初雪の日にあう君
「江崎さん、こちらはスイスの自殺ほう助機関ですが、12月25日の安楽死を申請されたのはご本人でいらっしゃいますか?」
江崎 瑠奈(えざき るな)のまつげがかすかに震えたが、声はとても落ち着いていた。
「はい」
「かしこまりました。申請はすでに承認されております。こちらから半月の猶予を差し上げますので、その間に後始末をお願いいたします」
電話が切れた直後、寝室のドアが勢いよく開かれた。
堀尾 修(ほりお しゅう)は冷たい風をまとって入ってきて、彼女を見るなり笑顔で美しく包装されたプレゼントを差し出した。
「瑠奈、誕生日おめでとう」
瑠奈は穏やかに微笑んだ。
「私の誕生日は、昨日だったよ」
修の動きが一瞬止まり、顔に戸惑いと気まずさがよぎった。
「ごめん、最近仕事が忙しくてさ……」