18歳の夫に離婚を迫られました
北都の富裕層の間で、越野陸人(こしの りくと)は「妻を溺愛している男」として知られていた。
幼い頃からの片思いで、十六の時には夜空いっぱいに花火を打ち上げて告白してきた。
十八の時、私が仇敵の不意打ちから彼をかばって耳が聞こえなくなったら、それ以来ますます私を命のように大事にしてくれるようになった。
彼こそが私の一生の幸せだと思っていた――見知らぬ人からの友達申請を承認するまでは。
その相手のSNSには、陸人の姿があふれていた。
上半身裸で眠っている写真、女性のお腹を笑顔で撫でている姿、妊婦健診に付き添う動画まであった。
そして、こんなやり取りも残されていた。
「ゆっくり体を休めて。雪ちゃんを妊娠させるつもりはない。彼女は後天的な難聴とはいえ、万が一子どもに影響が出たら困るから」
その瞬間、私は自分のお腹に手を当てたまま、呆然としていた。
陸人はまだ知らない。私が妊娠していることを。
私は涙をこらえながら離婚協議書を作成し、中絶の予約を入れた。
ふと振り返ると、十八歳の頃の陸人が突然現れて、真っ赤な目でじっと私を見つめていた。
「安里雪代(あんり ゆきよ)、どうして俺の子どもを堕ろすの?もう俺のこと、いらないの?」