命を捧げ、失った愛を弔う
誕生日のあの日、私・白石美月(しらいし みづき)と義妹の白石美咲(しらいし みさき)は交通事故に遭った。
炎はすでに私の体に燃え移っていた。それなのに、婚約者の篠原蓮(しのはら れん)は助手席を指さし、こう言った。
「先に美咲を助けてくれ。あの子は心臓が弱いんだ」
目を覚ましたとき、私の顔は見る影もなく焼けただれ、余命は長くても一か月だと告げられた。
その後、篠原家と白石家の利益のために、家族は美咲を私の代わりに嫁がせることに決めた。
蓮は、包帯で覆われた私の顔を痛ましげに撫でながら、こう約束した。
「顔の傷が治ったら、篠原家の妻の座は必ず君に返す」
私は笑って頷いた。
それどころか、自分が持っていた株式も、不動産も、未公開の絵までも、結婚祝いとして美咲に譲り渡した。
美咲は私の作品を踏み台にして、世間の注目を一身に浴びる天才画家となった。
記者の取材を受けた母は、感極まって涙を流しながら言った。
「あの時、事故に遭ったのが美咲じゃなくて本当によかったわ。そうでなければ、うちは天才を一人失うところだったもの!」
蓮もまた、世間に向けて高らかに宣言した。「美咲こそが、篠原家の嫁になるのだ」と。
けれど、彼らは知らなかった。
本当の天才が、片隅から冷ややかに彼らを見つめていたことを。
そして、私が自ら差し出したすべてのものは――
最初から復讐のために用意した供物だったということを。