แชร์

29戦目:お待たせ

ผู้เขียน: 8ツーらO太!
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29 11:00:51

 ラシュトを振り返った僕たちはすぐさま迎撃体勢をとった。そこにいるのは、どう見ても人間の少年。けれどネイヴァンが言ったとおり、人間ならば砂浜からの帰還に数時間は掛かるはず。

 十分やそこらで戻ってこられたということはやはり、

「きみは、人間ではないんですかっ……?」

 ラシュトは口角を引き上げ、悪戯っぽく笑った。

「怖いお兄さん、僕から見たらあなただって、純粋な人間には見えないよ?」

「黙れクソガキ!」

 ネイヴァンが吼えるが、少年は意にも解さず楽し気に続ける。

「そうそう、まだ答えを聞いてなかったね。どんなふうに殺されたいか教えてくれる?」

「それはこちらの台詞だ。希望どおりの殺し方をしてやろう。こちらには名のある脚本家兼演出家と、魔物を開きなれた調理人、そして万能な調理助手《アシスタント》がいる」

「おおっと。あなたたちやっぱり、死刑囚じゃなかったんだね。じゃあそうだなぁ……こんなプロットにしてよ。まずは冒頭で、パーティ全員毒蛇に噛まれて死ぬ、って」

 次の瞬間、ラシュトの姿がぐにゃりと歪み、肉が変質する嫌な音が響いた。皮膚が硬質化し、暗い色の鱗が連なっていく。彼の身体は分裂するように長く伸び、それが何本にも分かれていく。

 無数の黒い蛇。くわあ、と開かれた口には巨大な牙。そして牙の先から滴る毒液。

 硬い鱗を持った蛇たちが地面を這う。

 ズズズ……ズズズ……。

 この音……!

 僕は気づいた。蛇の鱗が岩に擦れる音。これは昨夜聞いた音と同じ。

 あれは何かを引き摺った音じゃなく、無数の蛇が、岩壁に開いた隙間を潜った音だったんだ。

 ラシュ

อ่านหนังสือเล่มนี้ต่อได้ฟรี
สแกนรหัสเพื่อดาวน์โหลดแอป
บทที่ถูกล็อก

บทที่เกี่ยวข้อง

  • 生きた魔モノの開き方   30傷目:ホップ、ステップ、ジャンプ

     四、五メートルは上から落ちてきたのにケロリとしているラシュトを見て、僕は寒気を覚えた。やはり、コレと戦うのは無謀だ。「エルドリス」 逃げましょう、という意味で僕は彼女を呼んだが、反応はない。彼女の碧い眼差しはもはや、人間離れした少年へと釘付けになっている。「呼ばれてるよ、綺麗でかっこいいお姉さん」 ラシュトがくすくす笑うが、エルドリスの表情は能面のようにぴくりとも動かない。 戦《や》る気なのだ。 僕は覚悟した。そして気持ちを、いかに逃げるか、から、いかに捕らえるか、に切り替える。 ネイヴァンも僕と同じ考えに至ったようで、ラシュトに正対して重心低く立ち、利き手の拳を握っている。「アハ、そうこなくっちゃ。活きの良い獲物は好きだよ」 ラシュトの笑みが深くなる。「ぬかせ」 とネイヴァン。その拳が赤い光に覆われる。 それが開戦の狼煙《のろし》となった。 高らかな笑い声とともに、ラシュトの体がねじれて変形する。溶けるように輪郭が崩れ、次の瞬間――エルドリスと瓜二つの姿がそこに立っていた。「……悪趣味め」 エルドリスは即座に間合いを詰め、ナイフで自分と同じ姿の首を一文字に切り掛かる。後ろに飛び退いた白い喉を刃が掠め、赤い血が僅かに飛び散る。 ラシュトは軽やかに距離を取ると、今度はネイヴァンの姿に変わる。口元を歪めて、挑発するように舌なめずりした。「なあエリィ。魔物とヤったことあるか? 俺で試してみるのはどうだい」「ネイヴァン・ルーガス、こいつを黙らせ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-30
  • 生きた魔モノの開き方   31踊目:死へ向かう舞踊

    「ネイヴァン・ルーガスッ!」 ネイヴァンが立っていた位置でエルドリスが叫ぶ。二人の場所が、入れ替わったのだ。 ネイヴァンは倒れ、左胸に刺さった槍は、スライムのように溶けて逃げていく。その槍の抜けた穴から尋常じゃない量の血が溢れ出す。 左腕の痛みを、一瞬で忘れた。 僕はほぼ反射的にネイヴァンへ駆け寄り、回復魔法を発動した。だが初歩の初歩たる教科書魔法だ。山火事にコップ一杯の水をかけ続けるようなもの。燃え尽きるスピードの方が圧倒的に早い。「虚の脈息《ルクス・エヴィータ》」 エルドリスの手がかざされて、真っ赤な胸の穴が、濃い白の光に包まれる。「回復魔法では間に合わない」 延命魔法だ。これでネイヴァンは、30分は生き長らえる。だが延命魔法は"致命傷を負っていても一定時間生きられるようにする"だけで、"致命傷を治す"わけではない。だからその30分の猶予期間に回復魔法で傷ついた臓器を――穴の開いた心臓を治療しなくては。 白い光が消え、血の止まったネイヴァンが、「やってくれるじゃねえか」と呟きながら上体を起こす。「ネイヴァンさん、まだ動いては――」「ああん? 殺されかけて泣き寝入りしろってぇ?」「治ったわけじゃないのは、その痛みでわかっているでしょう!?」「さあな。どういうわけか、大して痛くねぇんだ」 エルドリスの延命魔法は、命の期限を延ばすだけの魔法。かつて彼女が『30分クッキング』の視聴者に向かい『痛覚には何ら影響ない』と語ったとおり、痛みは消えていないはず。本来ならば起き上がるどころか話すことすら、呼吸すら辛いはずなのだ。 その痛みを超越しているのだとしたら、それは大量出血による血圧の急低下やアドレナリ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-05-01
  • 生きた魔モノの開き方   32失目:さよなら

     僕はというと、ネイヴァンが戦っている間、自分自身に強化魔法を掛けていた。このあとネイヴァンに掛けることになる回復魔法の威力をできる限り上げるためだ。「助手君」 戦闘に目を向けたままエルドリスが僕を呼ぶ。「十五分で……いけそうか?」「五分五分、といったところです。あの、回復魔法が間に合わなかったら、延命魔法の重ね掛けもできるんですよね? 妹さんにやっていたって……」 碧い瞳が一瞬睨むように僕を見て、また前方に戻る。「す、すみません。別に初めからそれ頼みにしたいわけじゃないんですが、人の命が僕の魔法にかかってるって思ったら……」 プレッシャーで死にそうで。「勘違いするな。責めたわけじゃない。ただ、延命魔法の重ね掛けが上手くいく保証はないと伝えておく」「ど、どうしてですか?」「リュネットの場合、最初に延命魔法を掛けた時点で、"欠けていた臓腑"の代替物が揃っていた。しかし、今のネイヴァンの場合はそうじゃない」「代替物、ですか……」 穴の開いた心臓の代わりとなれるもの。それは別の無傷な心臓。 小さな疑問が湧いた。確か、エルドリスの妹リュネットは、町の外で魔物に遭遇し、内臓のほとんどを食われた、と。ならばその時エルドリスは、どうやってそれら内臓の代わりを見つけたのだろうか。 ネイヴァンとラシュトの間で、空気が爆ぜた。 僕の意識はそちらへ奪われる。 戦いはネイヴァンが明確に押していた。延命魔法により死の恐怖を感じずに戦える男。躊躇なく相手の懐へ潜り込み、急所を狙い続ける。

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-05-02
  • 生きた魔モノの開き方   1品目:ラグド・トロールの香草焼き

    「んふふっふ~、んふふ♪ んふふっふ~、んふふ♪」 ここはヴェルミリオン帝国、第七監獄《グラットリエ》。 地下調理場からは今日も、彼女の鼻歌が聞こえてくる。 30分クッキングのお時間です。◆「皆さま、こんにちは。『30分クッキング』です」 地下調理場の無機質な空間に、調理アシスタントの男の、張りのある声が響いた。 魔導カメラが赤く灯り、その様子を生放送している。「本日の調理人は、エルドリス・カンザラ先生です」 アシスタントの横に立つのは、黒髪を纏《まと》めた長身の女。雪色の肌と、凍土の奥で精製されたかのような混じり気のない碧眼。恐ろしく静謐な美貌がカメラ映えする。二人は揃いの黒革のエプロンを身に着けていた。「そして本日の食材は、ラグド・トロール。人型のC級魔物です」 アシスタントが背後を指すと、壁に磔《はりつけ》にされた魔物が暴れ出した。 ラグド・トロール――全長二メートルほどの人型の魔物。 人間と似た腕と脚を持ち、顔は獣じみた特徴をしているが、瞳には理性の名残が宿っていた。自由を奪われたそれは、低く呻き声を上げながらこちらを睨んでいる。「作るのは、ラグド・トロールの香草焼きです。では先生、お願いします」 エルドリス、と紹介された女がここで初めて口を開く。「ラグド・トロールの特徴は脂身の芳醇な香りだが、適切に下処理しないと臭みが残り、脂の香りを妨げてしまう。ゆえに、まずは内臓を手早く抜く」 カメラが寄り、エルドリスが長ナイフを手に取る。 怯えたように吠えた魔物に彼女はすっと手を触れた。「では、開いていく」 刃《やいば》が魔物の硬い皮膚に沈んだ。そこから皮膚がズッズッ、と徐々に割かれる。「グ、……ア……ギィィィィィ……ッ!」 傷口から血が溢れ、ラグド・トロールの全身が仰け反る。口は限界まで開かれ、牙を剥き出しにしながら喉を震わせる。口の端で血泡が弾け、凄まじい痙攣とともに四肢が震え、鎖がガシャガシャと鳴る。眼球は飛び出さんばかりに見開かれ、助けを求めるように中空を見つめる。 裂けた腹部からは臓器が半ば飛び出し、生臭い血が周囲を濡らしている。 だが――エルドリスは何の躊躇《ためら》いもない手つきで、素早く臓器を摘出していく。「この時点で死んでしまうと肉が固まってしまうため、適度に魔力を流して生かす」 彼女はそう言いな

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-03
  • 生きた魔モノの開き方   2品目:スクリームバードの甘辛煮込み

    「み、皆さま、こんにちは。『30分クッキング』です」 声が震える。今日の進行役は僕――イオルク・ネイファ。手が震えるのを、両手を握り合わせて抑えながら、魔導カメラの前に立っている。「本日のちょ、調理人はエリド、失礼しましたっ、エルドリス・カンザラ先生です」 隣に立つのは黒革のエプロンを纏《まと》ったエルドリス。不純物を取り除かれ、純度100%となった氷のように冷たく美しい碧眼がカメラを射抜く。オープニングではやはり、昨日と変わらず無表情だ。「そして本日の食材は、こちら。スクリームバード」 僕は背後を指し示す。 そこには鳥型の魔物が、鉄製の台に拘束されていた。 スクリームバード。B級の飛行魔物。 背丈は約五十センチだが、羽を広げれば三メートルに達する。鋭い嘴と爪を持ち、羽根はしなやかで大きく、空を滑るように飛ぶのに適している。 特筆すべきは、その名のとおり「絶叫《スクリーム》」だ。敵を威嚇し、鼓膜を破壊するほどの大音量で鳴く。 しかし今、魔物の嘴には分厚い皮の口枷《くちかせ》が嵌《は》められ、絶叫は封じられている。大きな羽は拘束具でぐるぐる巻きにされ、鋭い爪を持つ足は、鉄製の台の上から一歩も動けないよう足輪で縫い付けられている。「本日は、スクリームバードの甘辛煮込みを作ります。では先生、よろしくお願いします」 僕がオープニングトークを終えると、エルドリスが静かに長ナイフを手に取る。「まずは、下処理」 エルドリスは、鳥の胸部に手を当てた。「スクリームバードの肉質は繊維が密で詰まっている。生や焼きでは少し硬いが、じっくり煮込めば歯のない老婆でも食べられるくらいほろほろになる」 彼女が撫でるように指を動かすと、スクリームバードの翼が、拘束を断ち切ろうと必死にもがく。 だが、その程度の抵抗で、帝国内に点在する監獄の中で最も重罪人が多く収監されるこの第七監獄《グラットリエ》の拘束具が外れるわけがない。「では、開いていく」 そう言うと、エルドリスは迷いなく、鳥の胸部に長ナイフを突き刺した。 口枷の中で籠った絶叫が響く。だがそれは単に不快音というだけで、人体に影響を及ぼすレベルじゃない。 スクリームバードの羽根が一斉に逆立ち、逃げ出そうとする動きに、金属の足輪が激しく音を立てる。 長ナイフの刃がゆっくりと胸部を切り開いていく。 ズズズ、ズ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-03
  • 生きた魔モノの開き方   3品目:スプリンターマウスのロースト

     大丈夫、大丈夫。今日は朝から水しか飲んでいないし、吐き気止めの薬草も噛んだ。「皆さま、こんにちは。『30分クッキング』です」 カメラの赤い光を前に、僕は腹に力を込めて声を張る。手に汗が滲み、エプロンの上でそれとなく拭う。昨日よりはマシかもしれない。だけど、慣れることはない。生きた魔物を解体し、料理するなんて、まともなことじゃない。「本日の調理人は、エルドリス・カンザラ先生です」 彼女はいつものように冷淡な碧眼をカメラに向け、頷く。「食材はこちらです。D級魔物、スプリンターマウス」 僕が調理台の方を指し示すと、金網のケージに入れられた小さな魔物たちにカメラが寄った。 スプリンターマウス。大きさや見た目は普通のネズミとほぼ変わらない。だが、その脚力は強靭で、名前のとおり俊足を誇る。獲物に噛みつくと神経毒を流し込み、動きを封じる性質を持つ。本来なら捕獲することすら困難な魔物だが、今は10匹ほどケージに閉じ込められ、小さな体を震わせている。「本日は、このスプリンターマウスをローストします。では先生、お願いします」 半月型に口を開けたオーブンにはあらかじめ火が灯されていた。赤々と燃え盛る炎が、小さな獲物たちを待ち構えている。「下処理を始める」 エルドリスは無造作にケージを開けると、一匹のスプリンターマウスの首根っこを素早く掴んだ。魔物はキィッと鳴き、鋭い前歯を剥き出しにして暴れるが、彼女の手から逃れることはできない。「では、開いていく」 エルドリスは細身のナイフを手に取り、スプリンターマウスの腹部に刃を入れた。 ズ……ズズ……。 皮膚が裂かれ、内部の臓器が覗く。 キィ……キィィ……! かすかな鳴き声。魔物の小さな体がピクピクと痙攣し、その爪が忙しなく宙を掻く。「小動物の魔物は内臓の臭みが強いため、速やかに取り除く」 エルドリスは迷いなく指を突っ込み、内臓を掻き出す。小さな臓器たちがズルリと抜き取られ、トレーの上に放られる。 腹の中はほとんど空洞になったが、臓器を抜きながらエルドリスが掛けた延命魔法のおかげで、スプリンターマウスの四肢はまだ意志を持って動いている。「臭みを抑えるために、内部にフルーツを詰める」 エルドリスは小さく切ったメルグナの実とトルフェの果肉を押し込み、腹の皮を元通りに合わせ、短い金串を刺して閉じた。「先生、

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-07
  • 生きた魔モノの開き方   4品目:カサリス・ビートル茶

    「私の房だ」 短く告げると、エルドリスは鉄扉を押し開け、自分の独房へと足を踏み入れた。僕は少し躊躇ったが、彼女が振り向きもせず奥へと進むのを見て、後に続く。 囚人の独房のはずなのに、そこは静かな宿泊所のようだった。壁は無機質な石造りだが、ところどころに淡い色の布が掛けられ、冷たい印象を和らげている。部屋の隅には簡素ながらも重厚感のある木製のベッド。壁際には本棚とキャビネット。造り付けの吊戸棚や、その下には小型の魔導炉まである。 特に目を引いたのは、鉄格子付きの窓だ。 ここ第七監獄《グラットリエ》は、囚人の脱獄を防ぐため、ヴェルミリオン帝国の本土から離れた孤島の上に建てられている。この独房は、第七監獄《グラットリエ》に数百ある房の中でも比較的環境の良い位置にあった。 窓からは午後の日差しが房内に降り注ぎ、鉄格子越しには、陽光を浴びて煌《きら》めく青い海と、船ひとつない水平線が見える。その上を海鳥たちが旋回し、時折遠くで鳴き声を上げる。美しさと孤独さを同時に感じるような風景。 その窓の手前に、木製のテーブルと、椅子が二脚あった。一脚でなく二脚なのは、今回のような来客を想定してのことだろうか。 それもまた、彼女への"特別待遇"のひとつなのだろう。「座れ」 促されるまま、窓際のテーブルに腰を下ろす。エルドリスは戸棚を開け、ティーセットと小箱を取り出した。「茶を淹れよう」 彼女が小箱を開けると、出てきたのは茶葉……ではなく、小さな魔物だった。黒い甲殻に覆われたそれは昆虫の一種だろうか。六本の脚を持ち、頭部には短い触角がついている。「これは?」「カサリス・ビートル。D級魔物。体内の分泌液が湯に溶けることで、上質な紅茶のような香りを生む」

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-08
  • 生きた魔モノの開き方   5品目:脚を抜いて振って割ったダスト・スコッチ

     エルドリスはキャビネットを開けて、平たい缶を取り出した。僕は甘い焼き菓子の類が出てくると思い、期待を込めて彼女の手元を見つめる。 しかし、彼女が缶の蓋を開けた瞬間、その期待は粉々に打ち砕かれた。 中に詰められていたのは、丸く平らな魔物だった。見た目はチョコチップクッキーに似ているが、数えきれないほどの細かい脚が、体の周りをぐるりと取り囲んでわさわさ動いている。 鳥肌が立った。「こ、これは……?」「ダスト・スコッチ。D級魔物だ」  エルドリスは缶の中からダスト・スコッチを一匹取り出し、指でその脚の生えていない体の中央を摘まみながら僕に見せた。「ダスト・スコッチは食べ方に工夫がいる。正しい食べ方をすれば焼き菓子代わりになるが、間違うと、臭くて苦い雑巾の味になる」「ぞ、雑巾……?」「味を知らないか? それは幸運な人生を送ってきたな」 僕は返事ができなかったが、彼女は気にせず続けた。「まず、脚をすべて抜く」 そう言い、ダスト・スコッチの周囲に生えている細かな脚を二十本ほどまとめて摘み、一気に引き抜く。そしてそれを繰り返す。 僕もダスト・スコッチを摘まみ上げ、彼女の真似をして、恐る恐る脚を引っ張った。細い脚は大した抵抗もなく簡単に抜ける。虫は悲鳴を上げたり暴れたりしないから、あまり気も咎《とが》めない。 エルドリスは、僕がすべての脚を抜き終えるのを待って口を開いた。「次は、平らな面が地面と平行になるように持ち、十回ほど振る。こうして内部の臓器や体液を撹拌《かくはん》するんだ」 エルドリスは言いながらダスト・スコッチを振る。僕もすかさず真似をした。その動作に合わせて、ダスト・スコッチから微かに甘い香りが漂ってくる。「これが最後だ。振り終えたら間髪入れず、半分に割り開く」 彼女は両手の親指と人差し指を使って、パキッと小さな音を立てながらダスト・スコッチを二つに割った。僕もやってみる。 断面は、焼いたパイ生地のような層になっており、層の間からは紫水晶のように輝く淡紫の蜜がとろりと滲《にじ》み出てくる。「こうなれば、もう大丈夫だ。よく噛んで食べろ」 エルドリスは真っ二つに割り開いたダスト・スコッチの半分を口に運び、カリカリと小気味よい音を立てながら咀嚼する。僕も同じように口に入れてみた。「甘い……」 最初に広がるのは、仄《ほの》かな甘み

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-09

บทล่าสุด

  • 生きた魔モノの開き方   32失目:さよなら

     僕はというと、ネイヴァンが戦っている間、自分自身に強化魔法を掛けていた。このあとネイヴァンに掛けることになる回復魔法の威力をできる限り上げるためだ。「助手君」 戦闘に目を向けたままエルドリスが僕を呼ぶ。「十五分で……いけそうか?」「五分五分、といったところです。あの、回復魔法が間に合わなかったら、延命魔法の重ね掛けもできるんですよね? 妹さんにやっていたって……」 碧い瞳が一瞬睨むように僕を見て、また前方に戻る。「す、すみません。別に初めからそれ頼みにしたいわけじゃないんですが、人の命が僕の魔法にかかってるって思ったら……」 プレッシャーで死にそうで。「勘違いするな。責めたわけじゃない。ただ、延命魔法の重ね掛けが上手くいく保証はないと伝えておく」「ど、どうしてですか?」「リュネットの場合、最初に延命魔法を掛けた時点で、"欠けていた臓腑"の代替物が揃っていた。しかし、今のネイヴァンの場合はそうじゃない」「代替物、ですか……」 穴の開いた心臓の代わりとなれるもの。それは別の無傷な心臓。 小さな疑問が湧いた。確か、エルドリスの妹リュネットは、町の外で魔物に遭遇し、内臓のほとんどを食われた、と。ならばその時エルドリスは、どうやってそれら内臓の代わりを見つけたのだろうか。 ネイヴァンとラシュトの間で、空気が爆ぜた。 僕の意識はそちらへ奪われる。 戦いはネイヴァンが明確に押していた。延命魔法により死の恐怖を感じずに戦える男。躊躇なく相手の懐へ潜り込み、急所を狙い続ける。

  • 生きた魔モノの開き方   31踊目:死へ向かう舞踊

    「ネイヴァン・ルーガスッ!」 ネイヴァンが立っていた位置でエルドリスが叫ぶ。二人の場所が、入れ替わったのだ。 ネイヴァンは倒れ、左胸に刺さった槍は、スライムのように溶けて逃げていく。その槍の抜けた穴から尋常じゃない量の血が溢れ出す。 左腕の痛みを、一瞬で忘れた。 僕はほぼ反射的にネイヴァンへ駆け寄り、回復魔法を発動した。だが初歩の初歩たる教科書魔法だ。山火事にコップ一杯の水をかけ続けるようなもの。燃え尽きるスピードの方が圧倒的に早い。「虚の脈息《ルクス・エヴィータ》」 エルドリスの手がかざされて、真っ赤な胸の穴が、濃い白の光に包まれる。「回復魔法では間に合わない」 延命魔法だ。これでネイヴァンは、30分は生き長らえる。だが延命魔法は"致命傷を負っていても一定時間生きられるようにする"だけで、"致命傷を治す"わけではない。だからその30分の猶予期間に回復魔法で傷ついた臓器を――穴の開いた心臓を治療しなくては。 白い光が消え、血の止まったネイヴァンが、「やってくれるじゃねえか」と呟きながら上体を起こす。「ネイヴァンさん、まだ動いては――」「ああん? 殺されかけて泣き寝入りしろってぇ?」「治ったわけじゃないのは、その痛みでわかっているでしょう!?」「さあな。どういうわけか、大して痛くねぇんだ」 エルドリスの延命魔法は、命の期限を延ばすだけの魔法。かつて彼女が『30分クッキング』の視聴者に向かい『痛覚には何ら影響ない』と語ったとおり、痛みは消えていないはず。本来ならば起き上がるどころか話すことすら、呼吸すら辛いはずなのだ。 その痛みを超越しているのだとしたら、それは大量出血による血圧の急低下やアドレナリ

  • 生きた魔モノの開き方   30傷目:ホップ、ステップ、ジャンプ

     四、五メートルは上から落ちてきたのにケロリとしているラシュトを見て、僕は寒気を覚えた。やはり、コレと戦うのは無謀だ。「エルドリス」 逃げましょう、という意味で僕は彼女を呼んだが、反応はない。彼女の碧い眼差しはもはや、人間離れした少年へと釘付けになっている。「呼ばれてるよ、綺麗でかっこいいお姉さん」 ラシュトがくすくす笑うが、エルドリスの表情は能面のようにぴくりとも動かない。 戦《や》る気なのだ。 僕は覚悟した。そして気持ちを、いかに逃げるか、から、いかに捕らえるか、に切り替える。 ネイヴァンも僕と同じ考えに至ったようで、ラシュトに正対して重心低く立ち、利き手の拳を握っている。「アハ、そうこなくっちゃ。活きの良い獲物は好きだよ」 ラシュトの笑みが深くなる。「ぬかせ」 とネイヴァン。その拳が赤い光に覆われる。 それが開戦の狼煙《のろし》となった。 高らかな笑い声とともに、ラシュトの体がねじれて変形する。溶けるように輪郭が崩れ、次の瞬間――エルドリスと瓜二つの姿がそこに立っていた。「……悪趣味め」 エルドリスは即座に間合いを詰め、ナイフで自分と同じ姿の首を一文字に切り掛かる。後ろに飛び退いた白い喉を刃が掠め、赤い血が僅かに飛び散る。 ラシュトは軽やかに距離を取ると、今度はネイヴァンの姿に変わる。口元を歪めて、挑発するように舌なめずりした。「なあエリィ。魔物とヤったことあるか? 俺で試してみるのはどうだい」「ネイヴァン・ルーガス、こいつを黙らせ

  • 生きた魔モノの開き方   29戦目:お待たせ

     ラシュトを振り返った僕たちはすぐさま迎撃体勢をとった。そこにいるのは、どう見ても人間の少年。けれどネイヴァンが言ったとおり、人間ならば砂浜からの帰還に数時間は掛かるはず。 十分やそこらで戻ってこられたということはやはり、「きみは、人間ではないんですかっ……?」 ラシュトは口角を引き上げ、悪戯っぽく笑った。「怖いお兄さん、僕から見たらあなただって、純粋な人間には見えないよ?」「黙れクソガキ!」 ネイヴァンが吼えるが、少年は意にも解さず楽し気に続ける。「そうそう、まだ答えを聞いてなかったね。どんなふうに殺されたいか教えてくれる?」「それはこちらの台詞だ。希望どおりの殺し方をしてやろう。こちらには名のある脚本家兼演出家と、魔物を開きなれた調理人、そして万能な調理助手《アシスタント》がいる」「おおっと。あなたたちやっぱり、死刑囚じゃなかったんだね。じゃあそうだなぁ……こんなプロットにしてよ。まずは冒頭で、パーティ全員毒蛇に噛まれて死ぬ、って」 次の瞬間、ラシュトの姿がぐにゃりと歪み、肉が変質する嫌な音が響いた。皮膚が硬質化し、暗い色の鱗が連なっていく。彼の身体は分裂するように長く伸び、それが何本にも分かれていく。 無数の黒い蛇。くわあ、と開かれた口には巨大な牙。そして牙の先から滴る毒液。 硬い鱗を持った蛇たちが地面を這う。 ズズズ……ズズズ……。 この音……! 僕は気づいた。蛇の鱗が岩に擦れる音。これは昨夜聞いた音と同じ。 あれは何かを引き摺った音じゃなく、無数の蛇が、岩壁に開いた隙間を潜った音だったんだ。 ラシュ

  • 生きた魔モノの開き方   28骨目:おまえはだれだ

     僕たちは光の雨粒に打たれた白骨遺体を見つめていた。人間の形を保ってはいるものの、ところどころ損傷が目立つ。とりわけ頭蓋骨は縦に真っ二つに割れていて、致命傷の跡なのか白骨化後の傷なのかは知れないが、異様だった。  骨の表面には、雨水や泥の跡がうっすらと残っている。 そして絡みつく、僕が放った絶対拘束《トータル・フェター》の蛇。その意味するところはつまり、「これは囚人の――死刑囚の遺骨です」「誰なんだよ」 とネイヴァン。「わかりません。でもラシュトの部屋の奥にあったんですから、ラシュトの知り合いなのでは?」「うーむ……でもあいつ、他の死刑囚とつるむようなタイプか? 殺しちまいそうだろ」「知らないですよ」「あ、そうだ。これは聞いた話だが、人間の遺体が雨風に晒された状態で完全に白骨化するには、少なくとも一年かかるらしいぜ。となれば、この遺体は一年以上前にこの島へ送られた囚人のものだ」「そんなの、数えきれないほどいます」「だよなぁ。……新人君、識嚥《シエ》で食ってみろよ。それでわかるだろ」「嫌ですよ! 冗談じゃない!」 この男はなんてことを言うんだ。 エルドリスが小さくため息をついた。「断られるに決まってるだろ。頭を使え、ネイヴァン・ルーガス」「なんだよエリィ。じゃあ他に方法があるっていうのか?」「だから頭を使えと言っている。これまでの情報を総合的に考えてみるんだ。まず、この場所はラシュトのねぐらの奥にあって、ここに繋がる通路は岩壁によって遮断されていた。だが完全な遮断ではなかった。岩壁には隙間があったし、ここの天井にも隙間がある」「それが何なんだよ」 次に、とエルドリスはネイヴァンの問いかけを無視して続けた。

  • 生きた魔モノの開き方   27殺目:快楽殺人者の憂鬱

     頭が重い。手足が思うように動かない。体が痛い。 目を開けると、冷たい岩肌の床が視界に入り、その先に、赤々と燃える焚き火が見えた。「おはよう、怖いお兄さん」 楽しげな声が降ってくる。 顔を動かして声のした方を見ると、ラシュトが焚き火のそばに座り、金属製のナイフを弄んでいた。彼は木製のナイフしか持っていなかったはずなので、それは恐らくエルドリスの持ち物だろう。その唇の端は愉快そうに吊り上がっている。「あなたたちさ、昨夜食べたセフィアベリーと今朝食べたヴェルド、食べ合わせって考えたことある?」 唐突な問いかけを聞きながら、頭の中で警鐘が鳴り続けている。手足が動かないのは縛られているせいだ。しかも手は背中側で括られているため、身を起こす支えにもできない。 エルドリスとネイヴァンも目を覚ましていたようで、すぐそばで動く気配がする。「セフィアベリーはね、胃でなかなか消化されないんだ。だからひと晩経ったくらいじゃまだ、胃の中に残ってる。それで、ヴェルドと混ざると……さ、あっという間に有害成分に変わる。そうなると、人間は――」 ラシュトはそこで言葉を止め、ゆっくりと笑みを深めた。「――昏倒してぐっすり眠っちゃうんだよ」 ネイヴァンが舌打ちする。本当は悪態のひとつも吐きたいところだろうが、彼とて今、この不利な状況で少年を煽るリスクを考えないわけがない。 エルドリスも同様だった。いつもネイヴァン相手に流暢に飛び出す嫌味が今は鳴りを潜めている。だが、彼女の無念は僕ら以上だろう。調理人である彼女にとって、毒の生成に食べ合わせを使われること、そしてそれにまんまと引っかかってしまったことは、屈辱にも近いはず。「あなたたちは運が悪かった。でも逆に僕はものすごく幸運だ。い

  • 生きた魔モノの開き方   26喰目:グラングの塩焼きとヴェルドのハーフカット

     なんだ? どういうことだ? ラシュトはどこへ消えた? 僕はエルドリスとネイヴァンを起こし、事の顛末を二人へ伝えた。 ネイヴァンが点火魔法で焚き火に火をつけ、洞窟の中に鮮やかな視界が戻ってくる。僕たちは壁面を丹念に調べ始めた。叩いたり、押してみたり、突起に指をかけて引いてみたり。しかし――「特に変わったところはないな……」 ネイヴァンが首を水平に振る。壁面を構成する岩は、どれもただの岩でしかない。床も、下に抜け穴がないかと三人で調べてみたが、何も見つからなかった。 僕たちが調査を続けていると、外から小鳥の鳴き声が聞こえてきた。「朝か」 エルドリスは立ち上がると、部屋の入り口へ向かっていく。「どこへ行くんです? もう砂浜へ戻りましょう。ネイヴァンさん、転移魔法をお願いします」「少し待て、念のため洞窟の外を確認する」「確認って何を! エルドリス、待ってくださいっ」 僕は洞窟へ入っていくエルドリスを追った。エルドリスは歩きながら僕の質問に答える。「確認するのはあの部屋の外側だ。私たちはここに入ってくるとき、蔓に覆われた入り口しか見なかった」「それが何なんです?」「あの部屋――あの広い空間には外気が流れていたな。つまり、僅かだが外部と繋がっているということ。その繋がっている場所を外側から見れば、わかるかもしれない。内側を調べてもさっぱりだったが、子どもひとり通り抜けるだけの隙間の手がかりが。あくまで小さな可能性だが」「わかりました。じゃあ、洞窟の周囲をざっと見て、そしたら浜辺へ帰りましょう」「おいおい、新人君。なんだか妙に焦っちゃいねえか」 後ろから付いてきていたネイヴァンが飄々と言う。彼にはわから

  • 生きた魔モノの開き方   25食目:ノルクの干し肉とセフィアベリーのスープ

     ラシュトに導かれ、僕たちは洞窟の中へと入っていった。 ひんやりとした空気。足元の地面は剥き出しの岩肌で、場所によっては水滴で湿っていて滑りやすい。壁面には光る苔や菌類がまばらに張り付いており、それらが様々な色合いでぼんやりとした微光を放っていた。天井は標準的な成人男性の背丈ぎりぎりくらいの高さしかなく、長身のネイヴァンは常にかがみ気味で、何度も頭をぶつけそうになっている。 洞窟の奥へ進むほどに、湿気と冷気が増していく。水の滴る音がどこからかポチャン、ポチャンと反響する中、ラシュトは楽しそうな鼻歌を歌う。 やがて道が開け、僕たちは広々とした空間へと出た。 天井は高く、壁面は無数の岩が積み重なった形状をしている。その岩々の隙間から新鮮な外気が入り込み、ゆるやかな空気の流れを生み出していた。 中央には焚き火の跡があり、奥には乾いた枯草を敷いた簡素な寝床がある。物を入れる木箱や簡素な木の机、革袋のようなものまであり、それなりの生活を営んでいる様子が伺える。「ここが僕の部屋だよ。まあ、ちょっと狭いけど、十分だよね?」 ラシュトは振り返って、にこりと微笑む。「なかなか悪くないな」 エルドリスが周囲を見回しながら呟いた。「きみが一人でここを作ったのか?」 ネイヴァンが少し驚いたように尋ねると、ラシュトは得意げに頷いた。「そうさ。死刑囚島《タルタロメア》は危険だけど、こうしてちゃんと居場所を作れば生きていけるんだ。さあ、座って」 ラシュトの言葉に従い、僕たちは焚き火の跡の周囲に腰を下ろした。「さて、晩ご飯の準備をしようかな」 ラシュトは焚き火の残骸に火をつけ直し、部屋の端に置かれていた木箱から干し肉らしきもの

  • 生きた魔モノの開き方   24夜目:紅い魔モノの棲む処

    「おいおい、新人君、今なんて言った? 俺の聞き間違いか?」「聞き間違いじゃありません。彼はA級殺人犯です」 ネイヴァンは眉をひそめて、少年をまじまじと見つめる。しかし、見たところでわかるものでもない。囚人に、その罪状と等級ごとに刻まれる魔導印は、人道的な理由により監獄の監督官にしか見えないようになっている。「死刑囚島《タルタロメア》に送られた囚人の生き残りか」 エルドリスが冷静に呟いた。 そうでしかあり得ないと僕も思っているが、疑問は残る。「最後に死刑囚が送られたのは約一か月前です。仮に彼がそのときの死刑囚だとしても、一か月間この島で生き抜いたことになる。そんなのは前代未聞です。大抵は数日で魔物に襲われて命を落とします」 少年に注意を払いつつ小声で話していると、少年は突然にこりと微笑んだ。「ねぇ、あなたたちも死刑囚?」 不意に発せられた問いに、僕は思わず違うと答えそうになったが、その前にエルドリスが進み出て答えた。「そうだ」 僕はぎょっとして彼女の横顔を見る。その表情には何か思惑がありそうだった。 少年は興味深そうに僕たちを見つめながら、「罪状は?」「連続強盗殺人。三人ともグルだ」 少年の目が楽しげに輝いた。「へぇ! じゃあ僕と似たようなものだね」 それは笑顔で言う台詞か? 背筋にぞくりと寒気が走った。「僕はラシュト」 少年――ラシュトに促され、僕たちはエルドリスから順に名乗った。「ラシュト

สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status