歳々安らかに
「お姉ちゃん、本当にいいの?死んだことにしちゃったら、一平さんは絶対にお姉ちゃんを見つけられなくなるよ……」
斎藤梨央(さいとう りお)は目を伏せ、小さな声で言った。
「うん。もう戻れないから。できるだけ早くお願い」
「……わかった。でも、早くても半月はかかるよ」
梨央の妹・斎藤利香(さいとう りか)は、悲しそうに姉の手を握りしめた。
「一平さん、あんなにお姉ちゃんのこと好きだったのに……どうしてこんなことに……」
梨央は自嘲するように薄笑った。
――そうだね。あんなに私を大事にしてくれた人が、どうして……
彼女と三条一平(さんじょう いっぺい)は幼い頃からの幼なじみだった。
ずっと一緒に過ごし、周りの誰もが、彼がいつか彼女を娶るものと思っていた。だが……