彼は腎臓を差し上げた私を骨髄に徹すほど恨む
元彼が成功を収めたその日、医者から、余命三ヶ月と宣告された。
テレビでは、江嶋慎吾(えじま しんご)へのインタビューが放送されていた。
「江嶋さん、あなたを成功へと導いた原動力は何だったのでしょうか?」
慎吾は軽く笑ったが、目には涙が浮かんでいた。
「私にとって、最大の原動力は、おそらく八年前に腎臓を患い、恋人に捨てられたことです。
彼女が結婚を拒んでくれたおかげで、私は新たな人生へ踏み出せました」
インタビュー終了後、慎吾から電話がかかってきた。
「飯田楓(いいだ かえで)、俺は出世した。後悔してる?」
私は片側失った腎臓のあたりを撫でながら、苦笑いを浮かべた。
「後悔してるよ。それに、今はがんにかかってる。これで気が済んだ?」
「ざまあみろ!」慎吾は満足げに言った。
しかし、彼は知らない。がんになったのは、あの頃、彼に腎臓を提供したせいだ――