結婚三年目、愛のゆくえ
結婚三周年の記念日に、夫がケーキを買ってきてくれた。
上には「佐藤文音(さとう あやね)」と「古川聡(ふるかわ さとし)」、そして「結婚三周年おめでとう」の文字が書かれている。
……心臓が止まりそうになる。
佐藤文音――それは私の名前じゃない。夫の秘書の名前だ。
嫌な予感がして文音のインスタを覗いてみると、やっぱりそうだった。
そこには本来なら私のはずのケーキが写っていて、「古川奈穂(ふるかわ なほ)」と「古川聡」と書かれていた。
【三周年なんだ、あの人も私を奥さんだと思ってくれてるんだね】
【インスタ消して!ケーキ、二つとも間違えて送っちゃった。嫁にバレたらどうする!】
そのやり取りを見た瞬間、全部分かってしまった。
夫のサプライズや甘い演出は、全部ふたり分用意されていたのだ。
スマホを握りしめたまま、思わず声を立てて笑ってしまう。
まだ誤魔化そうとする夫が、可笑しくてたまらない。
でも私はもう決めている。別れる、と。