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終わらない夜の果てに

終わらない夜の果てに

酒井瞳(さかい ひとみ)は、業界では有名な小悪魔だった。彼女の少し上がった赤い唇に、その色っぽい目元はいつも男を誘っているようだった。 三浦英樹(みうら ひでき)は名家の跡取りの中でも特に優秀で、近寄りがたい雰囲気をまとう、禁欲的な男だった。 そんな正反対の二人が、誰にも知られず情を交わしている。深夜のマイバッハの後部座席で体を重ね、チャリティーパーティーの化粧室で激しく求め合う。そして、プライベートワイナリーの大きな窓の前では、英樹に強く腰を引き寄せられ、キスを交わしていたのだった。 今回も情事が終わったあと、バスルームからシャワーの音を聞きながら、瞳はヘッドボードにもたれながら、父の酒井翔平(さかい しょうへい)に電話をかけた。 「盛沢市の、あのもう先が長くないっていう御曹司のもとへ嫁ぐ件、受けてもいいわ。でも、一つ条件があるの……」 すると電話の向こうから、翔平の隠しきれない喜びの声が聞こえてきた。「言ってみなさい!嫁いでくれるなら、どんな条件だって呑むぞ!」 「詳しいことは、家に帰ってから話す」そう言って彼女の声は優しいのに、瞳の奥は凍えるように冷たかった。 そして瞳は電話を切り、服を着ようと体を起こした。その時、ふと、英樹がそばに置いたノートパソコンが目に入った。 ラインの画面はついたままだ。一番上には「百合」という名前の相手からの新着メッセージが表示されているのだ。 【英樹さん、雷が鳴ってる。こわいよぉ……】 それを見て瞳の指先が、ぴくりと震えた。 すると突然バスルームのドアが開き、英樹が出てきた。 まだ濡れたままの鎖骨を、水滴が伝い落ちていき、シャツのボタンを二つほど無造作に開けたその禁欲的な姿に、どこかアンニュイな色気が混じっていた。 「会社で用事ができたから、もう行く」英樹は上着を手に取った。その声は、いつも通り温度感がないものだった。 それを聞いて瞳は、赤い唇の端を上げて笑った。「会社に用事って?それとも、あなたの『初恋の人』にでも会いに行くのかしら?」
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償いの三年、運命の果て

償いの三年、運命の果て

丸山浩(まるやま ひろし)の足が不自由になったのは、私たちの結婚式の3ヶ月前のことだった。 手術は失敗し、医者に「一生、立ち直れないだろう」と告げられた。 私、木村真由(きむら まゆ)はウェディングドレスの予約をキャンセルし、仕事も辞めた。両親がくれた金も、すべて浩の治療費につぎ込んだ。 花嫁になるはずが、介護をする人になった。 そんな毎日が、3年も続いた。 浩がイライラして物を投げつければ、私は床にひざまずいて拾った。 夜中、足の痛みで眠れない彼が「お前のせいで俺がこんな体になった」と罵った。 私は何も言い返さず、感覚なんてないはずの浩の足を、朝になるまでマッサージし続けた。 夜勤明けに体がクタクタになって帰宅しても、ドアの音で浩を起こすのが怖くて、よく廊下の壁にもたれて眠ることがあった。 病院へ検査結果を受け取りに行く日までは、私はそう信じていた。二人の生活を支えているのは私なんだと。 その日、廊下の角を曲がろうとした時、大きな窓の前に、浩が立っているのが見えた。 電話をしながら、笑っていた。 「もうちょい待ってくれよ。真由にもう少し罪滅ぼしをさせてさ。それが済んだら、俺の足も『治る』から」 電話の向こうから浩の友達の声がした。「えげつないな。咲希(さき)さんだって待てるだろ」 浩は、ふん、と鼻で笑った。 「咲希は俺が子供の頃から守ってきた幼なじみだ。本当なら海外のステージでピアノを弾いていたはずなのに!当時、真由が咲希に嫉妬してブレーキに手をつけなければ、咲希の手は不自由にならず、俺も咲希を守るために3年間もこんな状態にはならなかった。 咲希が真由を許すまでに3年もかかったんだぞ。こんなもんで済まされるわけがない。真由のお嬢様っぽいプライドを粉々に砕いてやるのが、咲希への償いだ」 私は検査結果の封筒を胸に抱え、その場に立ち尽くした。 その封筒に書かれているのは、私の名前。 そして私が脳腫瘍だと診断されたのは、もう3ヶ月も前のことだった。
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愛の果ては、他人でした

愛の果ては、他人でした

友だちとの飲み会。 私は沢村結衣(さわむら ゆい)。テーブルの向こう側で、夫の友人、相原亮太(あいはら りょうた)がふいにフランス語を口にした。 「なあ、お前が外で囲ってるあの子さ、もう妊娠二ヶ月だろ。どうするつもりなんだ?」 その問いを向けられた相手、そして私の夫でもある沢村誠(さわむら まこと)は、ほんの少し口元を上げただけで、顔色ひとつ変わらなかった。「外で囲ってるあの子」というのは、恐らく坂井花音(さかい かのん)のことだ。 まるで聞き慣れた天気の話でもしているみたいに、私の皿に刺身を乗せてくる。 その手つきのまま、同じくフランス語でさらりと言った。 「ゆいは子ども嫌いだからさ。花音にはちゃんと産ませて、子どもごと海外に出すつもり。俺の跡継ぎってことで取っておくよ」 噛みしめたエビは、もう何の味もしない。ただ頬を伝うものだけが、やけに熱い。 「結衣、どうした?」 すぐ隣で、慌てた東国語の声が響く。そっと涙を拭ってから、私はいつもの笑顔を無理やり貼りつけてみせた。 「このピリ辛ソース、ちょっと効きすぎたみたい」 本当は、しょっぱい醤油の味しかしない。 辛いのは舌じゃなくて、胸の奥。 涙の理由はただひとつ。 ──私は、フランス語が分かる。
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復讐の果て、幸せな人生

復讐の果て、幸せな人生

幼馴染である西園寺蓮(さいおん じれん)との婚約式の日、私は逃げ出した。海外へ向かう飛行機が離陸した後、私はすべての連絡先を削除した。 六年後、両親の墓地が移転することになり、私は帰国せざるを得なくなった。しかし、斎場の入り口で、あろうことか蓮と出会ってしまった。 彼は私の手首を死に物狂いで掴み、その瞳は血走っていた。 「なぜ逃げた?」 彼はひどく痩せており、目の下には隈が浮かんでいた。まるでこの六年間、眠れぬ夜を過ごしていたのは彼の方であるかのように。 「愛していない人と結婚したくなかったからよ」と私は言った。 彼は魂を抜かれたように、ふらりとよろめいた。 「他に用事は?」と私は尋ねる。彼は黙り込んだままだ。 私は少しの間辛抱強く待った後、身を翻して彼の横を通り過ぎた。嘘は言っていない。海外での三年間は、かつてあんなにも熱かった愛を、跡形もなく消し去るのに十分だった。
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裏切られた果て、幸せへ

裏切られた果て、幸せへ

社長である夫、西園寺恭也(さいおんじ きょうや)は、「奇病」にかこつけて堂々と不倫をしていた。彼の言い分はこうだ。 心は妻を選んでいるが、体はインターン生の相沢美奈(あいざわ みな)を選んでしまう。 そのため、彼は毎月十日間、美奈の元へ「治療」に行き、家を空けていた。 「遥、医者が言うには、これは美奈に対する抗えない生理的依存なんだ。体が本能的に美奈を求めてしまうが、僕が愛しているのは遥、君だけだ!」 私、一之瀬遥(いちのせ はるか)を信じさせるために、彼は芝居がかった誓いを立て、時にはナイフで自らの肌を切り裂いてまで、その「本心」を証明してみせた。 私は涙し、結局は情に負けて許してしまった。 しかし、妊娠後期のある日、強風で落下した看板に私が直撃され、お腹の子を失った。恭也に電話をかけたが、彼は一度も出なかった。 その直後、私は美奈のSNSを見てしまったのだ。 【ついにママデビュー!これからは幸せな三人家族!】 写真の中で、恭也は慈しむような表情で美奈のお腹を撫で、手には彼女のエコー写真を誇らしげに持っていた。 そうか。恭也が心も体も捧げていたのは、最初から美奈だったのだ。 その瞬間、私は私たちの結婚生活が完全に終わったことを悟った。
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二重の裏切りの果てに

二重の裏切りの果てに

ダイニングの空気が一変したのは、夫の友人が突如イタリア語で口を開いた瞬間だった—— 「三年前、お前は紗耶のために、澪に示談書を書かせようとして、あえて結婚まで利用したんじゃないのか? ここ数年、澪はお前にどんどん心を傾けていたのに、お前はまだ彼女を欺いてる。避妊薬を抗うつ剤だと偽ってまで……その真実を澪が知ったら、壊れてしまうとは思わなかったのか?」 夫は沈んだ表情で苦く笑い、「父親に望まれない子どもなんて、生まれてこなくていい。澪のことも……紗耶の幸せを邪魔しなければ、俺は彼女に一生、責任を果たすつもりだ」と答えた。 誰も知らなかった。 私は、彼に少しでも近づきたくて、すでにイタリア語を習得していたことを。 リビングに立ち尽くしたまま、私は首元に残る新しいキスマークを指先で隠しながら、抗うつ剤とされた薬の瓶を握っていた。 体の芯まで冷えきっていた。 そうか……彼の優しさも、眼差しも、全部嘘だったんだ。 私が信じていた救いなんて、最初から綿密に仕組まれた罠だった。 ならば、もういい。 私は、彼ら全員の幸せを、心から「祝福」してあげることにする。
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愛は、行き違いの果てに

愛は、行き違いの果てに

私と夫の木村貞吾(きむら ていご)が帰国して最初に顔を合わせた場所は、役所の前だった。 彼はセダンのそばにもたれ、不機嫌そうに一本タバコに火をつけた。 「そこまでじゃないだろ。お前の親友と一度遊びに行っただけで、離婚するって? それに、お前のためにプレゼントを選んでもらっただけだぞ。そんなに心が狭くていいのか?」 私は聞こえないふりをして、淡々と「中に入ろう」とだけ言った。 翌日の夜、私は貞吾が親友を抱き寄せ、冗談交じりに笑っているのを目にした。 「貞吾さん、美羽(みう)の友達とこんなことして、美羽は平気なの?」 貞吾は自信満々で、「あいつは俺をあんなに愛してるんだ。いずれ受け入れるさ」と言った。 彼が、私が別の人のためにウェディングドレスを着せているのを見て、ようやく気づいた。 私が望まないことに、どんなことがあっても妥協することはないのだ。
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執着の果て、私は光を掴む

執着の果て、私は光を掴む

篠原蒼真(しのはら そうま)の実家で開かれた食事会に参加した際、私、結城泉緒(ゆうき みお)はそろそろ結婚して家庭を持ちたいと自ら切り出した。 すると彼は、私が篠原家の財産を狙い、金目当てで嫁ごうとしているのだと決めつけ、皆の面前で私に十発以上も平手打ちを食らわせた。 そして、嫉妬して席を立った幼馴染を追うため、すぐさま私に背を向けた。 私は彼の手を掴み、行かないでと懇願したが、激高した彼に階段から突き落とされ、両脚と頭蓋骨の骨折の重傷を負った。 ICUで一ヶ月間治療を受け、ようやく意識を取り戻した。 今回、私は泣き喚いて騒ぐような真似はせず、自ら海外に住む母に連絡を取った。 「お母さん、この前話していた遺産相続の件、引き受けるわ」
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涙の果てに、幸せは訪れる

涙の果てに、幸せは訪れる

私の夫は、誰もが羨む「理想の旦那」だった。 みんなが言っていた――「彼ほど妻を大事にする男はいない」って。 けれど、その幻想は妊娠六ヶ月の検診の日に崩れた。 うつ病に苦しむ従姉が夫に別れの電話をかけ、自殺をほのめかしたのだ。 彼は迷うことなく、私を病院に残して彼女のもとへ走っていった。 母は「広い心で、夫を貸してあげなさい」と私に告げ、兄は「お前がこの家にいられるのは亜由美のおかげだ。亜由美が欲しがるものは、全部譲ってやれ」と叱った。 あまりに理不尽だった。 本当の家族は私なのに。 彼女はただ、私の居場所を奪った「盗人」にすぎないのに。 そして私は決めた。 ――もう、すべてを捨てて出ていこう。 だが、私がようやく背を向けたとき。 彼らは初めて、後悔に飲み込まれることになった。
Short Story · ラノベ
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別れの果てに、訪れるのは

別れの果てに、訪れるのは

私が平野隼人(ひらの はやと)と結婚するために、手段を選ばなかったということは誰もが知っていた。 しかし、当の私は結婚してからもう既に99回も、隼人に離婚を申し出ているのだった。 そして今回も、隼人は離婚届をあざ笑うように受け取ると、投げ捨てた。 「お前は俺の妻の座手放せるのか?」 隼人は私が彼のもとを、そして平野家を離れられるはずがないと確信しているのだ。 私は顔をそむけ、口の端に滲んだ血を拭う。 「今回は本当だから」 なぜなら、私はもうすぐ死んでしまうのだから。
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