比べて考えると、小説の'はざま'では時間の伸縮と細部描写が物語の主軸になっている。章ごとに視点が揺れ、過去と現在が織り交ざる構成は読者に能動的な解釈を促す設計だ。読んでいる間に人物の矛盾や
言外の意味を自分で咀嚼する余地が多く、そこが魅力になっていると感じる。
アニメ化では制作上の制約とメディア固有の強みが混じり合い、ストーリーの再構成が行われている。たとえば回想の挿入位置が変わったり、原作にあったサブプロットが削られて本筋の機微にフォーカスが移ることがある。結果としてキャラクターの動機付けが視覚的に分かりやすくなり、視聴者の感情移入の入口が変わる。僕はこの変更を好意的に見ることが多いが、原作の細やかな心理描写を期待している読者には物足りなく映る場面があるだろう。
さらに声優の演技やBGM、カメラワークといった要素はアニメならではの解釈を付加する。言葉で曖昧に書かれていたニュアンスが、声のトーンや音響設計で明確に伝わる瞬間があり、それが物語の受け取り方を左右する。こうした映像化の力は'四月は君の嘘'のアニメ化を思い出させる部分があって、原作とは別の感動を生むことがあると考えている。