『厭う』を使った有名な文学作品やセリフを知りたい

2025-11-22 08:44:06 164

3 回答

Zoe
Zoe
2025-11-25 00:43:52
夏目漱石の『こころ』には、『厭う』という言葉が重要な役割で登場します。先生が過去の罪悪感に苦しむ場面で、『自分自身を厭う気持ち』が描かれ、人間の内面の深い葛藤を表現しています。この作品では、厭う感情が単なる嫌悪ではなく、自己否定や後悔の複雑な心理状態として描かれているのが特徴です。

漱石の繊細な筆致は、『厭う』という感情を社会的な規範と個人の倫理観の狭間で揺れる知識人の苦悩として昇華させています。特に『こころ』の後半部で展開される先生の独白は、この感情を文学的に深掘りした傑出した描写と言えるでしょう。登場人物の心理描写を通じて、読者自身も自己嫌悪という普遍的な感情について考えさせられます。
Flynn
Flynn
2025-11-26 23:04:01
『厭う』が印象的に使われたセリフといえば、太宰治の『人間失格』で主人公の葉蔵が『自分を厭う日々』と語る場面が思い浮かびます。この作品では、社会から疎外感を感じ続ける主人公が、自己嫌悪を極限まで深めていく過程が描かれています。葉蔵の『厭う』は単なる嫌いというレベルを超え、存在そのものへの否定にまで達しているのが特徴です。

太宰の鋭い心理描写は、この言葉を通じて戦前・戦中の知識人が抱えた自己否定の感情を鮮やかに表現しています。特に酒に溺れていく葉蔵の独白では、『厭う』という言葉が繰り返し登場し、次第に深まっていく精神の荒廃を象徴的に示しています。読むほどに重くなるこの感情描写は、太宰文学の真骨頂と言えるでしょう。
Ursula
Ursula
2025-11-27 16:49:55
三島由紀夫の『金閣寺』では、主人公の溝口が美に対する歪んだ執着から『金閣を厭う瞬間』が描かれています。この作品における『厭う』は、愛憎半ばする複雑な感情として表現され、美の象徴である金閣寺に対して抱く矛盾した心理が見事に描写されています。

特に物語のクライマックス近くで、溝口が金閣の美しさに圧倒されながらも、同時にそれを壊したい衝動に駆られる場面は、『厭う』という感情の両義性を浮き彫りにしています。三島の官能的な文体は、この矛盾した感情を詩的なまでに昇華させ、読者に強烈な印象を残します。美に対する畏敬と破壊衝動という、人間の根源的な葛藤が見事に表現された一節です。
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『厭う』の意味や使い方を分かりやすく教えてください

3 回答2025-11-22 00:22:34
『厭う』という言葉は、日常会話ではあまり使われないけれど、文学や時代劇でよく出会う表現だよね。基本的には「嫌がる」「避ける」という意味で、物理的なものから精神的なものまで幅広く使える。例えば『彼は人混みを厭うように脇道に入った』なら、混雑が苦手で避けた様子が伝わる。 面白いのは、この言葉が持つ古風なニュアンス。現代語で「嫌う」と言い換えられる場面でも、『厭う』を使うと一気に叙情的な雰囲気になる。『戦いを厭う平和主義者』というフレーズは、『戦いが嫌い』と言うより深みがある。ただし使いすぎると堅苦しくなるので、小説の登場人物のセリフや、わざと古風に表現したいときにおすすめだ。 個人的には『機会を厭わず挑戦する』のような肯定形の使い方が好きだね。否定形と組み合わせることで、言葉にリズムが生まれる。

小説で『厭う』という言葉が使われるシーンにはどんな特徴がありますか

3 回答2025-11-22 10:55:39
『厭う』という言葉が小説で使われる時、そこには往々にして登場人物の心の奥底に潜む倦怠感や、日常に対する無力感が滲み出ているように感じる。例えば、村上春樹の『ノルウェイの森』で主人公が「人生そのものを厭うような気分」に襲われる場面があるが、あれは単なる疲れ以上の、存在そのものへの問いかけを含んでいる。 この言葉が効果的なのは、それが単なる「嫌い」ではなく、もっと深い精神的な消耗を表現している点だ。太宰治の作品では、自己嫌悪と社会への違和感が『厭う』という一語に凝縮されている。読者はそんな描写から、登場人物の内面の重さを共有するような気分になる。言葉の裏に潜むニュアンスを汲み取るのが、文学を読む醍醐味だとつくづく思う。

『厭う』と『嫌う』の違いは何?日本語のニュアンスを解説

3 回答2025-11-22 12:03:03
『厭う』と『嫌う』はどちらも否定的な感情を表しますが、そのニュアンスには微妙な違いがあります。『厭う』はどちらかと言えば、何かを避けたい、関わりたくないという消極的な感情が強いです。例えば、『彼は人混みを厭う』という場合、単に嫌いというよりは、苦手意識やストレスを感じるというニュアンスが含まれます。 一方、『嫌う』はより積極的な拒絶や反感を示します。『彼はにんじんを嫌う』と言えば、単に避けるだけでなく、強い不快感や拒否反応があることが伝わります。『厭う』がやや上品で控えめな表現なのに対し、『嫌う』は直接的で感情的な響きがあります。 文学作品では、『厭う』は登場人物の繊細な心理描写に使われることが多く、『嫌う』は明確な敵意や反感を表現する際に用いられる傾向があります。この違いは、日本語の豊かな表現力の一端を感じさせます。

アニメやマンガで『厭う』感情を表現するキャラクターの例は?

3 回答2025-11-22 05:32:04
『鋼の錬金術師』のロイ・マスタングは、戦争のトラウマから暴力を強く厭うキャラクターとして描かれています。彼がフラスコの小人に「人間を殺すな」と命じるシーンは、軍人でありながら人命を軽視する行為への嫌悪が際立っています。 面白いのは、彼の厭戦感情が単なる理想主義ではなく、実際にイシュヴァール虐殺を経験したからこその複雑さを持っている点です。戦闘シーンで炎のアルケミーを使いながらも、部下に「敵を焼き尽くせ」と命じる時の表情には、深い葛藤が見て取れます。このような矛盾を抱えた描写が、単純な善悪を超えた深みを生んでいるのです。

日本語学習者向けに『厭う』の適切な使い方を教えてください

3 回答2025-11-22 18:13:09
『厭う』は「いとう」と読み、主に「避ける」「嫌がる」という意味で使われる古風な表現ですね。例えば『彼は人混みを厭う性格だ』のように、物理的・心理的な回避を表す際に使います。 現代では小説や時代劇の台詞で耳にする機会が多いですが、日常会話では『嫌う』や『避ける』の方が自然です。『光栄に厭うところなし』といった慣用句では格式ばった印象を与えるので、ビジネス文書や改まった場面で効果的です。 注意点として、『厭わない』という否定形は「積極的に行う」という逆説的なニュアンスになります。『彼は危険を厭わず救助に向かった』のような使い方で、人物の美徳を強調する表現として覚えておくと便利です。
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