息子を連れて離婚したら、夫が後悔し始めた
私、高梨綾子(たかなしあやこ)と篠崎怜(しのざき れい)が結婚して五年目、誘拐犯が私たちの息子、篠崎湊(しのざき みなと)を攫った。
犯人の要求は二億円。
怜は言った。
「慌てることはない。うちの子は少しばかり試練を経験してこそ成長するんだ」
二億円など、怜にとってははした金に過ぎない。
私は土下座して、ただ湊が一刻も早く帰ってくることだけを願ったが、彼は終始無関心だった。
三日後、湊は帰ってきたが、ショックで言葉を話せなくなっていた。
それなのに怜は言った。
「詩織が言ってたぞ。湊が学校で毎日、彼女を父親のいない子だと言いふらしていたらしい。これでどうやって悪口を言うか見ものだな」
私は湊を抱き上げ、耳元でそっと囁いた。
「湊、怖がらなくていいのよ。ママが連れて行ってあげるから」