遠ざかる月と星、遠く過ぎた恋
神谷晴佳が刑務所を出たその日、外は冷たい雨が降っていた。
風に乗って雨粒が肌を刺し、刑務所の門前には報道陣が押し寄せていた。
「神谷さん、水月ノ庭事件であなたの依頼人が敗訴し、半年前に飛び降り自殺しました。遺族の方があなたに責任を問うてますが、どうお考えですか?」
「神谷さん、弁護士連合会から除名され、あなたの恩師も引退に追い込まれました。この件について一言お願いします!」
記者たちがどれだけ問いかけようとも、晴佳はただ黙ってうつむいたまま前へ進み、人混みをかき分けるようにして出口へ向かった。
道端には黒いゲレンデが停まっていて、夫・神谷誠司が車にもたれながら煙草を吸っていた。
その隣で、宇佐見美月が彼の腕を軽く引っ張り、誠司が視線を門の方に向ける。
そこで、現した姿は……