もう大丈夫です』 そして、少しだけ迷ってから続ける。『僕も、またお会いしたいです』 送信した瞬間、胸の奥にほんの少しだけ緊張が残る。 だけど、不思議と後悔はなかった。 誰かに言われたからでもない。九条家に求められたからでもない。 ただ、自分がそうしたいと思った。 そのことが、今は少しだけ嬉しかった。 ――自分で決めた、たったそれだけのことなのに。 俺の人生では、それが今までほとんどなかったのだと、改めて気づいた。 *** 翌日。俺は、久しぶりに出社した。 ヒート前と変わらない朝。いつものように執務室へ入り、智臣に声をかける。「おはようございます」 「……ああ」 たったそれだけの、いつもと変わらない挨拶。 なのに――以前と同じようには、接することができなかった。 智臣が俺を見る。ただそれだけで、あの夜のことが脳裏に蘇る。 俺が無意識に服を求めたこと。智臣の匂いに縋るようにして、ようやく落ち着いたこと。 そして自分の服を抱えた俺を、智臣が
최신 업데이트 : 2026-10-13 더 보기