離婚成立、その直後に私は死ぬ
私と尾崎千明(おざき ちあき)の前には、二通の離婚協議書が置かれている。
一通は彼の分。
もう一通は私の分。
私に割り当てられたのは、財産の二割と別荘が一軒だ。双子とそのほかの本家の邸宅はすべて彼のものになる。
私はざっと目を通し、何の感情も見せず、そのまま署名する。
少し前のような取り乱しは、もう欠片もない。
千明のペン先が止まり、動きが鈍る。熱を帯びた視線で私を見つめてくる。
「異議はないのか。面会権についても聞かないのか?
一度サインしたら、もう後戻りはできないぞ」
私は書類を彼に差し返し、わずかに口元を緩める。
「必要ないわ」
千明は目を細め、何か言いたげな色がその奥に浮かぶ。
けれど、もう関係ない。
数時間後、私は尾崎家の嫁でも、二人の子の母親でもなくなる。
ただの、見る影もない死体になっているはずなのだから。