私は待ち続け、あなたは狂った
名家同士の政略結婚で強制的に結婚をさせられた、愛のないこの婚姻生活は苦しみながらも3年間は続いた。
夫は夜になっても帰ってこない。夫は女癖が悪い。そして、夫の心は他の女に向いている。
井上葉月(いのうえ はづき)はもう我慢できなくなっていた。絶対に、絶対に離婚する。
しかし葉月が離婚を切り出すと、清原逸平(きよはら いっぺい)はまるで別人のように変わり、葉月が行く先々で逸平の姿が見えるようになった。まるで怒られても逃げず、殴られてもへこたれないように。
表向きでは逸平はこう言ってる。「俺たちはまだ離婚していない。離婚していないなら夫婦だ。だから妻がいるところには俺もいる」
この結婚の始まりは決して美しくなく、打算と取引に満ちていた。逸平と葉月が幸せになれないことは最初からすでに決まっていた。
葉月は逸平がかつて口にした「これはただの政略結婚であって、恋愛感情などは一切存在しない」という言葉を忘れられなかった。
葉月の恋心は、一文の値打ちもないのだ。
葉月は決然とした口調で言った。「汚れた男は、もう要らない」
逸平はシャワーで自分をきれいに洗った後、葉月がいるベッドに飛びかかり、まるで犬のようにしっぽを振って懇願した。「葉ちゃん(ようちゃん)、俺はもうきれいになったよ」
十年の時を越えても、若き日に寄せたあの人への想い、この人生で変わることはない。