六十六回許した末、私はサヨナラを告げた
葛城文宏(かつらぎ ふみひろ)は私と結婚するために、66回もの旅先プロポーズを企画した。
67回目で、私はついに彼の想いに心を打たれた。
結婚式の翌日、私は66枚の許しのカードを用意した。
彼が私を怒らせる度に、このカード1枚で許してあげるという約束だった。
結婚して6年、彼の幼馴染のせいで私を怒らせるたびに、彼は許しのカードを1枚ずつ使っていった。
64枚目を使った時、文宏は私の様子がなんだか変だと気づくようになった。
私はもう、彼に気に掛けることも、彼を頼ることもなくなった。
ただ、彼がまた幼馴染のせいで私を放っておいて出かけようとした時、私は彼の手を掴んで尋ねた。
「彼女に会いに行くなら、許しのカードを使っても構わない?」
文宏は足を止め、困ったように私を見た。
「好きに使えばいいだろ?あんなにあるんだから」
私は静かに頷き、彼の後ろ姿を見送った。
彼はまだ、許しのカードが限りなくあるものだと思っていた。
しかし、残りあと2枚しかないことを、彼は知らなかった。