天然水
転勤で遠距離恋愛になってから、私・荻原優奈(おぎわら ゆうな)は毎月必ず八木真司(やぎ しんじ)からのプレゼントがもらえる。
中身は事前に教えてくれないから、まさに「ブラインドボックス」。
こういう「サプライズ」は確かに会えない寂しさを埋めてくれた。どんなに長い遠距離恋愛だって、きっと乗り切ってみせる。私はそう確信できた。
2年前のある日、真司がこのように約束をした。
「家の会社を継いだら、必ず君を迎えに行くよ。
その時は、誰にも遠慮することなく、堂々と俺の側にいてほしい」
彼のこの言葉を信じる私は遠く離れた都市で、期待に胸をどきめかして、寂しい日々を一人で過ごしてきた。
こうして、今月分のブラインドボックスが届いた。
それを開ける瞬間、私は今までにない一番のサプライズに襲われた。
中に入っていたのは、一枚の航空券。
東都行きで、ファーストクラスだった。
飛行機の中で、嬉しさを隠しきれずにいる私を見て、隣の席の女の子がくすっと笑う。彼女の名前は葵絵里(あおい えり)らしい。
彼女は無邪気な笑顔で、婚約者とのツーショット写真を私に見せながら、幸せそうに言った。
「あと三日で、私たちは結婚するんですよ」
そのスマホ画面に映るウェディングフォトを目にした瞬間、大切そうに搭乗券を撫でていた私の指が、ぴたりと止まった。
その写真に写る男性は、私が会いに行こうとしていたその人だった。