椿の花が散る時
十六歳のとき、両親が事故で亡くなり、私は義兄の遠山弘道(とおやま ひろみち)と二人きりで過ごすことになった。
二十歳のとき、私は酒の勢いを借りて彼に告白した。すると、いつもは優しかった彼は突然激怒した。
「遠山由美(とおやま ゆみ)、お前、少しでも羞恥心はないのか!俺はお前の兄だぞ!」
その日を境に、弘道は初恋の相手、富塚根雪(とみずか ねゆき)と再び交際を始め、私に対する態度は一変した。まるで氷のように冷たくなった。
しかし、彼が知らないのは、私はすでに癌の末期だった。
毎日がカウントダウンのように過ぎていった。
彼らが結婚するその日、私は静かに命の最後の時を迎えた。
もう一度目を開けば、私は二年前に戻っていた。そして、信じられないような事実を知ることとなった。
弘道は、もう三年も前に亡くなっていたのだ。