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第56話:絶望と光明

Penulis: 渡瀬藍兵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-11 11:38:09

──────

エレンの視点

──────

ゴッ、と、肉と骨が砕ける嫌な音がして、シイナの身体が壁に叩きつけられ、糸が切れたように崩れ落ちた。

「ぐっ……ぁ……」

「シイナ君……!!」

ミストの悲鳴。

だが、その声に反応するように、アイナの背中から生えた異形の腕が、ミスト目掛けて振り下ろされた。

「っ……!!させるものか……!!」

私が、二人の間に滑り込む。

振り下ろされる腕を、二本の短剣を交差させて受け止めた。金属が軋む悲鳴。凄まじい衝撃が、腕から全身を駆け巡り、足元の石畳に亀裂が走る。

「エレン様!!ありがとうございます!!」

「感謝はいいが、油断するな!」

そのやり取りの直後、

「アイナ! やめてください!!!」

シオンが、アイナの背後から、その身体を抱きしめるように覆い被さった。

「アァァァァァ!!!!!!!!!」

暴れ狂う、かつての相棒。

「は、離しません……!!! ずっと……! ずっと、探していたんです……!!!」

シオンは、がっしりと、その両腕でアイナを押さえつけていた。

その瞳には、涙が浮かんでいる。

だが、あの恐るべき膂力の前では、熟練の傭兵の力など、あまりに無力だった。

アイナが、まるで鬱陶しい虫を振り払うかのように、後ろへと跳ねる。

そして、その背中にいるシオンごと、壁へと叩きつけた。

「シオン!!」

「ぐっ……!!! うぉぉおぉ!!!! アイナ!! 正気に、戻ってください!!!!」

壁に叩きつけられ、血を流しながらも、シオンは決してその腕を離そうとはしなかった。

その声に、戦士の雄叫びはなかった。ただ、愛しい人の名を呼ぶ、魂からの悲痛な叫びだけが響いた。

だが、その想いを嘲笑うかのように、アイナは煩わしげな様子を見せ、その巨大な右手で、シオンの頭を鷲掴みにした。

「がぁ……っ!」

「シオン……!」

私は、シオンとアイナ目掛けて、床を蹴る。

通り過ぎざま、その巨大な腕を、二本の短剣で切り裂いた。

ザザザザッ、と、石畳をブーツの踵で削り、火花を散らしながら急停止する。

そして、反対方向へ、再び跳躍。

今度は、宙を舞いながら、アイナの背中に生えた、もう一本の腕を、根元から断ち切った。

『ギャァァァァァァ!!!!!!!!!』

アイナの、人ならざる絶叫が響き渡る。

その腕から力が抜けたシオンが、ぐったりと床に落ちていく。

私は、シオンのすぐ側へと着地すると、その身体を抱え、一気に背後へと飛んだ。

「エレンさん……すみません……」

余程、衝撃を受けているのだろう。

私とて、目の前の現状に、戸惑いを隠しきれなかった。人が、魔物になるなど、聞いたことがない。

しかも、シオンからすれば、かつての相棒が、そのような無惨な姿になってしまっているのだ。

彼が、こうなるのも無理はなかった。

「謝るな。だが、シオン、無茶な真似はよせ……!」

その言葉に、シオンが、悔しそうに頷くと……

私が切り落とした異形の腕が、ぶちぶちと音を立て、瞬く間に再生した。

「ちぃ……! 再生能力もあるか……!」

どうする……!

この状況は、非常にまずい。

アイナの能力は、純粋な戦闘能力において、私を遥かに上回っている。

自分の身だけを守るならまだしも、仲間を守りながら戦うのは、不可能に近い。

「くっ……これほどの危機的状況は……久しぶりだな……っ!」

私とアイナが睨み合う。

「エレンさん……」

「なんだ?」

シオンの声に耳を傾けるが、私の視線は、アイナから一瞬たりとも外さない。

目を離せば、殺られる。

「アイナは、かつて……左腕が、不自由でした……」

……!!

なるほど……!

「シオン、感謝する」

つまり、アイナの左腕付近で戦えば、奴の攻撃は、右腕と、背中に生えた二本の腕だけに警戒すればいい。

そういう事だな。

その思考で、今後の動きを固めた、直後。

アイナの手のひらが、私の顔を掴まんと、目の前に迫ってくる。

「くっ……!!!」

どうにか、身体を捻って左腕の方へと回り込み、それを回避する。

だが、間髪入れず、背中の腕が、薙ぎ払うように追撃を仕掛けてきた。

それをどうにか弾く。

この間、わずか一秒にも満たない、死線の攻防。

私の…………俺の血が、再び、滾り始めていた。

「おらァァァ!!!!!」

グレンの絶叫が、白い空間に響き渡る。

彼は、アイナの背後から、その巨体をバネのようにしならせ、回避不能の袈裟懸けを叩き込んだ。

『ギャァァ!!!!!』

ブシュッ、と、おびただしい量の血飛沫が飛び散った。

だが、その一撃は、奴の動きを止めるには至らない。

背中から生えた異形の腕が、グレンの胴体を薙ぎ払わんと、横薙ぎに振り払われた。

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

しかし、グレンは、振り下ろした剣の勢いを殺さず、そのまま、切り返す。

グレンの剣はアイナの振りかぶった腕を、下から上へと、切り裂いた。

「アイナ……」

その光景を、シオンは、ただ、悲しそうな瞳で見つめている。

「シオンさん! 希望は、捨てちゃダメですよ!!」

ミストが叫ぶと、その両手をアイナへと向ける。

彼女の足元から、大量の水が湧き出し、渦を巻きながら、瞬く間にアイナの全身を包む、水の牢獄を作り出した。

「この水牢は、特別製です!!」

「よくやった!ミスト、後は俺が封じ込める!!」

今度は、シイナがミストの横へと立ち、その両手を地面につける。

すると、床から無数の鉄の柱が伸び、ミストの水牢を、さらに外側から覆い尽くす、鉄の檻を“編み上げた”。

確かに……あの水の牢獄の中で、アイナの動きは、明らかに鈍くなっている。

「ミスト……何をした?」

俺の質問に、ミストが、得意げに胸を張って答える。

「魔物と化してしまった人に、効果があるかは分からないのですが、私の作り出す水に、私が研究を重ねた、特別な薬剤を混ぜておきました」

「特別な……薬剤?」

「その薬剤、人が触れると、全身が痺れて神経がおかしくなっちゃうんです。あ、もちろん対魔物用に濃度は調整済みですよ?」

……さらりと、恐ろしい事を言わなかったか、こいつは。

その言葉に、このパーティの間で……絶妙な空気が流れる。

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