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18.我儘なペット

last update Dernière mise à jour: 2025-06-24 17:00:00

 警察署から帰宅した蛍はようやく下着を交換出来る事に機嫌が良かった。

 どうせ洗濯と料理は蛍がする。汚れていても問題は無いのだが、流石に気持ちのいいものでは無い。

 帰宅してから重明と話をし、風呂に入った現在、深夜二時を回っていた。

 Tシャツとジャージを履くと、冷蔵庫の中から夜食用のおにぎりを取り出した。

 育ち盛りの蛍の為、仕出し屋の女将がいつも差し入れを持って来てくれる。

 この日、通夜会場が開いている以上重明は少しの仮眠だけしかとらない。それも斎場に付きっきりだ。いつでも遺族が話が出来る距離で見守る。

 自宅に帰って来れば遺族も気を使い相談事を持ちかけない事もある。『寝ているかと思い遠慮してしまった』等と言わせる訳にはいかない。少ない男性社員と共に交代で夜間勤務するのだ。

 おにぎりを齧りながら、時計をぼんやり見上げる。今日は眠れそうもない。

 明日も学校だ。椿希は来るのだろうか ? 

 眠れないとなると急に焦るが、今日は朝まで起きていてもいいかと覚悟を決めた時だった。

 カツン……。カツッ。

「 ? 」

 玄関の外で物音がする。

 蛍がキッチンから廊下の先の玄関曇りガラスを見ると人影が映る。

「……」

 ひと目で分かった。

 背の高さと白いシャツ、金糸のような髪色。

 そのシルエットは間違いなくルキだ。

 purrrrr.purrrrr

 スマホが鳴るが、その着信音は自室の二階で響いている。

 蛍は少し戸惑いつつ、ドアに近付く。

「……ルキ ? 」

「あ……ケイ……。俺」

「……」

『開けろ』とは言われない。

 蛍は少し様子を伺ったが、無理矢理ドアを開けてくる訳でもない。ルキは蛍の言葉を待つだけだった。

「またゲーム ? 」

「ううん&he

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  • PSYCHO-w   20.参加意思

     ルキは朝になると蛍が目覚める前、一人帰って行った。  一口減ったミネラルウォーターを残して。蛍を抱き枕にしただけの一夜。  蛍はふわふわした気持ちで、卵をフライパンに落とす。夏休みも終わり、既に九月に入ったが、まだまだ猛暑は続いている。  夜中に感じたルキの体温と感触。(あいつ、本当になんなんだよ……) 蛍は自分がどれだけ油断していたのか。この時ようやく気付く。  背後から抱き着かれたルキの身体は柔らかかった。以前は刃物を仕込んでいると明かし、その固められた身体に触れた。あんなゲームイベントの主催者が、まさか武装していないわけがないというのに、何故か昨夜はしていなかったのは事実。(俺はいつか殺す気でいるってのに。余裕ってわけ ? ) 考えれば考える程、内側に広がる初めての……なにかの感情。 そこへ背広姿の重明が帰宅した。「おかえり」「おう。食ったらすぐ出る。  今日も図書館か ? 美果さんを待たせるのもなんだから、先に準備して来い」「もうしてある」「そうか。なら……いいが」 重明は飛び出てきたトーストを皿にのせると、目玉焼きを持ってきた蛍と卓に着く。「昨日は眠れたか ? 」「……あー。うん。別に普通」「あいつは友達か ? 」 あいつ……とは ?  ルキが来たことを知るはずもないのだから、椿希のことだ。  蛍としては自分にちょっかいを出してきた椿希より、何も言わずに夜に来たルキの方が余程気になっているのが本音だ。しかし重明も内心穏やかじゃない。 「いや……。ちょっと絡まれただけだよ。  学校で美果を紹介しろって言われて、曖昧に返したんだ。だってそいつ転校生で話したことないし……勝手に決めらんないじゃん。変な奴かもしれないのに美果に会わせらんないよ」「そうだったのか……」 重明はトーストを折り畳んだりちぎったりするだけで、口に運ぼうとしない。「……どうしたの ? 」「

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    ルキは浮かない顔を一掃し、普段使わない回線で山岡組にコールした。「わたしです。ルキです。湊市周辺の警察署の根回しありがとうございました。……ええ ! 快適ですよ。 ですが、今日少し問題が……」 電話越しでガチャガチャ音がすると、一際野太い男の声が帰ってきた。『もしもし、ルキさんか。 山王寺の嬢ちゃんが残した火種だな ? 』 ルキがこの地で活動するには警察を抑え込む必要がある。しかし、どこの誰ともしれない外国人に警察官が首を縦に振るわけが無い そこで結々花が利用したのがヤクザの存在だ。 勿論ただでは無いし、山岡組の悩みの種を潰すことも条件に取引は成立していた。 ルキはボイスチェンジャーを停止すると、生の音声で頭と話した。「そうなんですよね」『……山王寺とうちの組は、それやぁ激しいドンパチした仲でな。それが今や相手は女子高生のボスだの……輪をかけるように暴対法の嵐だの。しょーもない生活してる訳だ。 しかし……女子高生の嬢ちゃんが消えたそうだな ? 』「ええ。今は側近にいた男が梅乃さんの後釜についたようです」『なるほど。そんでお前さんの仕事に影響出てるわけか』「困っちゃいますよ〜。その新ボスってのが湊市警察署の刑事と血縁で、なんと同じく高校生 ! 」『警察の身内ぃ ? はははは !! そりゃろくでもねぇな。 外国人のあんたには分からんかもしれないが、まず親が幼稚園児だろうが女子高生だろうが、親は親だ。 それを何食わぬ顔で取って代わって椅子に座るとは阿呆丸出し。物事にはシキタリっつーもんがな、任侠もんの常識だ』「イキがったヒヨコはすっこんでろ……と ? ふふ。親分さん、厳しそうですね ! 」『そらぁ、舐められたら商売にならん。 

  • PSYCHO-w   15.部下たち

     椎名はルキの指示で図書館の駐車場で結々花と顔を合わせた。「ルキ様、咲良 結々花と合流しました。指示を」『んー』 スマホからルキの間延びした声が聞こえる。『介入は取りやめ。ご遺体は戻ったんでしょ ? 』「はい。応援が来たようでしたが……特に問題なく」『ケイが現逮だったら考えたけど、今はその坂下 椿希の身内っていう刑事が……邪魔だね。 困るよねぇ……。ケイは俺の商品だ。勝手に好きにされちゃたまんない』「では、このまま……ですか」『問題無いよ。証拠も無いし、そんな状況で家にガサ入んないでしょ。 椎名。スミスがそろそろ着くはずなんだ』「え…… ? 」『引き継ぎしたら、俺の所へおいで』「は、はい……」『このまま結々花に代わって』 椎名が差し出したスマホを結々花が握る。「咲良です」『結々花ちゃん。今日はどうして椎名の方が連絡が早かったの ? 』「わたしにも分かりません。たまたま通りかかったら斎場に赤色灯が見えた、という事だそうです」『変だよね ? 』「え…… ? あ……まぁ。ルキ様の側近ともなると、わたしは行動まで把握していませんし、なんとも……」『そりゃそうか。 その警察署も買収内だよね ? ケイは今日帰ってくるだろうけど、その署は山王寺に寝返ったとして考えよう』「分かりました。仲介役の山岡組には報告しますか ? 」『ヤクザさんにクレーム付けるのに結々花ちゃんを使う訳にはいかないでしょ。自分でするよ。 古参のヤクザに警察やら根回しして既にあちこち買収してるのに、梅乃ちゃんの残党が引っ掻き回してくるとはね。 さながら、ケイや俺に宣戦布

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