人獣の結婚と転生の姫
人と獣(けもの)との大戦が終結し、互いの合意により、世界は半獣人(はんじゅうじん)の統治下に置かれることになった。
百年に一度、人と獣の政略結婚が執り行われ、最初に半獣人を生んだ者が、次世代の支配者となる。
前世の私は、情に厚いと名高い狼族(ろうぞく)の長男へと嫁ぎ、誰よりも早く半獣の白狼(はくろう)の子を身ごもった。
我が子は人獣同盟(じんじゅうどうめい)の次代の統治者となり、夫もまた当然のごとく絶大な権力をその手にした。
一方で、妖艶な狐族(こぞく)に心奪われて嫁いだ妹は、夫である狐族の長男が女色に溺れ病を得たせいで、ついには子をなす力すら失ってしまった。
嫉妬に狂った妹は、火をつけて幼い白狼と私を無惨にも焼き殺した。
そして再び目を開けた時、私は結婚の日へと戻っていた。
だがそこには、狼族の長男・墨景(ぼくけい)のベッドに潜り込む妹の姿があった。
やはり彼女もよみがえったのだ。
しかし妹は知らない。墨景は、生まれつき残虐で、暴力を信奉する男。
決して良き伴侶ではないことを……