死んでも、母に恩知らずと罵られた
僕が死んだその日は、母である神原雅子(かんばら まさこ)の誕生日だ。
雅子は珍しく、僕のために大きなケーキを残してくれていた。
僕はよだれを垂らしそうになりながら、そのケーキの前を漂って匂いを嗅いだ。
だが次の瞬間、そのケーキは弟である神原悠斗(かんばら はると)の前に差し出された。
「悠斗、早く食べなさい。春森(はるもり)って、やっぱり運が悪いわね!」
そう言い終えると、雅子は横で撮影している父である神原直彦(かんばら なおひこ)の方を見た。
「ちゃんと撮れた?あの恩知らずが帰ってきたら、しっかり見せてあげなきゃ。またえこひいきだなんて言わせないからね!
しかも、よくも家出なんか真似したね!
やっぱり、甘やかしちゃダメよ!本当に根性があるなら、一生帰ってこなければいいんだから!」
雅子は冷笑しながら机を叩いて、僕を罵った。
だが、ケーキを抱える悠斗の顔が恐怖で引きつっていることには気づかなかった。
そして、彼の少し乱れた髪や、袖口に点々と残る血痕にも気づかなかった。
その血は、僕のものだ。