角膜を奪われた妻は、夫の裏切りに死を選ぶ交通事故に遭った後、私は母とともに命の危険にさらされ、高額な手術費を必要としていた。
だが、元カレはその知らせを聞くや否や私たちを見捨て、他の女と結婚してしまった。
ただ一人――私の幼馴染だけが会社の持ち株を売り払ってまで一千四百万円を差し出し、私たちの治療に充ててくれた。
母は最終的に救急処置の甲斐なく息を引き取った。
私も手術によって視力を失った。
それでも幼馴染は決して私を見放さず、母の葬儀の一切を引き受けてくれたばかりか、盛大な結婚式まで私に捧げてくれた。
結婚後、私たち夫婦は睦まじく、調和のとれた関係であった。界隈でも誰もが羨む夫婦であった。
ところが思いもよらず、あの日の宴会の後、彼の友人が彼に尋ねた。
「和泉、もしもいつか彩寧が、お前が彼女の角膜を暁に与えたこと、さらには暁のお母さんを救うために、彩寧の母を死なせたのだと知ったら、どうするつもりなんだ?」
笹瀬和泉(ささせ いずみ)はかすかに呟いた。
「彩寧に対しては俺が済まないことをした。だから一生をかけて償うつもりだ。
だが俺は暁を愛してる。暁のためなら、永遠に罪に沈み、許されなくても、俺はそれで構わない」