自分の王様になる
妻がジムを開業したので、私、桐生蓮(きりゅう れん)は親友を連れ、クーポンサイトで購入した二百円の体験レッスンを使って偵察に行った。
その間、自分がオーナーの夫であることは一言も漏らさなかった。
トレーニングが終わった直後、一人の男性トレーナー・加賀見優斗(かがみ ゆうと)が料金表を投げつけてきた。その目は品定めするような色を帯びていた。
「お二人はどう見ても、タダ乗り狙いの乞食だろう?うちのパーソナルレッスンは一回数万円するんだ。お前たちのような人間にタダで体験させるためのものじゃないんだよ」
私は怒りを通り越して笑ってしまった。
「正規に体験レッスンを買ったのに、どうして乞食扱いなんだ?責任者を呼んでくれ」
彼は白目をむき、「俺がルールだ」と言わんばかりの顔をした。
「誰を呼んでも無駄だよ!ここのオーナーは俺の彼女だ。彼女はね、お前らみたいなレッスンのタダ食いをする貧乏人が一番嫌いなんだよ!」
彼は私たちの目の前で電話をかけ、傲慢かつ被害者ぶった口調で言った。
「ベイビー、店にタダ乗りしようとしてるクズが二匹来てさ、責任者を出せって騒いでるんだ。早く来てこいつらに思い知らせてやってよ!」