散りゆく夢
結婚式の当日、婚約者が突然、私の姉の姫野寧々(ひめの ねね)とすでに結婚していたことを告げた。
私はシステムから攻略失敗を宣告され、交通事故に遭って消されそうになったその時、杉島慎吾(すぎしま しんご)が命がけで駆け寄って私を助けてくれた。しかし彼はその代償として両足を失った。
その後、攻略対象を変更する機会を得た私は、彼のプロポーズを承諾した。
それから五年後のことだ。私は偶然、慎吾と友人の会話を耳にしてしまう。
「慎吾、あなたの初恋の人はもう子供もいるらしいし、あなたの足も完治したんだろ?そろそろ姫野真由美(ひめの まゆみ)に本当のことを話す気はないのか?」
「仕方ないだろ。真由美はどうしてもやっかいな存在なんだ。彼女にずっと罪悪感を持たせておかなきゃ、寧々が手にした幸せを邪魔し出すかもしれない」
聞き慣れたはずの声は、冷たく響いた。私は涙が止まらなかった。
ようやく悟ったのだ。慎吾による救いなど、最初から全て偽りだったのだと。
だとしたら、この偽りの結婚生活を続ける意味など、どこにもない。