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第45話:研究所前の騒動

Penulis: 渡瀬藍兵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-03 11:33:34

「よっ!エレナ!!心配かけたみたいだな!」

談話室の扉を開けると、聞き慣れた声が飛んできた。

グレンさんが、いつもと少しも変わらない、太陽みたいな笑顔で大きく手を振っている。その姿を見た瞬間、昨日からずっと胸につかえていた冷たい氷が、ふわりと溶けていくのを感じた。

「グレンさん!!もう……本当に、心配したんですよ!」

「ははっ、悪い悪い!」

豪快に笑うグレンさんとは対照的に、その隣からシオンさんが氷のように冷たい視線を向ける。

「まったく……休憩所の衛兵も、なかなか目を覚まさないあなたには手を焼いていましたよ」

「えっ、グレンさん、ずっと寝てたんですか?」

「ああ。それで困ったシオンが、グレンを殴って起こした――というわけだ」

シイナさんが淡々と事実を告げる。

(あれ……グレンさん、ツナガールの被害者だったはずなのに……)

「いや~……ホント痛かったぞ。コイツ、全然容赦がなくてな」

グレンさんがさする右頬が、心なしか少し腫れているように見えて、私は思わず苦笑いを浮かべた。

その時、シイナさんが手にした小さな機械に視線を落とす。

「さて、皆に伝えておきたいことがある」

場の空気が、すっと引き締まった。

「それは……?」

「これか? これはツナガールとは違い、魔力を消耗しない通信機だ。ただし、あちらより通信範囲は狭い。あまり離れると使えなくなる」

シイナさんはそう説明すると、顔を上げた。

「伝えたい事だが……昨日俺たちが保護した少年が、目を覚ましたらしい」

「ほ、ほんとうですか!?」

私は思わず、シイナさんのそばへ駆け寄っていた。

「ああ。今、メモリスの魔法研究所支部から連絡が入った」

「これから、その少年に詳しく話を聞きに行くつもりだが……」

「ぜひ、行きましょう!」

私が力強く頷くと、ミストさんも、シオンさんも、そしてグレンさんも、静かに同意を示してくれた。

「よし……じゃあ、全員で行くか」

***

こうして私たちが向かった魔法研究所支部は、しかし、妙な熱気に包まれていた。

建物の入口に、街の衛兵たちがずらりと並び、今にも中へなだれ込もうとしている。その前で、数人の研究員が必死に立ちはだかっていた。

「ここを通しなさい! この場所に、危険な子供がいるという報告があった!」

甲高い声が響き、場の空気がピリピリと張り詰める。

「どうした? この騒ぎは」

シイナさんが一歩前に出た。

それだけで、周囲の空気が一瞬、ひやりと変わる。

「あっ、シイナさん……!」

研究所の女性が、すがるような目でこちらを見た。

「この衛兵たちが、昨夜シイナさんたちが連れてきた子供を“危険人物”だと言って、無理やり連れていこうとしているんです……!」

(えっ……!? どうして、あの子が……)

(……様子がおかしい。ただの命令遂行にしては、焦りが過ぎる)

エレンの声にも、鋭い緊張が走る。

「悪いが――お引き取り願おう」

シイナさんの声は、冬の湖面のように静かだった。

その言葉に、衛兵たちが一斉にこちらを睨みつける。

「危険人物を匿うつもりか!」

「それは、俺がこれから確かめる。本当に危険だと判断したなら、その時は改めて謝罪し、あなた方に引き渡そう」

「だが、その子には――並々ならぬ事情があるように見受けられた。少し、待ってもらえないか」

シイナさんの理路整然とした言葉に、しかし、衛兵たちは苛立ちを隠さない。

「ふ、ふざけるな! そんな要求が聞けるか! これは領主様からの命令だ! そこをどけ!」

(なにかが……おかしい。みんな、普通じゃないくらい焦ってる……)

(それに……いま領主様って……)

シイナさんが、低く問う。

「……何を、そんなに焦っている?」

その瞬間、衛兵たちの表情が一気に強張ったのが分かった。

「っ……問答無用だ! 通るぞ!」

衛兵の一人が、研究員を突き飛ばし、無理やりドアノブに手を伸ばそうとした、その時――

バシッ、と乾いた音。

シイナさんの手が、無言でその手首を掴んでいた。

「この都市の命令に逆らうつもりか!」

「……今までは噂の範疇だと考えていたが」

シイナさんの声は、かつてないほど冷たく、重かった。

「お前たち、あの少年に何か“おかしなこと”をしてはいないだろうな?」

その視線は、獲物を射抜く鷹のようだ。

「例えば――“実験”、とかな」

「……そ、そんな訳があるか!! その手を離せ!」

衛兵の声が、わずかに震えた。

それは、恐怖なのか、それとも――。

そんなことを考えていた、その時――

――ズガァァァン!!

建物の奥から、雷鳴が爆発したような轟音。

空気が一瞬で焼き切れる。

そのすぐあと、壁ごと何かが吹き飛ばされ、

瓦礫や鉄片が猛スピードでこちらへ飛んできた。

(えっ――!?)

体が勝手にすくむ。

何が起きたのか、頭が追いつかない。

(エレナ、離れろ!)

エレンの声と同時、

視界が一瞬、白い閃光に包まれる。

――その刹那。

シオンさんが私の目の前に躍り出て、

全身に風をまとわせた。

瓦礫がシオンさんの背中にぶつかり、風と一緒に弾き飛ばされていく。

衝撃と破片の波が、肌をかすめていった。

「シ、シオンさん……!?」

「……ふぅ。少々痛みましたが、問題ありません」

私は肩で息をしながら、必死に動揺を隠そうとする。

「……す、すみません、助かりました……!」

シオンさんの服には傷が残っていたけど、

彼の“風”が、ほとんどの瓦礫を押し流していたのが分かった。

――そして。

私はシオンさんの肩越しに、建物の奥を見つめる。

昨日助けたあの少年が、

壁を破って、

こちらを鋭い目で睨みつけていた。

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