狂気御曹司に囚われた身代わりに
十八歳のとき、草場哲弘(くさば てつひろ)は私を、児童売買が行われている福祉施設から救い出してくれた。
それ以来、私は彼の別荘に住むことになったが、決して救われた幸運な存在とは言えなかった。
彼は私に、別の少女の古い服を着せ、彼女の好むピアノ曲を無理やり覚えさせ、話し方までもまねさせた。
そして、私がまったく別の人間になるその日に、彼は一人の女を連れてきた。
彼女は美しい白いドレスをまとい、笑うと目が細くなり、眉骨のあたりに小さなほくろがある。私とまったく同じだ。
「菊地星那(きくち せな)、こっちに来なさい」
「青沢星来(あおざわ せいら)が戻ってきた。もうお前は必要ない。これまで付き合ってくれたことを考えて、草場家でメイドをしてもいい」
それ以来、星来という名の女は、哲弘のすべての愛情を受けてきた。
彼女が料理の味が薄いと言うと、哲弘は私にひざまずかせ、何度も作り直させた。
彼女が不注意でつまずくと、哲弘は「お前が手を抜いた」と責め立て、戒尺で私の全身を打ちつけ、青紫に腫れ上がらせた。
私は黙って、すべてを受け入れた。
――あの年、彼がそう言ったから。
「俺に恩を返したいのか?
なら、星来の身代わりとして、百回、俺と寝ろ」
私はうつむきながら、残っているコンドームの数を数えた。
あと一回だけ。
あと一回で、私は身代わりという影から、ついに逃れられる――