99度捨てられ、元彼の兄に嫁ぐ
彼氏・武川裕輝(たけかわ ひろき)が99回目に私の薬指に指輪をはめたその瞬間、彼の義妹・生原蓉子(いくはら ようこ)から電話がかかってきた。
そして彼は、抑うつ症状を起こした蓉子を慰めるため、99回目となる結婚式の最中に私を置き去りにした。
私はもう耐えきれず、その背中に向かって叫んだ。
「もしあなたがどうしても行くというのなら、私は別の人と結婚するわ!」
だが彼は取り合わず、私を責め立てた。
「お前はどうしてそんなにわがままなんだ?結婚なんていつでもできる。でも蓉子は俺にとって唯一の妹なんだ」
そう言い残し、振り返りもせず去っていった。
私はただ、道化のようにその場に立ち尽くすことしかできなかった。
彼は知らない。今回の私は、本気だったのだ。
そして後日――
100回目のプロポーズをして膝をついた裕輝の前で、彼の兄・武川一輝(たけかわ かずき)が片腕で私の腰を抱き寄せ、低い声で告げた。
「悪いな、弟よ。これからは彼女のことを『お義姉さん』と呼ぶんだな」