花期を逃した私と、遅れてきた春
高梨瞳(たかなし ひとみ)と有馬蓮(ありま れん)は学園公認の、誰もが羨む完璧なカップルだった。
蓮は、すれ違う誰もが思わず振り返るほどの学園のプリンスだ。すらりとした長身に、目を奪われるほど整った顔立ち。いつも制服の上に黒のマウンテンパーカーを羽織り、クールでどこか近寄りがたいオーラを纏っている。
そんな彼に女子たちは我先にと群がるが、彼の目に映るのは、いつだって瞳だけだった。
二人は幼馴染だ。物心ついた時から、二人はいつも一緒だった。一歳の誕生日には互いの小さな手を握り合い、七歳で「大きくなったら結婚しよう」と約束を交わした。十四歳でラブレターを交換し、十六歳で正式に恋人同士となり、十八歳で同じ大学を目指すと誓い合った……
永遠に続くと思われた二人の関係が揺らぎ始めたのは、高校三年の春のことだった。
クラスに一人の転校生がやってきたのだ。小池桃果(こいけ ももか)という子だ。
「成績優秀者による学習サポート」のペアを決める際、担任はあろうことか、蓮を桃果の担当に指名したのだ。
「もし断るつもりなら、校内で瞳とイチャつくのを禁止するからな」