一ノ瀬ホールディングスが関係する企業主催の社交パーティーに、俺は智臣の秘書として同行することになった。 会場には、取引先や関係企業の関係者が集まっていた。華やかな照明の下、あちこちで挨拶や談笑が交わされ、グラスの触れ合う音が絶え間なく響いている。 智臣は次々と声をかけられ、そのたびに落ち着いた態度で挨拶や商談をこなしていた。 俺も秘書として彼を支えながら、必要に応じて資料を渡したり、次の予定を確認したりする。仕事に集中しているつもりでも、慣れない華やかな空間では、どうしても気が張ってしまう。 そんなときだった。「湊くん」 聞き覚えのある穏やかな声に振り向くと、そこには颯真がいた。「お疲れさま。体調は大丈夫? 無理してない?」 以前と変わらない柔らかな笑顔で、俺の様子を気遣ってくれる。 仕事中だからといって必要以上に踏み込むこともなく、ただ俺自身を案じてくれる言葉だった。「颯真さんこそ、こちらにいらっしゃったんですね」 自然と頬が緩む。「ああ。立場上、顔を出すことになってね。智臣だけかと思っていたから、君がいることに驚いたよ」 「今日は秘書として同行しています」 「そうか。仕事中だったんだね。邪魔をしてしまったかな?」 「いえ、そんなことはありません」 俺は首を横に振った。 颯真は、俺が答えやすいように話を続けてくれる。気負わずに言葉を交わせることが、今はありがたかった。 会場の華やかな空気に少しばかり緊張していた俺にとって、颯真との会話は、張り詰めていた気持ちを緩めてくれるものだった。 その様子を、少し離れた場所から智臣が目に留めた。 湊が人前で笑うことも、颯真といるときには緊張を解いていることも、知っていたはずだった。 それでも颯真に向けられた湊の笑顔が、なぜか気にかかる。(――仕事に集中しろ) 自分にそう言い聞かせても、二人の会話が耳に入ってくる。 颯真が湊の体調を気遣い、以前の会話を覚えているかのように自然に話を続けている。その様子を見て、智臣はわずかに眉を寄せた。(湊の好みや、何気ない会話の内容まで覚えているのか――) そこまで考えて、智臣は小さく息を吐いた。 颯真が湊を気遣うことに、不思議はない。二人が親しく話していることだって、咎める理由などなかった。 それなのに、胸の奥に小さな引っかかりが残
최신 업데이트 : 2026-10-23 더 보기