家族に見捨てられた件について
結婚式当日、新郎である高瀬悟志(たかせ さとし)が突然、式を中止した。
理由は、樋口寧々(ひぐち ねね)がSNSに【帰国しました】と投稿したからだ。
悟志は自らデザインした結婚指輪を置くと、教会を駆け出していった。
ウェディングドレス姿の私は立ち尽くした。私を支えてくれた兄――梅澤拓巳(うめざわ たくみ)も手を離した。
「遥香、お前は昔から強い子だからな。一人で何とかできるってわかってる。今は寧々のほうがお前より俺を必要としてる」
そう言うと、彼も去っていった。
二人は同じ女のために私を置き去りにしたのだ。
夜、結婚式の後始末を終えた後、寧々から写真が届いた。
写真には、拓巳と悟志が寧々のベッドに寄り添う姿が映っていた。
悟志が自ら作り、私に贈るはずだったネックレスが、今は寧々の首元に光っている。
拓巳が私のためにデザインし、仕立て上げたドレスが、寧々の身体を包んでいる。
それらはすべて、本来は私のものだった。
ついに私は諦め、涙ながらに電話をかけた。
「お父さん、お母さん……気が変わった。家に帰りたい」