雨粒のリズムから始める演出って、実はBGM選びの核心を示していると感じる。僕は映像を何度も再生しながら、まず「場のテンポ」を決めるようにしている。
雨宿りは会話が減って音の隙間が目立つ場面だから、曲のテンポやフレーズの余白が視覚と噛み合うかどうかが肝心だ。速すぎればそわそわするし、遅すぎれば間延びする。ここで重要になるのはテンポとフレーズの長さ、それと
雨音との対話だ。
配器選びも大きなポイントだ。弦やピアノの高域は空間に透明感を出すし、低音の持続は安心感や重さを与える。僕はしばしばシンプルな編成を好む。音数が多いと会話や効果音とぶつかるし、情感を過剰に操作してしまうことがあるからだ。例えば、切なさ主体の雨宿りなら単旋律のピアノ、温かな和らぎを出したければアコースティックギターや低めの弦を薄く重ねる選択をする。
最終的には「場の主語」が誰かを見失わないことが必須だ。キャラクターの内面を代弁する曲なのか、外部のナレーション的存在として働かせるのかで楽器の距離感やミックスも変わる。個人的には、'となりのトトロ'のように自然音と曲が優しく寄り添うバランスが理想的だと考えている。こうした視点で曲を削ぎ落としていくと、雨宿りの静かな時間がより深く伝わるようになるよ。