しばらくして、廊下から足音が聞こえた。僕はスマートフォンから顔を上げる。「真人さん」 葵さんの風呂上がりの髪が、まだ少し濡れている。 化粧も落としていて、普段会社で見る彼女とは違う。 ナチュラル美人だ。化粧をしなくても美しい。 どくっ、と心臓が跳ねる。「…………」「真人さん?」「あ、ぼんやりしてすみません。陽奈ちゃんは?」「もう寝ました。布団に入ったら、あっという間に」「そうですか」 よかった。今日はあの子なりに、かなり疲れただろう。「こちらへどうぞ」 寝室へ案内する。 リビングでも話せるが、念のため室内を調べた中でも、ここが一番安全だと判断した。 葵さんが少し緊張した顔で入ってくる。「初めて入ります」「そうでしたね」「すごく……真人さんらしいお部屋ですね」「それ、褒めていますか?」「もちろんです」 葵さんが笑った。……可愛い。 駄目だな。一度自覚すると、彼女がなにをしていても可愛く見えてしまう。「座って」「はい」 ベッドを示すと、葵さんが端に腰掛ける。 僕も隣に座った。 すると、ほんの少しだけ、彼女の身体が強張った。「…………」 近すぎたか。「すみません、血過ぎましたね」「あっ、いえ! そういうわけじゃ……」 慌てている。 僕まで妙に意識してしまう。「……葵さん」「はい?」「その前に、一つ提案してもいいですか?」「提案?」「僕たち、敬語やめ
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-27 Mehr lesen