小さなチェックリストをいつも頭に入れて作品を観ている。演出の“
付け焼刃”は意外とパターン化していて、慣れると見抜きやすくなるからだ。
目につきやすいサインとしては、感情の重みとそれを支える前振りが一致していないことをまず挙げる。盛り上がるシーンで唐突に音楽だけ大きくなったり、キャラクターの表情が変わる根拠がカット前に示されていなかったりすると、演出が場当たり的になっている可能性が高い。カメラワークやカット割りが場面ごとにバラバラだったり、カット継ぎのリズムが不自然で視線や意図がつながらない場合も要注意だ。アニメなら使い回しの原画やループした動作、実写なら照明や小道具の位置が揃っていないなどの手抜きが露骨に出る。
技術面のチェックポイントも有効だ。クレジットやスタッフ表を見て途中で演出担当や作画監督が変わっている回やシークエンスがあると、外注や差し替えで急ごしらえした可能性がある。音声が映像とズレている、ダビングの違和感がある、BGMの使い回しが露骨に感じられる――こうした要素は演出の本気度を示す良い指標になる。個人的には、奇をてらった「演出」をそのまま鵜呑みにせず、前後の文脈と照らし合わせる習慣が一番役に立った。例えば『新世紀エヴァンゲリオン』のように時に意図的に違和感を残す作品もあるが、本当に巧妙な演出は違和感を回収する伏線やリズムを必ず用意しているものだ。違和感が回収されずに終わるなら、それは付け焼刃か手抜きのどちらかだと考えている。観察を続ければ、作品ごとの“本気度”が見えてくるし、そこから楽しみ方も変わってくる。