ログイン冒険者たちのために夜の街が用意してくれた臨時休憩所は、いまだ戦いの熱を残していた。
広げられた長机。壁際に並べられた簡易寝台。傷を負った冒険者たちが腰を下ろし、治療を受け、あるいは息を整えている。窓の外では、街の明かりがまだ眠らずに揺れていた。 その一角で、エレナは深々と頭を下げる。 「皆さん、ご心配をお掛けしました……」 金の髪が肩からさらりと落ちる。顔を上げたエレナの前には、シイナ、グレン、ミストが揃っていた。 少し困ったように眉尻を下げ、シイナが穏やかに答える。 「いえ、何事もなくて良かったですよ。私たちとしても、あなたのことを心配していたのは事実です。ただ、あまりにも魔物の数が多く、離れることができませんでしたから」 その隣で、グレンが大きく頷いた。いつもの調子を崩さない声が、張り詰めかけた空気を少しだけほぐす。 「そうだぜ! 何にもなかったんだから、とりあえずそれで良かったじゃねぇか!」 「ところで……」 ミストの声が、そこでふと色を変えた。 明るさを残したまま、その視線だけがエレナの傍らへ向く。そこには、エレナが連れてきた没落貴族の姿があった。 「エレナ様が連れてこられた、そちらの方は……?」 問われて、エレナは一度だけ視線を落とした。何から話すべきか迷うような、短い間。 「実は私、先程までエレンと共にいたのです」 「……なるほど」 シイナは納得したように息を吐いた。わずかに肩の力が抜ける。 「それなら何事もなくて当然ですね。彼女は?」 「彼……じゃなくて、彼女は離れた場所から私たちを警護してくれています」 「うっ……」 その瞬間、シイナの顔に緊張が戻った。背筋が、目に見えて伸びる。 「な、ならもっと気を引き締めて、エレナ様をお守りしなければ……」 『こいつの中で私は一体どういう印象なんだ。まぁ、確かに不甲斐なければ、叩き直してやるところだが』 『あはは……。でも、シイナさんは研究所との連絡を取ったり、このパーティをまとめたり、いろいろと忙しいからしょうがないよ……』 内側で返しながら、エレナはほんの少しだけ困ったように笑みをこぼした。声には出さず、けれどその表情には、苦笑いに似た柔らかさが滲んでいる。 『それはそうだが……。だが、聖女の護衛を任された身だろう?』 『み・ら・い・の、ね。今はまだ聖女見習いなんだからって、何回言えばいいの?』 心の中でそう言い返すエレナは、まるで頬を膨らませているかのようだった。 「コホン……。それで、話に戻りますが……」 エレナは小さく咳払いをして、緩みかけた空気をそっと戻した。 「エレンが、こちらの貴族の方を拿捕したようなのです」 「拿捕?」 シイナの目が、わずかに細まる。 「何やら、彼が魔物を呼び寄せていたようで……」 「んだと!?」 グレンの声が休憩所の一角に響いた。腰を浮かせかけたその身体から、まだ戦場の熱が抜けきっていない。 「こいつのせいで、オレたちは大変な目にあったってのか!」 「グレン、落ち着いてください」 低く、けれどよく通る声でシオンが制した。 その視線はグレンではなく、横たえられた没落貴族の方へ向けられている。乾ききらない血の跡。応急処置を受けた痕跡。外から見ただけでも、ただの捕縛では済まなかったことは明らかだった。 「しかし、血に汚れているようですが……何かあったのでしょうか?」 「詳しくは、私にも分かりません。ですが、謎の組織に関わる何者かが、エレンとこの貴族を襲ったようなのです」 「謎の組織ですかぁ……」 ミストの声から、いつもの弾むような明るさが少しだけ引いた。 その場にいる全員の視線が、自然とエレナへ集まる。 エレナは順を追って話した。 エレンがこの男を捕らえたこと。謎の女が現れ、男を連れ去ろうとしたこと。だが、それが叶わなかったため、最後には口封じのように刃で男を貫いたこと。 そして、エレナ自身が治癒を施したことまで。 言葉が終わる頃、休憩所の喧騒は遠くなっていた。近くで誰かが包帯を巻く音も、椅子の軋みも、妙に薄く感じられる。 「やれやれ……」 シイナが額に指を添え、短く息を吐いた。 「この大きな街に降り注いだ災いを払ったはいいが……次から次へと問題が発覚するな……」 それから彼は、倒れた貴族へ視線を落とす。感情ではなく、情報を並べ直す目だった。 「まとめよう。つまり、そこの男が何らかの理由で魔物を呼び寄せた。その時点で、謎の人物がその男を捕らえたエレンさんと接触。その後、恐らく口封じとしてそいつを消した気になって撤退……ということか」 (さすがシイナさん……! すごく簡単にまとめてくれた……!) 内心ではその整理の早さに感嘆しながらも、エレナは表情を崩さなかった。 静かに目を伏せ、淡々と頷く。 「はい。その通りです」 「……きっと、そいつは重要参考人になる」 シイナの声が、一段低くなる。 もう休憩所の臨時対応では済まない。ここから先は、街と王国を巻き込む調査になる。そう告げるような響きだった。 「ミスト。騎士団を手配してくれ」 「了解です! 恐らく、明日の朝には到着することでしょう!」 「よし。ひとまずはこんなところか」 シイナが推察をまとめ、短く息をついた。 その時だった。 休憩所の入り口付近で、人の流れがわずかに割れる。傷を休めていた冒険者たちの視線が、そちらへ向いた。 現れたのは、夜の街の住民たち。その先頭に立つ男は、この場の代表と思われる落ち着いた佇まいをしていた。街灯の光を淡く透かすその姿は、生者とは違う静けさを纏っている。 「冒険者の皆々様。この度は夜の街を防衛してくださり、誠にありがとうございました……」 男は深々と頭を下げた。 休憩所にいた冒険者たちの間に、照れくさそうなざわめきが広がる。 「気にしないでくれよ。俺たちはたまたまいたから、こういう風にできただけで……」 「でも、街をひとつ救ったなんて、まるで英雄みたいだな! なんだか誇らしいぜ」 誰かが笑い、別の誰かが肩をすくめる。疲労と傷の匂いが残る場所に、それでも少しだけ明るい熱が戻っていった。 代表の男の霊は、静かに頷く。 その隣には、いくつもの箱が積まれていた。さらに彼の手には、細長い紙片――宿泊券のようなものが握られている。 「感謝の印に、こちらのリ・ポーションを。それから、夜の街での宿泊は、今後いつでも無料とさせていただきます……」 そう告げる男の声には、深い礼が滲んでいた。────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ
**────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した
**────エレナの視点────**「という訳なんだ」ジンさんの軽やかな口調で語られた残酷な現実に、私の心は氷のように凍りついてしまった。リディアさんが捕らえられて、処刑される。その事実が、どうしても受け入れることができなかった。「そ、そんな……嘘ですよね??」私の声が震えている。まるで悪夢から覚めたいと願うかのように、その言葉にすがりついた。「……こんな時に嘘なんてつかないよ」ジンさんの飄々とした口調が、現実の重さをより一層際立たせる。「……くっ!!!」シイナさんが拳を強く握りしめ、歯を食いしばっている。その青白い顔に、激しい怒りと悲しみが刻まれていた。「皆は先にこの国を脱出してくれ……!俺は……俺はリディアさんを助けに行く!!」シイナさんが勢いよく立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとする。その瞳に宿る決意の炎は、誰にも止められないほど激しく燃えていた。「待てよ!!そんなの俺たちだって同じ気持ちだ!」グレンさんが力強く立ち上がる。彼の声には、シイナさんに負けないほどの強い意志が込められていた。「ええ……彼女には計り知れないほど多大な恩があります。なので……グレンと私でリディアさんを救出に向かいます」シオンさんの顔に、鋼のような決意が浮かんでいる。「シイナ、あなたこそエレナさんやミストさんと共に先に脱出してください」「だめだ!今回はパーティリーダーの責任として、俺が行く!」「シイナ!」「俺が、彼女を助けてすぐに戻ればいいことだろう!」「おいシイナ!俺がやられたテッセンとかいうやつの事を忘れたわけじゃないだろ!?少し落ち着け!」三人の激しい言い争いが、小さな家の中に響き渡る。誰も一歩も引かない様子で、感情のままに言葉をぶつけ合っていた。「あわわわわ……みなさん!こんな時に言い争ってる場合じゃないですって!」ミストさんが慌てて三人の間に割り込もうとするが、激しい感情の渦に巻き込まれ、弾き飛ばされてしまう。「ぎゃー!!」(みんな……冷静さがすっかり抜けて、これじゃあ救える命だって救えないよ……!)(それに……私だってリディアさんを助けたいのに……)私の心の中で、やりきれない想いが渦巻いている。みんなの気持ちは痛いほど分かるけれど、このままでは誰も救えない。そう考えていた、まさにその瞬間だった。私の意識が、まるで深い
**────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い
(この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った
**────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ







