この話は、幾千《いくせん》の屍《しかばね》を築いた暗殺者の青年とそれを取り巻く者達の祈りが紡《つむ》ぐ、ファンタジー救済譚。 しかし、忘却は祈りを鈍《にぶ》らせる。 まるで歴史が風化して曖昧になるように……。 祈りが届かない者の名は、声にすらならず、風に消える。 ーーーもし、その風に感情があったのなら……風は何を思って消えたのか? 闇は光より先に、祈りはその名を呼んだ。 闇より届いた祈りは、果たして誰の祈りだったのか? 彼らは祈ったのではない。 世界を変えるために……裂いたのだ。 世界は祈りでは変わらないのか……? それとも……。 あなたがもしなにか祈りを抱いているならば……それを手放さない理由は……? これは『祈りとはなにか?』という問いを、思想そのものの物語に置き換えたもの。 祈りを見つけるために、罪に塗れた青年が見た世界。 そして……その序章。 --- 熱い。熱い。熱い……。 胸を素手で──いや、骨の腕でぶち抜かれる感触は、想像以上だった。 それが既に命に届く致命傷であるという事を理解しようとするが、彼はまだ現実を認識しきれずにいた。 歴戦の暗殺者であると自惚《うぬぼ》れていた自分への、神からの『他人の痛みを知れ』という最後通告のような激痛。 今も、筋肉と内臓に無理矢理割り込んできた異物が、ギチリ、ギチリと嫌な音を立てている。 脳は『その事実を受け入れろ』と無慈悲に告げているが、同時に最後の慈悲をかけるように血液とアドレナリンを一気に駆け巡らせ、痛みを何とか抑え込もうとしているようだった。 ───それでも、彼が感じているその痛みは絶大だった。 死にかけるような傷など、青年は何度も負ってきた。 自分は痛みに鈍くなっていると思っていた。 ーーーだが、それが間違いだった……。 死に際になって、己がいかに無知であったかを青年は思い知る。 内臓を無作為《むさくい》に弄《まさぐ》ろうと押し寄せる異物の感触。 それが少しでも動く度に、鋭い痛みが全身を支配する絶望感は、言葉にできないほどだった。 「はぁ……はぁ……」 喘息患者のような呼吸を繰り返す。 痛みという刃が凄まじい速度で青年を突き刺し、敗北感と共に世界が暗く沈み始める。 世界から音が
Terakhir Diperbarui : 2026-08-10 Baca selengkapnya