記憶の扱い方に惹かれて読み進めた。作品は序盤から時間の断片が重ねられ、途中で語り手の視点が移ることで同じ出来事が違う色で見えるようになる。私が注目したのは、橋が象徴する「つながり」と、その修復がもたらす日常回復のプロセス。主人公は失われた人間関係を橋の往来を通じて取り戻そうとするが、すべてを
元通りにするのではなく、受け入れを選ぶ場面が物語の肝だ。
登場人物は多層的で、誰もが完全な説明をされないまま行動する。その曖昧さが逆にリアリティを生み、読者に共感の余地を与える。舞台描写は細やかで、特に橋周辺の風景や古びた工場の佇まいが物語の陰影を補強している。物語終盤の選択は重く、救いと
諦念が入り混じった結末へと導かれるが、私はそのバランスがよく効いていると感じた。全体として、自然と人間の時間感覚を繊細に扱った作品で、宮崎駿の'風の谷のナウシカ'とは対照的に、より現代的で人間中心の物語だと思う。